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洗練の「VAIO S13」か、新生の「VAIO S11」か 2017年モデル徹底検証(2/5 ページ)

» 2017年09月21日 13時00分 公開

耐久性、堅牢性への取り組みも強化

 耐久性、堅牢性への取り組みもさらに強化した。底面の高剛性樹脂に補強リブを追加し、ねじれ耐性を高めている他、トップカバーの飾り(オーナメント)も単に部品を上から貼り付けるのではなく成型時に形状を付けることで補強リブのような役割を果たし、強度アップに貢献している。

VAIO S VAIOノートの特徴的な意匠である背面のオーナメントは健在。見た目の美しさだけでなく、成型時の形状を工夫することで、補強部品の役割も果たしている

 耐久試験については、90cmからの落下試験や本体ひねり試験、ペンはさみ試験、さらにキーボード水かけ試験(150ccの水をかけて、3分間は水が内部に浸透して電源ショートが起きないことを確認。通風口や端子からの水の浸入は想定していない)といった過酷な試験を行っている。これらの試験結果はユーザーが同じことを行っても壊れないことを保証するものではないが、耐久性の目安として情報が公開されている点は心強い。

 実際に手に持った感触からも、剛性の強化は明らかだ。あえてパームレストや天板の一部分だけ強く押したり、つかんだりしたときの感触が大きく異なり、たわみやゆがみがさらに軽減されている。若干ではあるが、最薄部の厚みが増したため、見た目にも頼もしくなった。

 設計・製造に関しては、UDカーボンやアルミニウムのパームレストなど、体裁の重要部品を国内で調達し、国内(長野県安曇野市の自社工場)での組み立て、仕上げによる「MADE IN JAPAN」にこだわり、これが仕様選択肢の拡大や短納期化にもつながっているという。

ビジネスのニーズを満たす充実のインタフェース

 ビジネスモバイルPCらしく、インタフェースは豊富に装備する。S13、S11とも共通の内容で、3基のUSB 3.0ポート(うち1基は電源オフチャージ対応)、SDメモリーカードスロット、有線LAN、HDMI出力、アナログRGB出力(D-Sub 15ピン)と、ビジネスで求められる端子を網羅している。画面の上には、92万画素のHD Webカメラも装備する。

 従来のS11にはHDMI端子がなかったが、ユーザーからの要望が多かったという。プロジェクターと確実に接続できる手段として、アナログRGB出力(D-Sub15ピン)はいまだに欠かせないが、最近のプロジェクターならばHDMI対応の製品も多い。外出先の会議室などに大型テレビが備え付けられている場合は、それに出力してプレゼンを行うことなども考えられる。HDMIもまたビジネスシーンで必須に近い端子となっているのだ。

 同じく法人ユーザーからのリクエストが多かったというセキュリティロックスロット(ケンジントンロック)も新たに装備した。対応する汎用(はんよう)のワイヤケーブルを使って机などに固定でき、物理的な盗難を防げる。オプションでセキュリティチップのTPM 2.0も追加できる他、暗号化機能付きSSD(TCG Opal 2.0準拠)を12月中旬以降に提供する予定だ。

 さらに、Windows Hello対応の指紋センサー(スタンバイからの復帰にも対応)、Phoenix SecureWipeによるSSDの高速データ消去(Serial ATA SSD 128G〜256GBの場合で消去時間は約2秒)、S4やS5の状態からのWake On Lan、ポートやスロットのdisable設定、Windows 10 Pro、ストレージパスワードなど、業務向けのスペックにも対応する。

 一方、S11からはThunderbolt 3(USB 3.1 Type-C兼用)端子が省かれた。先代S11のフィードバックから実際に利用しているユーザーがほとんどいなかったことと、USB Type-C関連規格が多数登場し、市場が混乱していることを理由に挙げている。

 個人的には少し残念な変更だ。USB 3.1とDisplayPort over USB-Cの実質上位互換であるThunderbolt 3にしてしまえば、規格に関する混乱の影響も少ないと思えるが、現状のビジネス向けPCとしては仕方がないところだろうか。

