そもそもApple直営店とは何を目指したものなのか。PCもスマートフォンも、そんなに頻繁に買い換えるものでもないのに、どうしてこれだけ大勢の人が訪れるのか。
まずは直営店の目指すところについてオブライエン氏に聞いた。
「開業当初から、Apple直営店の狙いは変わっていません。顧客を大事にすること、そして生涯を通した関係づくりを行うことです。Apple直営店に足を運んだ全ての人、さらにはオンラインのストアで商品をオーダーする全ての人、あるいはコールセンターに相談の電話をかけた全ての人に対して、丁重な心配りを行う――これが私が掲げる一番の目標です」
「つまり顧客のニーズに応えることです。私たちはこの領域において、常にイノベーションを続けていこうと考えています。デジタルとリアルが交わる交差点では今、多くの素晴らしいことが起きています。そして私たちはそのどちらにおいても、顧客との関係をさらに良いものにするための準備ができていると思います」
ただの店舗の目標としては少し大胆にも思えるが、Appleはそれをどのように形にしているのか。
直営店にはもちろん、“店舗”の機能がある。Apple 丸の内のようなビジネス街にある店舗では、必要なケーブルであったり、HDDであったりを素早く見つけて買って、すぐに帰りたいという顧客も当然いる。そういう顧客には、「アベニュー」と呼ばれるエリアに商品が分かりやすく陳列されている。周囲にいる店員を捕まえればその場で会計を済ませてすぐにオフィスに戻ることができる(Apple直営店にはレジがなく、店内を歩き回る店員1人1人が携帯型の決済装置を持っている)。
オンラインで商品の在庫を確認し、購入を済ませた上で店舗でピックアップをするであるとか、お店で見かけた、今すぐにはいらない(買えない)ものをスキャンしてショッピングカートに入れておき、後からオンラインで購入、といったことも可能だ。
同時に直営店は、Appleに関連する製品に関する悩みをなんでも相談できる場所でもある。故障による修理などはもちろん、Apple以外のメーカーが作るアプリの使い方がわからない、といったことでも気軽に相談ができる。
読者の皆さんはともかく、世の中一般では、スマホの機能をほとんど使いこなせていない人の方が圧倒的に多い。そんな人でも、iPhoneで気になる使い方があればStoreアプリからセッションを予約して、簡単に相談に向かうことができるのだ。
Apple直営店では、例えばプログラミングやお絵かきなど、自分にできるか分からないことを簡単に体験させてくれるToday at Appleもある。このToday at Appleこそが、今やApple直営店の最大の魅力、そしてコンテンツとなりつつある。
「こうしてテクノロジーであったり製品について深く知ることが、顧客の人生の幅を広げ、豊かなものにする。だから私たちはこの2年間、Today at Appleのプログラム開発に力を入れてきた」とオブライエン氏。
実際、Today at Appleのプログラムを見ると、Appleの本社「Apple Park」の設計でも有名な建築事務所「Foster+Partners」によるドローイング(お絵かき)のセッションを始めとして、魅力的なプログラムがたくさんある(こちらは人気のプログラムで世界中の直営店で展開されているようだ)。
中には小学校などを対象にしたToday at Appleもあるようで、先日は立教小学校の3年生の児童がApple 丸の内に招待されて、「Swift Playground」を使ったプログラミング体験を行い、そこにCEOのティム・クック氏が現れるというサプライズがあった。オープン前のApple 川崎にも、森村学園初等部の4年生の児童が招かれた。
Apple製品の価値は、何もそのハードとOSそしてアプリにあるだけではない。何かあったときに簡単に相談ができる直営店、自分の人生の幅を広げてくれるToday at Appleのプログラムを受講して、早速自分のデバイスで試す――このようなことを通して、Apple製品の価値はさらに高まるのだ。
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