1月13日、秋葉原に“自作キーボード”専門通販サイト「遊舎工房」の実店舗がオープンした。同社がこれまで通販で扱ってきた商品の他、各種キーボードキットや海外製のキーキャップなどをラインアップする。また、工作スペースを併設し、その場でキーボードキットを組み立てられる。
遊舎工房の実店舗は、末広町駅から歩いて5分程度の場所にある。向かいには電子パーツショップのaitendoがあり、自作キーボードなど電子工作好きにとってはおなじみ(?)の場所だ。
開店は同日の午前10時からで、記者が午前9時40分ごろに店舗前に向かった時点では前に6人の開店待機列ができていた。
開店すると、記者を含めて15〜20人が店頭に詰めかけ、思い思いのパーツやキットを購入。記者はその後午後3時半まで店舗(工作スペース)に滞在していたが、客足は途切れることなく、混雑が続く状況だった。
同社代表取締役の倉内誠氏は、「開店日とはいえ、予想以上の反響だ」とうれしい悲鳴を上げる。
「これまで通販で販売していた感触や、『天キー』(自作キーボード好きが集まったイベント)での感触とも異なる。購入を検討するキーキャップやキースイッチを実際に見たり触ったりして吟味できることが店舗の強み。ここに潜在的な需要があると狙ってはいたが、狙い以上に多くの方に来ていただいている」(倉内氏)
同社が以前から通販で販売している左右分離型キーボード「Helix」(なお開店当日は在庫なしだった)や「HelixPico」の他、「ErgoDash」「ErgoDash mini」「Lily58」「Ergo42 Towel」「Corne Cherry」など、国内の個人が製作した自作キーボードキットを多くラインアップする。
それぞれが個人開発ということもあり、ピクシブの同人向け通販サービス「BOOTH」に販売ページがあっても在庫なしの状態が続いていた各種キーボードキットも、遊舎工房店頭であれば手に入る状態だ。
なお、ErgoDashの親指あり版がお昼過ぎに売り切れるなど、人気キットによっては来店時に在庫がない可能性もあることに注意だ(ErgoDashは14日に再入荷するというアナウンスがあった)。
買ったその場でキーボードを組み立てられるよう、工作スペースを併設しているのも大きなポイントだ。
工作スペースには温度調節はんだごて、はんだ、電動はんだ吸い取り器、はさみ、ニッパー、ドライバーなど、キットの組み立てに必要な工具が一通りそろっている。開店から1月末まではこの設備を(消耗品であるはんだも含め)無料で利用できる。2月以降は2時間500円の利用料を予定している。
自作キーボードに興味はあるが工具を持っていないという人にとっては、初期コストなしで良い工具を利用できる機会となる他、電子工作に自信がない人にとっても店員などに電子工作のコツを聞けるチャンスとなる。
自作キーボードの組み立ての工数はほとんどがはんだ付けといっても過言ではない。1キー当たり最低4箇所(ダイオード含む)のはんだ付けが必要になるため、キー数が増えるにつれてはんだ付け回数が膨大になり、どこかで失敗するといざPCにつないだ際に特定キーの入力がうまくいかないという不具合にもつながる。
記者も一度そのような経験を踏んで(キットを1つダメにして)自作キーボード組み立てに慣れたが、手間の掛かる組み立てであるだけに失敗したときのショックは大きく、そうした失敗を未然に防げる機会があることは、自作キーボードへの間口を広くすることにもつながることのように思う。
筆者も今回ErgoDashのキットとキースイッチにGateronの「Silent 黒軸」を購入して、10時15分ごろから組み立てに励み、約5時間後の午後3時に完成を見た。
組み立てスペースには、3DプリンタやUVプリンタ、レーザーカッターも陳列されているが、これらは春ごろからの提供を予定している。
これらがあれば、自身が新たに製作した自作キーボードのプロトタイプ(のアクリル部分)をレーザーカッターで成形したり、既存の自作キーボードを自身の手に最適化するような台を3Dプリンタから出力できるようにもなる。
今、注目が集まる“自作キーボード”に興味関心がある人たちにとって、遊舎工房は外せない存在になりそうだ。
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