もっとも、販売の場面で大きく影響するのは、製品ラインアップ全体の見渡しと「お得感」、それに「バッテリー駆動時間」ではないかとみる。
今年のラインアップは継続販売する既存モデルを含め、バランス良く再配置した上で、スマートフォンユーザーの悩みであるバッテリー駆動時間の解決に取り組んだ。
「iPhone 8」がローエンド端末として置かれ、iPhone 11に近い性能と同等の外観やディスプレイを持つiPhone XRが購入しやすい端末として並べられている。もともとiPhone XRは「バッテリーの持ちがいいiPhone」と評判だった。
実売数という意味では、商戦期を過ぎるとこれらの端末が主役となっていくだろう。とりわけiPhone 8は価格がこなれている上、「3D Touch」が搭載される唯一のモデルとなった。日本の場合、LINEのトークを「未読のままのぞき見する」ために3D Touchを望む若年層は多い。LINE側が「触覚タッチ(Haptic Touch)」に対応するまでは、望んでiPhone 8を選ぶユーザーもいるだろう。
iPhone 11はさらに省電力化でバッテリー駆動時間が延びているが、価格は昨年のiPhone XRよりも引き下げられた上、円高の影響もあって日本向け製品の価格が見直されて買いやすくなっている。しかも性能、メモリ(RAM)容量、広角カメラと超広角カメラなどは最上位モデルと同じだ。
そしてiPhone 11 Proシリーズには、最新の高密度バッテリーを搭載することでiPhone 11 Proで4時間、iPhone 11 Pro Maxで5時間という大幅な駆動時間の延長を実現した。価格帯とバッテリー駆動時間はほぼ比例関係で、11がお買い得な一方、11 Proシリーズの利点もハッキリしている。
また、本格ローンチはこれからであり、また欧米向けコンテンツが主とはいえ、映像サブスクリプションサービスの「Apple TV+」が月額600円と制作費への投資額を考えれば格安で提供されるが、さらにAppleの端末を購入すると1年分のファミリーライセンスが与えられる。この施策が続く限り、家族の誰かが端末を1年に1度購入するだけでずっと無料で見ることが可能だ。
ゲームのサブスクリプションサービス「Apple Arcade」も同じく月額600円で、スマートフォン向けゲームの業界に一石を投じるとともに、Apple製品のお得感を演出する要素になっていくだろう。
これまで低価格製品の開発・提供には消極的で、旧モデルを用いることでラインアップを構成してきたAppleだが、コンテンツサービスを通じてお得感を引き出そうとしている。
映像作品、ゲームともにカタログがそろってくれば、Appleにとっての大きな強みに育っていくだろう。
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