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» 2019年09月02日 08時30分 公開

そろそろ会議やめませんか:“VRのご意見番”GOROman氏に聞く「まずはSlack、その先で生きるVR会議」 (1/2)

VRを活用することで、プレゼンや講演の非同期化をテストしているXVIの近藤「GOROman」義仁社長に話を聞いた。VR会議や登壇の今後を探る。

[西田宗千佳,ITmedia]

 とかく夏場は「暑い」ので、「出かけずにミーティングを終わらせたい」という話が増える。用件がぶつかって移動が難しく、「両方出たいのに片方には出られない」ということもある。

 こうした問題をテクノロジーで解決しよう、という話は自然な発想だ。ビデオ会議にしろVRにしろ、根本的な考え方は同じだ。

 では、実際にやるとどうなのか? 解決すべき点はどこで、どのような進化が考え得るのだろうか? VR関連企業であるXVI(エクシヴィ)の近藤義仁社長に聞いた。

GOROman VR関連企業XVIの近藤「GOROman」義仁社長。Oculus Japanの立ち上げに関わった、VR関連のご意見番でもある

 近藤氏は「近藤さん」というよりは「GOROman」氏といった方が通りがいいだろう。VR関連のご意見番でもあり、さまざまな「ハードウエアハック」の実践者であり、ソーシャルメディアのフォロワーも多い。

 GOROman氏は、9月末に開催されるUnityのイベント「Unite Tokyo 2019」への登壇が予定されているが、その登壇は、アメリカからの「テレイグジステンス登壇」になるという。そうした手法も含め、「会うこと・会わないこと」とは何かを聞いた。

トイレの中から海外とVRミーティング

 「VRミーティングという意味では、すごいところでやったことがありますよ」

 GOROman氏は冒頭、そう言って笑った。その場所とは「他人の会社のトイレ」。相手はFacebookである。

 GOROman氏は現在、VR開発を志す学生などに対してOculus Goを100台無償で配るプロジェクトを進めている。デバイスの提供はFacebookとの交渉で実現したものだが、実は前出の「他人の会社のトイレで行われたVRミーティング」は、このプロジェクトのための、Facebookとの重要なミーティングだった。

 「その時に使っていたのは、Oculus Goの『Oculus Rooms』です。本当は会社でやるつもりだったのですが、移動中にお腹が急に痛くなってしまって。そこで、秋葉原にある友人の会社に行って、トイレの中からやりました。シンプルなアバターを使ったものですけど、音質もいいし、顔がどちらを向いているかも分かる。何より、トイレにいても相手に分からない(笑)。髪がまとまっていなくても、お化粧していなくても分からない。そういう非対称性の便利さはあります」

GOROman OculusのVRによるチャットツール「Oculus Rooms」。Oculus Goに対応し、首の方向と片手の位置を再現する

 GOROman氏は、日本でのOculus Japanの立ち上げに関わっていたことでも知られている。その際、Facebookとの本社とのミーティングはほぼビデオ会議によるものだった。だから、ビデオ会議の経験も多い。VRでの会議にはビデオ会議にはない良さがある。それが「身振り手振り」であり「顔の向き」だ。

 「電話でも、取材や会議はできなくはないですよね。でも、知らない相手だとやりづらい。相手のことをよく知らないと特にそうです。知っている人同士だと脳で補完できますけど、初対面だと欠損しちゃう。要は、相手が理解したのか、誰にしゃべっているのかなどの情報です。そういうものは、アイコンタクトや表情、呼吸なんかで通じます。だから、VRがミーティングに向く、というのは、VRの文脈を理解している人には違和感がないでしょう。今までで一番、話している感じに近かったのは『Facebook Spaces』ですかね。両手のコントローラーが使えるので、身振り手振りをよりちゃんと伝えられます。Oculus Goの『Rooms』だと片手ですしね」

GOROman FacebookのソーシャルVRアプリ「Facebook Spaces」。両手の動きをコントローラーで再現できるため、より感情が伝わりやすい

 もちろん、現状でのビデオ会議やVR会議に問題がないか、というとそうではない。現在の技術でも、「実際に会うこと」に比べて情報の欠損が大きいからだ。ビデオ会議は相手がどちらを向いているか、いまひとつよく分からない。話す側も、ビデオの顔の位置とカメラの位置が一致しないので、「相手を見つめる」ことができず、なんとなく虚空を見つめる感じになって不自然だ。かといってVRでも、ようやく顔の向きや手振りが分かるようになったに過ぎない。「まだ通信に乗らない情報が多すぎますからね。それにHMD(ヘッドマウントディスプレイ)をかぶるのは障壁なので、それだけの利点で大企業が導入するか、というと難しいのでは」とGOROman氏は言う。

 では、どういう利点が必要なのか? それは「非同期」だ。

実は「まずSlack」でいい? VR会議はその先にある

 非同期とはどういうことか? 簡単に言えば「相手や時間と場所を合わせなくていい」ということである。実際に会って行う会議は、時間も場所も合わせる必要があり、これが電話やビデオ、VRになっても「時間」は合わせる必要がある。この両方から解放するのが「非同期」コミュニケーションだ。

 「Slackなどのチャットで仕事ができるようになってきたことは、とても大きいと思います。僕は『MSNメッセンジャー』の時代からチャットで仕事をしていましたが、今はあたりまえになって来ました。チャットのいいところは、なかば『非同期』であること。今の会議のように『同期型』だと、時間も場所も双方が合わせないといけないので大変です。便利度としてはSlackの方が上の部分もあります。でも、自分がアイコン化されていて、文字だけのチャットでは伝わらない部分が多い。よく知っている同士ならいいんですけど。特に海外とのやりとりだと、チャットではコミュニケーションのための情報がなさ過ぎる。要は『相手とのプロトコル』が分からないので、失礼レベルのコントロールができない。やっぱりコミュニケーションにはプロトコルを合わせることが大事です」

 そこで、必要な時に「情報を付加していく手段」として、VR会議システムがもっと手軽に使えるようになるべきだ、とGOROman氏は言う。

 「チャット中に『これでは分かりにくいな』と思った時、ボタンを押すとすぐにVR会議に入れるくらいの入り口がいいのかもしれません。アプリとして別れているうちはダメで。極論すれば、飲み会中に『あいつもいると面白そうだから電話で呼ぼう』という感覚で、VR会議ができるようになるべきだと思うのですが」

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