“イチキュッパ”の実力は? ドン・キホーテの激安超小型PC「NANOTE」のいい所を探してみよう超小型PCの道(3/3 ページ)

» 2020年06月10日 13時00分 公開
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意外にも日本語入力に適したキーボード

 先ほど「テキスト入力など軽い処理なら」と言ったが、多くの人は「超小型PCで快適なタイプ入力ってできるの?」と疑問に思うかもしれない。

 超小型PCの多くは、限られたサイズの本体で、タイプできるキーピッチを確保するため、キーレイアウトをよくいえば「工夫」、普通にいうと「多少無理をして」変更を加えている。特に影響を受けるのが「0」「P」「L」「M」キー列から右にある記号関連のキーだ。ファンクションキーよりもさらに上の段に移動したり、Fnキーとの組み合わせで入力するようにしていたりと、運指的にタイプしづらいキーがどうしても出てきてしまうのだ。そのキーが文字入力で多用するキーだったりすると、文章入力のリズムが乱れて、快適に使うことができなくなってしまう。

 また、これまで登場した超小型PCは、米国英語(US)配列のキーボードを“そのまま”使って日本語配列化した(かなを印字し、一部の記号キーを変更した)ものが多く、日本語入力で多用するキーが押しづらいケースも少なくない。特に問題になるのが「−(長音)」「、(読点)」「。(句点)」、そして、かぎかっこの入力キーの組み合わせだ。加えて、日本語入力ソフトを起動する「半角/全角」キーや「変換」「無変換」「ひらがな/カタカナ(ローマ字)」キーの位置も重要となる。US配列に慣れていて、US配列のままのモデルを買う人なら、日本語入力のオン/オフに使う「Alt」キーと「〜(チルダ)」キーの位置だけ気にすればいいのだが……。

無理のある日本語キーボード 一部の超小型PCは、日本のユーザーに配慮してキーボードの日本語配列化を実施している。しかし、フルスクラッチで作り直しているわけではないので、(標準の)US配列以上に無理のある配列になってしまいがち(写真は「OneMix3 Pro」の日本語配列版)

 NANOTEのキーボードは、実測でキーピッチは約16mm(キートップサイズは約14mm)、キーストロークは約1mmを確保している。キーピッチは同じ7型の「OneMix2S」と同じで、5本全ての指を使ってタイピング、というわけには行かないが、3本指を駆使したタイピングであれば、指が擦れることはなく、ストレスもたまらない。

 キーを押した指はスーッと下がり、底を突いてもボディーがたわむこともなく、指の力を支えてくれる。ただし、キーの端をタイプすると、キートップそのものが傾いてしまう。タイプ音は「チャカ」だが、音量は控えめだ。低価格ノートPCにありがちな、ガチャガチャとしてグラグラとしてボディーがたわむ、というキーボードとは一線を画している。

 キーは日本語配列で、日本語入力用のキーも用意している。ただし、そのために1つの“穴”に2〜3個のキーを押し込んでいる部分もある。特に、「;(セミコロン)」「:(コロン)」「/(スラッシュ)」と、「、」「。」「・(中点)」は、それぞれ1つの穴に3つのキーが押し込まれているため、実測でキーピッチは約9mm、隣のキーとの間隔は約1mmしかない。

 日本語入力において、「、」「。」「・」キーはタイプする機会が多い。そのキーが“密接”しているということは、タイプ時にどうしても意識を向けなければならず、それゆえにタイプのリズムがいったん止まることになる。

 ただ、実際に文章を入力してみると、句点、句読点とも、文章の区切りでタイプするため、自然と思考がそこでいったん止まり、それゆえに、意識がキーに向いてリズムが止まってもそれほど違和感やストレスはなかった。

 他の超小型PCでは、「ー(長音)」キーの位置が問題となりやすい。通常の配列なら「0(ゼロ)」キーの右隣にあるはずだが、ファンクションキーの段まで追いやられたり、右手薬指では届かない左寄りに追いやられたり、ファンクションキーのさらに上まで追いやられたりしている。日本語の文中に頻出するのに、通常のキーボードとは全く違う場所にあるがゆえに、入力のリズムを大きく見出しがちだった。

