これまで、筆者が執筆してきた連載がリニューアルすることになった。
新しいテーマは、「会議やめませんか」だ。
もちろん、必要な会議はある。でも、もっと会議はコンパクトにできるし、「会う」という考え方を変えることもできる。
筆者のようなIT系ライター、それもフリーランスの人間が会議を語るのは、ちょっと奇妙に思えるかもしれない。だが、ITを道具で生かす観点で考えた場合、できることは思った以上に広い。「会議改革」はITの本丸といっていいくらいだ。
というわけで今回は、第1回として、これから連載を進めていく上で「ITで会議を減らすとは」ということについての概論をお届けしたい。
VR関連を取材していると、次のような言葉を聞くことが非常に多い。
「ミーティングのために、会う手間を減らしたい」
「必要な会議をもっと効率的に行いたい」
以前に記事も書いたが、VRのビジネス応用に関しては、「会議」という要素がポイントであり、新しいビジネスのタネの1つである。
会議の本質は、「人が同じ時間、同じ場所に集まって特定の事象についてコミュニケーションをとることで、課題の洗い出しや解決を図る」ことにある。一方で、「同じ時間、同じ場所に集まる」ということは、シンプルに人の活動を縛る。時間を合わせるのも大変だし、同じ会社の同じオフィスで働いていない人となると、さらに大変なのは、みなさんも重々ご承知のはずだ。
VRは、自分の周囲を別の映像に置き換える。すなわち、自分を別の場所に移動させたと錯覚させることが可能になるわけで、会議の持つ「集まる」という行為のもつ意味を変えることができる。
お互いが集まる場所を現実の場所から「バーチャルな空間」に変えることで、会議に参加するために必要な「移動にかかる時間」がなくなる。移動には前後の予定も関わってくるため、もしどこでもVRで会議ができるのであれば、スケジュールの自由度は大幅に上がる。そもそも、「同じオフィスにいる」ということが対話の促進を目的としているならば、オフィスそのものの役割も変わるはずだ。
これはまさに「働き方改革」そのものであり、会議の見直しは、働き方改革の核の1つなのだ……。
とはいうものの、だ。
VRで会議、という考え方は、まだまだ生まれたばかりの発想である。理想的には「どこでもVRで会議ができれば、オフィスはなくてもいい」ということになるが、それは「PCがあればどこでもオフィスになる」という考え方の延長線上にあるものだ。PCのように成熟した製品がある現状でも、「どこでもリモートオフィス」とはいかない。まだ初期段階にあるVRを使うなら、制約が多数あるのも事実だ。
だが、まだうまくいかないシーンがあるとすれば、それがどんな時なのかも分からないし、どう解消すればいいかも分からない。
初期は初期なりに「どのような時に使えて、どのような課題があるのか」を明確にすることが重要であるはずだ。
そもそも、会議を減らしたりシンプルにしたりする方法は、なにもVRだけとは限らない。ビデオ会議もあるし、それ以前に、SlackやGitHubのような情報共有ツールを使うことで、会議の持っていた一部の機能を代替することもできるはずだ。
コンピューターが生まれてからずっと、「コミュニケーション」は大きなテーマだった。会議はコミュニケーションの一形態であり、いろいろなテクノロジーを使うことで、もっと効率を上げることができるのではないか。
すなわち、「無駄な会議を無くす」「会議のための移動を減らす」ことはIT全体の中核的な課題であり、VRに限定して考えるものでも、語るべきものでもないのだ。
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