未来を創る「子どもとプログラミング教育」

ドコモの段ボール製プログラミング教育ロボ「embot」 小学校先生から熱視線

» 2018年12月10日 16時38分 公開
[迎悟ITmedia]

 NTTドコモは12月5日、教育用プログラミングロボット「embot」(エムボット)を活用した教員向けの研修プログラムを世田谷区立 東玉川小学校で実施した。手のひらサイズの段ボールロボットが、これからプログラミング教育に取り組んでいく先生たちの注目の的となった。

NTTドコモの教育用プログラミングロボット「embot」

 embotを紹介するのは、NTTドコモ イノベーション統括部の額田一利氏。

 embotは元々、額田氏が休日に趣味で作っていたもの。スーパーでもらってきた段ボールを外装にして動くロボットだった。これを社内コンペに出したところ、入賞し製品化に至ったという。

NTTドコモ イノベーション統括部の額田一利氏

 現在のembotも、外装には段ボールを活用。標準キットのままでも、デフォルトの「クマ」の他、耳の部品交換で別の動物に組み替えられる。

 外装が段ボールであることから、色塗りや切り抜きでのカスタマイズを男児・女児関係なく楽しめるのが魅力だ。

 「最初からカタチあるものを使うのではなく、自由に作れることを生かし『どんなものを作りたいか』の設計図を作る。そこから完成形までに必要な動作を想像し組み上げていくため、プログラミング学習の教材として優れているのではないか」(額田氏)とembotの有用性を紹介した。

 額田氏が用意したembotの動作サンプルを見て、先生たちもembotで同じ動きをするようにプログラムを組んでいく。

 東玉川小学校は「平成29年度情報教育推進校」「平成30・31年度 プログラミング教育推進校」となっており、すでに先生たちもプログラミング教材の扱いに長けているのか、どんどん課題をこなしていく。

 embotの操作について「分かりやすい」と評価する声や、「ボタンの表記など、こうした方がいいのでは」といった改善のフィードバックが次々に出てきていたのが印象的だった。

 embotはプログラミング課題に「レベル」が設けられている。まずレベル1の基礎から簡単なプログラミング操作を学び、学習するについてレベルが上昇。レベル5まで、段階的に「どんなプログラミングができるのか」を学べるように作られている。

 ビジュアルプログラミングだけでなく、テキストコーディングも可能。授業内容や児童の習熟度にあわせ教材としての使い方が広げられることをアピールした。

 額田氏は、embotによるプログラミングの紹介にとどまらず、授業や年間指導計画へembotをどう組み込むかも提案する。

 授業成果としてembotでダンスをさせるプログラムを組む例を挙げ、「完成形をイメージして設計図を作る」「プログラムを作るチーム、部品を作るチームに分かれ、得意な部分を伸ばす」ということを学べる授業が実施できるとした。

 研修後には、先生が額田氏に質問や相談をする様子も見られた。embotはこれからプログラミング教育に取り組んでいく先生たちに響く教材だったといえるのではないだろうか。

プログラミングの必修化は課題だが難しいわけではない

 研修後、同校の奥山圭一校長先生にプログラミング教育の必修化についての現状や課題を伺った。

 「プログラミング教育はやらなくてはいけないものなので、消極的ではなく積極的ににどうやっていくかを学校全体で相談しながら模索している最中。授業時数が足りないというが、プログラミング教育で求められるものを見極めていけば十分にこなせていける」として、課題はあっても困難ではないという認識を示した。

 embotについては「『プログラミング的思考』というと抽象的で、教師も分かりづらいと考えてしまう。それを見える化できるembotは教師も児童もとっつきやすくできるため教材として最適」と、好意的な評価だった。

embotでオフラインを活性化させたい、得意を伸ばしていきたい

 embotの産みの親である額田氏に反響を聞くと、「予想外に女の子からの反応が良い」という。

 「プログラミング教材は男の子をターゲットにしてしまいがちだが、embotはその見た目から、女の子が進んで完成形をイメージし、課題に取り組んでくれる。プログラミング的思考はプログラムが書けることではないので、アナログ的な作業が得意な子は段ボールで外観を作っていくことに注力すればいい。役割を分担するチームビルディングと得意分野の2つを伸ばせる教材として今後育っていくのでは」(額田氏)と、embotで学習する子どもたちの成長に期待を寄せた。

 また、embotを展開していく上で「プログラミングスキルの可視化」も今後必要になってくるという見解を額田氏は示す。

 「プログラミングは『できる』『できない』の可視化が難しい。オンラインで実施しているドリルをクリアすることで○級という認定ができる。これをオフラインに展開していければ、スキルの見える化が行える。子供たちのスキルの見える化は、授業を考えていくのにも役立つはず」(額田氏)

 プログラミング教育と聞くと難しいものをイメージしがちだ。

 embotはロボットの見た目、ソフトウェアの見た目、どちらもとっつきやすく、プログラミング教育の難しそうなイメージを払拭できそうだ。

 今回の研修に参加した先生たちは、「意欲的に授業に取り入れていきたい」「児童目線で考えても楽しみな授業になる」と、embotに対し総じて好意的な反応を示していた。子どもたちが学校からembotを持って帰ってきて、自身でさらにプログラミングするような光景が、今後見られるのかもしれない。

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