VAIO S S13(左)とS11(右)の前面。両サイドにステレオスピーカーを内蔵している。
VAIO S S13(左)とS11(右)の背面。写真だと分かりにくいが、カバー付きのSIMカードスロット(microSIM)が配置されている
VAIO S S13(左)とS11(右)の左側面。手前からヘッドフォン・マイク兼用端子、USB 3.0ポート2基、セキュリティロックスロット(ケンジントンロック)を搭載。排気口を挟み、一番奥にACアダプター接続用のDC入力がある
VAIO S S13(左)とS11(右)の右側面。手前からSDメモリーカードスロット(SDXC対応)、USB 3.0(電源オフチャージ対応)、HDMI出力、有線LAN、アナログRGB出力(D-Sub 15ピン)と並んでいる。細かい工夫だが、有線LANは端子面をあえて上に向けることで、ホコリの堆積による接点不良を抑えている。また、LANケーブルの爪が折れた場合でも取り出せるよう、カバーの下に小さなエマージェンシーホールを用意した(先端が細い精密ドライバーなどを穴に入れてケーブルを持ち上げて取り出す)
VAIO S USB充電の設定は「VAIOの設定」アプリで行える
VAIO S Windows Hello対応の指紋センサーも装備。スタンバイ状態からの復帰にも対応している(初期設定ではオフ。「VAIOの設定」でオンにできる)

 このように、ボディーの薄さ、軽さ、外観の美しさにこだわったうえで、過酷な品質試験に耐える堅牢性、有線LANやアナログRGBといったレガシーポートも含めた豊富なインタフェース、そして十分なバッテリー駆動時間も確保するというトータルバランスでの高い携帯性がS13およびS11の大きな特徴と言える。

LTEモデルにWindows 10データプラン対応SIMを付属

 通信機能も、S13、S11ともに共通だ。1000BASE-Tの有線LAN、IEEEE 802.11a/b/g/n/acの無線LAN、Bluetooth 4.1を標準装備。さらにLTE対応の無線WAN機能(SIMロックフリー)を搭載したモデルも用意される。S11はこれまでもSIMロックフリーLTEモデルが用意されていたが、S13は今回が初めてだ。

 SIMロックフリーLTEモデルは国内3大キャリアのバンドをカバーし、キャリアアグリゲーション(CA)、カテゴリー9に対応。通信速度は下り最大450Mbps、上り最大50Mbpsに高速化されている(最大通信速度は接続する通信事業者や環境によって異なる)。3Gの対応バンドは1、2、4、5、6、8、19、LTEの対応バンドは1、2、3、4、5、7、8、12、13、17、18、19、20、21、25、26、28、29、30、38、40、41、66とかなり広い。

VAIO S S13(下)、S11(上)ともSIMスロット(microSIM対応)は底面の背面側にある。S11の従来モデルユーザーからの要望を受けて、スロットにはカバーが設けられた

 さらに、S13、S11のLTE対応モデルには、Windows 10データプラン対応SIM(1GB/1カ月無料のトライアルプラン付属)が付属するのもトピック。このWindows 10データプランは、契約不要で必要なときに必要なぶんだけWindowsストアから購入できること、さらにWindows 10に組み込まれているため、別途ユーティリティーや追加の設定などが不要で簡単に無線WANによるモバイルネットワークが利用できること、海外でも同じSIMで気軽に利用できることなどがメリットだ。1GB/1カ月無料のトライアルプランも付属する。

 一方、付属のSIMはWindows 10データプラン対応という珍しい仕様なだけに、フランスの通信業者であるTransatelのものを採用している。これにより、ローミングでの接続となるため、通信速度では大きな期待ができないことと、国内MVNOに比べて通信料金が割高なことは注意する必要がある。2017年内をめどに、ネットワーク改善を予定しているという。

 日本の有料データプランは500MB(1日)で700円、1GB(7日)で1200円、3GB(1カ月)で3000円、10GB(3カ月)で8400円とかなり高い。無線WANをある程度コンスタントに利用するならば、国内MVNOの月額プランなどを利用した方がよく、「普段ほとんど利用しないが、数カ月に1回だけ、旅行時だけ使う」といったような使い方に向いている。

VAIO S 契約不要で必要なときに必要なぶんだけプランをWindowsストアから購入できる「Windows 10データプラン」対応SIMが付属。1GB/1カ月無料のトライアルプランが付属している

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