 その点、NANOTEは「ー」キーがしっかりと「0」キーの右隣にある。Fnキーとの組み合わせも不要で入力できるので、リズムを乱すこともない。

キーボード NANOTEの日本語キーボード。他の超小型PCと比べると配列は良好だが、問題がない訳ではない(後述)

 一方で、NANOTEのキーボードには「これ何とかならなかったのか」という部分もある。かぎかっこの入力キーだ。

 通常の日本語配列キーボードでは、「かっこ開きキーは左上、かっこ閉じキーは右下」という位置関係となっている。しかし、NANOTEではかっこ閉じキーの右隣にかっこ開きキーがある。文章に入力するのとは逆の順番となってしまっているのだ。

 文章の入力順と逆ということは、非常に誤爆しやすいということでもある。幸い、かっこ開きもかっこ閉じも、文章の区切り的な役割を持つので、文章のリズムがいったん止まっても、それほどストレスにはならない。それでも、“体で覚える”ことは最後まで無理だった。

 なお、通常の配置と大きく異なる場所にあるものとしては、「@(アットマーク)」キーもある。通常なら「P」キー右隣にあるものが、カーソルキーの右隣に移っている。上から下と変わっているが、こちらも幸いにして、それほど使う頻度が高くないことと、タイプに使う指が通常と同じ右薬指であることから、体が覚えるまでさほど時間はかからなかった。

 ただし、上カーソルキーと誤爆する回数は少なくなかったことを付け加えておく。

問題のキー 赤枠で囲ったキーは「誤爆」する可能性が高い

 なお、ポインティングデバイスは光学式センサーで、二分割されたスペースキーとその下の段にある左右クリックボタンの中心部に配置されている。見た目はOneMix2SやMiniBookのもの近いが、NANOTEでは位置の工夫もあり、評価作業中にキーを誤って押してしまうことは“全く”なかった。

ポインティングスティック 位置の工夫もあり、ポインティングデバイスの操作でキーを誤って押してしまうことはない

Windows PCを試してみたいスマホユーザーにお勧め(要指導)

 ここまで、NANOTEで気になる側面を検証してきた。

 NANOTEは、PCに詳しいユーザーから「価格は確かに安いけれど、処理能力に制約があるから利用する場面を見いだしづらい」「初心者が価格の安さにひかれて購入すると、後々で大変なことになる」といった評価を下されることが多い。これは事実であり、「これが初めてのPCです」というユーザーが独力で使いこなそうとすると、途中で挫折するだろう。

 しかし、ベテランPCユーザーの指導の下、スマートフォンからのステップアップとしてテキスト入力やWeb閲覧といった限られた用途でWindows PCを使ってみる、という用途には適していると思う。例えば、スマホしか使ってこなかった高校生や大学生が、PCに慣れた友人や家族に支援してもらいつつ使ってみるのは十分に“アリ”だ。

 NANOTEの本体には、USB Type-C端子やUSB Type-A端子に加えてMicro HDMI出力端子も備えている。通常サイズのHDMI端子に変換するアダプターも付属するので、HDMIケーブルを用意できれば自宅のTVをディスプレイ代わりに使える。Webカメラも内蔵しているので、利用機会が急速に拡大しているWeb(ビデオ)会議も使える。

 TVに映像を出力して、USB端子にキーボードとマウスを接続すれば、利用環境を大きく改善できる。「家でも外でもNANOTE」という風に、モバイルコンピューティングの体験版として適したデバイスとなりそうだ。

ポート 本体のポート類は右側面に集中配置。左からmicroSDスロット、イヤフォン出力端子、Micro HDMI出力端子、USB 3.0 Type-A端子、USB 2.0 Type-C端子(電源入力兼用)
アダプター 電源アダプターはUSB Type-C端子に接続する
ケーブル Micro HDMI to HDMIアダプター(右)も付属するので、TVへの接続もしやすい
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