iPad Pro 10.5とSurface Proを比較 人気プロ絵師によるお絵描きレビュー(4/5 ページ)

» 2017年07月07日 13時20分 公開
[refeiaITmedia]

両機でお絵描き! 旬なタブレットの実力は

 さて……なんかすみません……もう自分でも「ガジェオタいいかげんにしろ」的な気持ちで一杯です。絵を描きますね。

 今回はiPad Proではペインター系のProcreateを、Surface Proでは自分が仕事でも使っているCLIP STUDIO PAINTを使用しました。私のProcreateのスキルはほぼゼロで、iPad Proの旧機種で様子を見た程度。CLIP STUDIO PAINTは普段のお仕事でPhotoshopと併用していて、仕上げ前までの工程では慣れています。

 まずはラフからです。Surface Proの新ペンでラフを描いてみます。すごく……すごく普段の感覚のまま描けます……。

Surface Proは机に置いて、外部キーボードを接続して作業しました

 自分はラフではご覧のようにざくざくと素早く線を散らしながらアイデアを拾い上げて、移動・変形ツールでバランスを検討したりするので、この時点ではペンの性能はそれほど関係ないとも思いますが、やはり感触に違和感があると手が止まってしまいます。

 なので、普通に描けること自体がとてもうれしいです。気になることがあるとすれば、芯に縦と横の両方向に微小な遊びがあって、運筆の始めにカチカチと動いて不安を感じることと、スタンド本体が滑って奥に動いてしまうことですね。

ラフの2段目です。おおむね快適です

 ここで、旧ペンも少し試してみました。ペンの傾きから生じる視差の問題で、自然に描けるとはいいがたいものでした。また、軽い筆圧への反応も若干唐突で、少し筆圧をかけてあげると急に線が表れるようで、自然な書き味を損なっています。新ペンは、実はホバーの状態では同様の位置ずれが起こりますが、画面に接触した時点で補正される動作になっていました。弱い筆圧への反応も自然です。

 次はiPad Proでラフ。すごく…鉛筆です…

iPad Proは気軽に膝上で作業しています

 自分はこういう、無駄なザクザクストロークが多いスタイルなので、もう長らく紙には描いていないのですが、コピー用紙にシャープペンシルや鉛筆で描いていたころが思い出されるような描線です。

 iPad Proは10.5インチでお絵描きには小さく感じるかもしれませんが、自然に縦持ちすると15.6インチのCintiq Proよりも1割近く縦幅が大きくなり、上下からかぶってくるUI類も最低限なので、想像以上に伸び伸びと描けます。

 Apple Pencilの描き心地については、ペン先にガタつきが皆無で非常に確かな感触。軽い筆圧への反応も自然で、遅延も小さく、ペン先に線がぴったりついてきます。性能的には本当に完璧なのではと思えます。

 が、細かいところで2点だけ、自然とも快適とも言いがたいことがありました。1つが重くて硬いものをガラスにぶつけながら描いている感触、もう1つが、画面に付着した手垢に摩擦力が大きく左右されることです。

Surface Proで仕上げ

 それでは、Surface Proに戻って線画を描いていきましょう。落書きなので普段のお仕事絵より線を太く、普段より雑に描いています。これも正直なところ先述のペン先の不安感以外は違和感も少なく、正直書くことがありません。繰り返しになりますが、普段Cintiqで作業している身で、「違和感あんまないね」と思えるのは素晴らしいです。

自分は長らくPhotoshopで線画を描いていたので抜き入りについては要求が低いです。ですが、線の伸びや留めで抑揚を出すのは無理なくできました

 iPad Proでは、うっかりペインター系のProcreateを選んでしまったので、やけになって線画もレイヤー切りも飛ばしてしまいました。使い方がよく分からないまま楽しく描けるのは、iPad ProとApple Pencilの過剰性能のたまものだと思います(褒めてます)。

ラフの下にレイヤーを作って塗っていきます。実はブラシの癖がよく分からなくてすごく困っていますが楽しいです

 休憩中に少し気になったのが、背面のレンズです。結構大きく出っ張っている上に、角張った仕上げになっているので、iPad Proを机の上で無造作に滑らせたりすると、机と気持ちのよくない摩擦を起こしてヒヤッとすることがありました。

iPad Proのレンズ

 続いて、Surface Proで塗りと仕上げです。今回はPhotoshopは使っていませんが、CLIP STUDIO PAINTなどのフル機能のお絵描きソフトをゴリゴリ使って最後まで行けるという確信と安心感はよいですね。気付くと、メイン制作環境が調子悪くなったときのためにバックアップとしてどうか……普段使いにも便利そうだし……とまで考え始めていました。お財布の危機を感じます。

ラクガキとはいえ、普段こなしている一通りの工程を試すことができました

 少し気になったのが先述の、ペンを斜めに持っているとホバーの間のカーソル位置がずれる仕様です。自分は塗りの間はホバーでブラシカーソルを見ながら位置を決めるクセがあるので、画面にペンが触れた時点で位置が補正される動作ではタイミングが遅く、何度もストロークに失敗しました。これは改善してほしい動作ですね。一方で、iPad Proではホバーでのプレビューカーソルはそもそもありません。

iPad Proで仕上げ

 最後にiPad Proに戻って仕上げです。仕上げと言っても、最初のラフの感触を残しながら、ブラシで細かいところをタッチしていただけです。普段の工程を全部忘れたような描き方ですし、仮にもっとPhotoshop寄りのアプリを使ったとしても、自分の能力で効率よく仕上げよく、お仕事レベルに持って行ける自信はありません。 逆に自らの手と目の性能にまかせて描けるタイプの人には最高のメインお絵描きツールになるかもしれませんね。いずれにせよ楽しいのは百難隠すというか、楽しくて刺激的な時間が過ごせたならそれでいいじゃんという気分になれました。

ラフの上にブラシでいろいろ上書きしていきます。最近では一番ローテクな描き方をした気がします

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