しかしこの手法は、うまくいけば効果は絶大なのだが、発売前にパッケージに反映させられないことから、後日のシール対応やパッケージ修正の手間が発生したりと、かえって手間がかかることもある。いろいろと段取ってみたもののタイミングが合わず、結果的に開発原価に含めざるを得なくなった……ということもしばしばだ。また過去に同様の経理処理を行い、不適切だと指摘された場合など、会社によっては禁じ手となっているケースもある。
ここで登場するのが、認証テストなどとは全く畑違いのグッドデザイン賞だ。1957年に旧通商産業省によって設立された「グッドデザイン商品選定制度」を日本産業デザイン振興会が承継し、60年にわたって実施されている「よいデザイン」の指標を示す賞である。応募総数に占める入選数の割合の高さや、応募から受賞後にかかる費用など、ネット上ではツッコミもみられるが、その強い訴求力はメーカー関係者の誰もが認めるところだ。
また開発担当者が「私はこれだけ外部から評価される製品を作りました」と社内にアピールするための材料に使われるケースも多く、予算が許す限り1つでも多くの製品で応募したいというのが、開発担当者の本音だ。
グッドデザイン賞はその効果が広く認知されており、社内でわざわざコンセンサスを取る必要もない。また年1回の開催であるため、発売後に応募して審査をパスし、後付けでパッケージにシールを貼るという対応が、年間を通して行われている。つまり開発費ではなく広告宣伝費を使い、しかも発売後に処理ができるスキームが、社内で確立されているのだ。
もちろん、特定の規格への対応を証明する認証テストと、デザインの優秀さを審査するグッドデザイン賞とでは、その出自もコンセプトも全く異なる。しかしパッケージにそのシールが貼られていれば拡販につながるという点においては、両者は共通している。それゆえ、プールされている広告宣伝費を活用して製品を少しでも多く売るために、多くの開発担当者がグッドデザイン賞を狙うことになるというわけだ。
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