しかし、超小型PCの評価軸は処理能力だけではない。ユーザーが「何に使うのか」「何を求めるのか」によって評価軸は大きく変わっていく。
NANOTEの場合、Windows PCとして圧倒的に安い価格に存在価値を求めるユーザーは確実にいるだろう。
実際にNANOTEを購入し使っている人の声を見てみると、「使い物にならないほど処理能力が低ければ『安物買いの銭失い』だよね」という意見が少なくない。先ほど示したベンチマークテストのスコアや、実際に使った際のアプリケーション起動やウインドウの挙動の遅さを見れば、「使えない」と判断されても仕方はない。
しかし、「テキストの入力」「Webページ閲覧」「ストリーミングコンテンツ視聴」といった負荷の軽い用途で“軽い”アプリを使えば、処理が遅いと感じる場面はほとんどない。処理能力に合わせた使い道を模索すればいいのだ。
価格を抑えるために処理能力も控えめであるNANOTEだが、それが良い方向で作用していることもある。
超小型PCでは、ボディー内部の空気の流れや容積に制約がある。そのため、本体の冷却が不利な傾向にある。特に、Core i7クラスのCPUを搭載したり、転送速度の高いPCI Express接続SSDを組み込んだりすると、内部の発熱量が大幅に増えるため、小口径のファンを全力で回さざるを得ない。端的にいうとファンの風切り音が“うるさい”のだ。それでも放熱が間に合わず、ボディーをヒートシンク代わりにして放熱するモデルもあるが、その場合、ボディーの表面温度は「んんん! あっちぃ!」ということになる。
この点、NANOTEはAtomとeMMCという“のんびり”したパーツを選択したおかげで、発熱量は少ない。クーラーファンも搭載していないので、音も静かである。先述した3DMarkのNight Raidテスト中に本体の表面温度を計測した結果は以下の通りだ(室温25度の環境で計測)。
一番熱を持つ底面でも、40度程度に抑えられている。
両手で本体を持って使う機会が多い超小型PC、特に2in1タイプのものは、持てる程度に本体が熱くならないということは、何気に重要なことである。そういう意味で、NANOTEは手に持って扱いやすいPCといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.