米Appleが2019年の年末に発売する新型「Mac Pro」と「Pro Display XDR」は、いずれも理想的な設計を求めて作られた傑作ともいえる製品だ。
性能、構造ともに素晴しく、まるで高級スポーツカーを創り上げるかのように、部品精度や素材にこだわり、感性にも訴えかける妥協のない製品に仕上がっている。
高級スポーツカーのオーナーになる人がごく一部であるのと同じように、これらの製品を手軽に購入できる一般ユーザーはごく一部だろうが、ハイパフォーマンスを常時必要とする業種や、コンピュータで画像、映像を扱うプロフェッショナルの現場では、むしろ“コストパフォーマンスに優れた”製品となるだろう。とりわけ、Pro Display XDRはパーソナルコンピュータ用ディスプレイとして、他に例のない素晴しい出来だ。
もっとも、Mac ProやPro Display XDRの対象ユーザーが限られる一方で、Macファミリーには求めやすい価格帯の「MacBook」や「Mac mini」も用意されている。そして新しいmacOSの「Catalina(カタリナ)」について、その振る舞いや改良点を整理してみると、「なるほど」と膝を打つ気付きがあった。
このコラムでは、Mac Proに簡単に触れるとともに、Pro Display XDRの画質を掘り下げつつ、Catalinaの注目機能である「Sidecar」や「Catalyst」についてもお伝えしたい。
Mac Proは、かつての「Power Mac G5」をほうふつとさせる、パーソナルコンピュータで仕事をする開発者たちの夢を実現したような製品だ。
(筆者も使用していた)初代Mac Proに引き継がれた設計は、機能セクションごとにモジュール化され、配置を最適にすることで、拡張性、メンテナンス性などに優れた名作だったと思う。同じコンピュータを5年以上にわたって使い続けたのは、この製品が初めてだったが、新しいMac Proはそれ以上の存在となるだろう。
AppleがMac Proの年次アップデートを怠らなければ、同じメカ設計のまま長期間、魅力を放つ製品として同社のラインアップに残り続けそうだ。
一方、32型6KディスプレイのPro Display XDRも、これまでにない素晴らしい仕上がりだ。この製品の良さは、画質面で妥協のないぜいたくな設計を施しながら、パーソナルコンピュータ用ディスプレイに特化することでコストを大きく抑えた点である。
Mac Proが5999ドルから、Pro Display XDRが4999ドルであり、さらに別売のスタンドが999ドルであることを考えると、その合計金額は近年のパーソナルコンピュータの常識から逸脱しているが、品質と性能を追い求めるためにコストと手間をかけることをいとわないAston Martinのクルマと同様、これらの製品も決して“高すぎる”と感じさせない。
恐らく、この製品が必要な読者には説明不要だろうが、基本スペックとしては、最大28コアのIntel Xeonプロセッサを搭載し、メモリスロットは12本(6チャンネル)、PCI Expressスロットは8本ある。10Gbのイーサネットポートは2本備える。
GPUはこのMac Proに初採用となるAMD Radeon Vega II Duo搭載カードを用意。さらに「Afterburner」と名付けられた毎秒60億画素を処理できるビデオ処理プロセッサもある。8Kビデオなら3本、4Kビデオなら12本のストリームを同時処理できるという。電源は最大1400Wまで耐えられ、毎秒300Lのエアフローを確保しながらも高い静音性を実現する。
これまで「Pro」といいつつも、高い性能を出せていなかったMac Proだが、やっと“Proらしい”仕様になったといえる。
しかし、筆者がより驚いたのはPro Display XDRの画質だ。
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