「これがなければ新VAIO A12は成立していない」とまで言わしめる“100%クラムシェル2in1ノート”の要とは

» 2018年11月13日 18時21分 公開
[井上輝一ITmedia]

 VAIOは11月13日、“100%クラムシェル”や“オールラウンダーPC”をうたう2in1ノートPC「VAIO A12」を発表した。これまでの2in1ノートPCは、タブレット背面のキックスタンドやキーボード部の重りでバランスを取っていたが、A12ではこのような「トレードオフ」ではなく、2in1ながらクラムシェルのPCと100%同等に扱えるという。これを実現する要となる、「スタビライザーフラップ」構造に本記事は焦点を当てる。

VAIO A12のブラックモデルとシルバーモデル

「構想3年」の中でも「非常に時間をかけた」

 VAIO執行役員の林薫氏は、VAIO A12を世に出すまで、構想に3年、開発に2年かかったと明かす。その中でも、スタビライザーフラップの構想には「非常に時間をかけた」という。

スタビライザーフラップ構造

 そもそも、スタビライザーフラップ構造とは何か。簡単に言うと、2in1ノートにありがちな、タブレット部の重さに引っ張られてキーボードごと奥へ倒れていくことを防ぐための構造だ。

 2in1ノートが奥へ倒れてしまうのは、PCとしてのメインパーツがディスプレイ部の裏に搭載されており、重いからだ。クラムシェルタイプのノートPCはディスプレイ以外のパーツをキーボード部に格納するため重心が手前にあるが、タブレットとしても利用できるスタイルの2in1では重心が奥にならざるを得ない。

2in1の課題

 これを解決する従来の策の一つがキックスタンドだが、キックスタンドを安定させるには机など広い平面が必要だ。解決策のもう一つは、キーボード側に重りを入れるということ。奥へ倒れていくのは防げるが、その分PC全体としては重くなってしまい、モバイル性を損ねる。

キックスタンドや重りなど、解決策はあるものの……

 スタビライザーフラップは、キックスタンドでもなく、重りでもない方法でこれを解決するものだ。

 通常のクラムシェルでは、キーボードとディスプレイをつなぐ「ヒンジ」の外側が支点となるが、ヒンジを覆うような曲がった板の構造であるスタビライザーフラップは、この支点をより奥へずらす。

ヒンジがキーボードとスタビライザーフラップの間に入っていく

 PCを畳んでいる時にはスタビライザーフラップも畳まれた状態だが、PCを開くとヒンジがキーボードとスタビライザーフラップの間に滑り込んでいく。その結果、スタビライザーフラップが開き、キーボードの手前側とスタビライザーフラップの奥側でPC全体を支える状態となるのだ。

 こうなると、ヒンジよりさらに(ユーザーから見て)奥にあるスタビライザーフラップが支点となるため、これがない状態に比べて重心を前に持ってこれる。キックスタンドや重りを使わず、クラムシェルタイプのPCと100%同等の使い心地を提供できるわけはここにある。

スタビライザーフラップの構造

 このような構造を考えるに当たり、林氏は「妥協も矛盾もない構造を考えるのに非常に時間をかけた」という。さらに、「構造が固まった後は、いかにシンプルに強固にするか。お客さまに長く使っていただくためには、簡単に壊れるものであってはいけない」と堅牢性もアピールした。

 なお、キーボード側にはセカンドバッテリーがあるモデルとないモデルを選択できる。ないモデルであれば本体と合わせて約1099g、バッテリーがあるモデルは合わせて約1209gだ。バッテリーありモデルは、スタビライザーフラップに「重り」的なアプローチも加わるため、よりクラムシェル的に安定する。

 バッテリーありモデルは本体と分離させた時にワイヤレスキーボードとして使用でき、プレゼン相手に画面を見せながらの操作や、液晶タブレット的にお絵描きをする際のショートカットキー操作に利用できるため便利だ。

お絵描き用途なら、分離していてもキーボードを使えるセカンドバッテリー搭載モデルを選びたい

 AES方式のワコムペンに対応し、筆圧は4096段階取得できる。絵を描く用途を考えて購入するのであれば、キーボードにセカンドバッテリーが搭載されているモデルを選びたい。

 スペックのカスタマイズは最大で、第8世代CoreのYシリーズ(Amber Lake-Y)のCore i7-8500Y(2コア4スレッド1.5GHz、最大4.2GHz)、メモリ16GB、ストレージ1TB SSD、LTE搭載を選択可。ここにセカンドバッテリー搭載キーボードとワコムペン、指紋認証を選択すると価格は35万1300円(税別)となる。

 その他スペックの詳細については、別記事を参照してほしい。

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