中国のAI大国化をアシストしたのはゲイツ氏? AI戦略の要となる「Mictosoft Research Asia」20年の歩み鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

» 2018年11月30日 06時00分 公開
前のページへ 1|2       

Microsoftの「AI」戦略を担うMSRAの立ち位置

 MSRAでは「Web & Search」「Networking & Systems」「ML & Intelligence」「Speech & Languge」「Vision & Graphics」の5つの重点テーマを持って活動しており、その成果の一端は以前にMSRAを訪問した際のレポートにもある通りだ。

 MSRAというと「小冰(Xiaoice)」や、そのローカル版とも言える「りんな」のAIチャットBot開発のイメージがあるかもしれないが、実際にはLUIS(Language Understanding Intelligent Service)のような構文解析や音声認識、Azureデータセンターにおける各種技術やBingのWeb検索技術まで、Microsoftの基礎技術研究の根幹を担っている。

MSRA 北京北西部の中関村にあるMSRAのビル。訪問した週は大気も比較的きれいで青空がのぞいていた
MSRA MSRAにおける5つの重点分野
MSRA 音声+構文解析+AIの成果といえば「小冰(Xiaoice)」や「りんな」が知られているが、技術の応用範囲はもう少し広い

 今、Microsoftを横断する形で独立した研究部門として存在するAI & Research部門のトップをMSRA出身のハリー・シャム氏が担当していることからも分かるように、MSRSは特に機械学習やAI活用における研究では秀でている。だが同社によれば、本社のあるレドモンドのMicrosoft Researchを含め世界中が連携して動いており、必ずしも北京のMSRAがリードしているわけではないようだ。

 2018年9月には、上海に第2のMSRA拠点とも呼べる「Microsoft Research Asia-Shanghai」が設立され、上海市が運営するINESA(上海儀電)と共同で「Microsoft-INESA AI Innovation Center」が設立・運営されていくことが発表済みだ。

 アジアにおけるMicrosoft Researchの拠点はインドのハイデラバードなどにも存在するが、MSRAの名称を冠する施設はこの上海と北京の2つだけとなっている。上海での活動内容については今回のイベントでは語られなかったが、今後ある程度成果が出た時点で改めて報告されることになるだろう。

MSRA Computer Visionにおける最新の研究成果。中国では画像認識を使った本人確認や行動追跡のソリューションが世界と比較しても極度に発達しており、これはMSRA並びに周辺大学のソフトウェア研究の注力ぶりが反映された結果ではないかと筆者は考えている
MSRA 意外に思われるかもしれないが、Xbox OneのV-GPUの技術もMSRAで開発されたものだ

 MSRAでは本イベント開催にあたり、世界の報道関係者を集めた「Microsoft AI Immersion Tour」という最新成果を報告する紹介ツアーも開催しており、前回のツアーからのアップデートや最新事情を取材することができた。このあたりの事情は本連載で改めて紹介していく。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月28日 更新
  1. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  2. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  3. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  4. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  5. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  6. 2025年までに「AI PC」を1億台普及させる――Intelが普及に向けた開発者支援をアップデート ASUS NUC 14 Proベースの「開発者キット」を用意 (2024年03月27日)
  7. いろいろ使えるFireタブレットが最大7000円オフ! Echo Budsは半額以下で買える! (2024年03月26日)
  8. 15.5万円の有機ELディスプレイ「MPG 271QRX QD-OLED」に指名買い続出 (2024年03月25日)
  9. Core Ultraプロセッサ搭載の14型ビジネスノート「Let's note FV5」登場 直販限定で37万4000円から (2024年03月26日)
  10. NES風レトロルックな「AYANEO Retro Mini PC AM02」を分解──メモリとSSDを換装してみた (2024年03月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー