では、メーカーはどのようにするのが正解だったのだろうか。
答えは簡単、「量販店では試用機材を用いた店頭販売を行わない」こと。これが最も安全だ。販売自体は行っても問題ないが、それは開封することなく、パッケージのまま売ることが絶対条件だ。
なるほどその意図は理解できるが、製品の良さをユーザーに体験してもらう何らかの場は必要……というのであれば、そのカテゴリーの製品だけでメシを食っているレベルの専門店に限定して試用機材を用意し、製品の価値をきちんと理解している店員の立ち会いのもとでのみ試用できるよう、話をつけるしかない。
これが量販店だと、同じような約束を事前に取り交わしても、いずれ有名無実になる。量販店は1つの売場に関わる人数が桁違いに多く、かつ異動も頻繁に行われるため、口約束レベルの決め事が引き継がれることはまず期待できないからだ。高価な製品でまさかそんなことはないだろうと思うかもしれないが、彼らにとって試用機材はゼロ円であることを忘れてはならない。
ただ、ユーザーが自ら試用したいと考えるほどの製品であれば、むしろ常設での展示よりも、スポットでの展示を行う発想に切り替えた方がよい。週末のみ店頭に試用を目的とした特設コーナーを用意してもらい、担当者も立ち会った上で、質問に答えつつユーザーが試用できるようにするのだ。
この場合、量販店の動員力を有効活用して商売をさせてもらう形になるので、ビジネス上の立場はかなり対等に近くなる。何より常時担当者が立ち会うことから、機材の破損はまず起こらないので、高額製品を扱うのにも適している。事実、このようなスタイルで人員と機材を確保し、週末ごとに量販店を巡回しているメーカーは存在する。
もちろんこの場合、担当者が週末ごとに拘束される上、特設コーナーの設営や撤収を行う分だけコストが掛かるわけで、使い物にならなくなるのを前提に試用機材を店頭に放置しておくのとどちらかよいかは、メーカー個々の判断になる。どちらが身の丈に合ったビジネスモデルなのか、メーカーによっても判断は変わってくるだろう。
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