プロナビ

“VRのご意見番”GOROman氏に聞く「まずはSlack、その先で生きるVR会議」そろそろ会議やめませんか(2/2 ページ)

» 2019年09月02日 08時30分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
前のページへ 1|2       

人が「ライブだ」と感じるにはインタラクションが必要

 非同期という意味で、GOROman氏が何度かテストしていることがある。それは「プレゼンや講演の非同期化」だ。

 「実は、『登壇』って奴を非同期化できないか、と思っているんです。色々な機会に呼んでいただくのですが、同じような内容を話すことが増えています。でも、それをぜんぶYouTubeの動画にしてしまったら、怒られますよね。『せっかく来たのに!』って。でも、アバターで登壇した場合、ちゃんと登壇した、と思ってもらえる可能性が高いですよね。『ハイブリッド化したいというのは、講演部分は基本的に記録したものの再生だけど、その場での反応に応じて変えたり、質疑応答はちゃんと同期型でやったり、という風にできないか、ということなんですが」

 動画を流すと、人は「生ではない」と思う。だが、VRなどでキャラクターが動く場合、人は「生だ」と思う可能性が高い。だが、人はなぜをそこで「ライブ感」を覚えるのか? ビデオではダメだと思うのだろうか?

 「ポイントは、インタラクションがあるかどうかだと思います。例えば、拍手があって、それに反応できるかどうか。聴衆の反応を見て、話す長さを変えられるかどうか、というような。以前、名古屋で開催されたイベントに登壇した際、実は、VRのアバターとして出たんです。その時はちょっとやりづらかった。なぜなら、こちらから会場の様子が見られなかったからです。相手の反応のフィードバックを受けて話を分岐させたいのに、それがやりづらかったんです」

 そこに自分がいなくても、いる時と同じように話し、聴衆に同じような価値を与えることができないか。重要なのは、登壇者が楽であることと同時に、聴衆が満足することが重要。そのためには、会場とのインタラクションが必須なのだ。

サンノゼから東京のイベントへ「テレイクジステンス登壇」

 冒頭で述べたように、GOROman氏は、9月25日と26日に東京で開催されるUnityのカンファレンスイベント「Unite Tokyo 2019」の2日目(26日)に講演者の一人として登壇する。ただし、本人は東京にいない。米サンノゼで開催されるOculusの開発者イベント「Oculus Connect 6」に参加するためだ。

 そこでUnite Tokyoには、ロボットをアメリカから操作する「テレイクジステンス登壇」になる。使うのは、「プリメイドAI」というロボットだ。元々は15万円ほどするホビーロボットだが、一部店舗で2万円ほどの価格で売られていた時があり、ハードウエアハックを楽しむ人々の間で話題になった。GOROman氏も積極的にハックし、VRヘッドセット(Oculus Rift S)とコントローラーでプリメイドAIを動かせるようにしている。今回の登壇ではこれを使う。

GOROman GOROman氏が「プリメイドAI」をハックし、VRヘッドセットとコントローラーで動かせるようにしたもの。Unite Tokyoへの「テレイクジステンス登壇」にはこれを使う

 HMDのセンサ−が首の動きをデータ化し、両手の動きはハンドコントローラーがデータ化する。結果的に、首と手の動きを再現できるようになっている。GOROman氏は「VR人形浄瑠璃みたいですよね」と笑う。

 筆者も体験してみたが、操作はとても簡単だ。VR空間内にあるプリメイドAIに自分の体を合わせるように立って、首や手を動かすイメージになっている。現在は正面に鏡のように自分(プリメイドAI)の姿が映っているが、Unite Tokyoでの登壇時には「現地の聴衆がどんな風かを映し出す予定」(GOROman氏)だと言う。

GOROman VR空間内での操作の様子。自分がプリメイドAIの位置に立ち、操作する

 「Unite Tokyo 2019」2日目のチケットはまだ販売されているので、興味がある方は、参加してみてはいかだだろうか。

 GOROman氏の取り組みは、ほとんどが個人的な興味に基づくプロジェクトだ。直接ビジネスにつながっているわけではない。だが、こうした部分から得られた知見が広がり、我々の「会議」や「登壇」のあり方を、少しずつ変えていくのかもしれない。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー