これがApple最新OSの描くニューノーマルだ──WWDC20まとめ登録不要サービス、翻訳、睡眠管理からホームオートメーションまで(1/3 ページ)

» 2020年06月23日 18時00分 公開
[林信行ITmedia]

 Appleから、これからの我々のライフスタイルを変える多くの発表が、毎年恒例の世界開発者会議「WWDC20」の基調講演で行われた。

 今回のWWDCは30年を越える歴史で初めてのオンライン開催、しかも無料ということもあり、これまでの中でも最大の参加者が見込まれている。

 初の日本語字幕付き映像として周到に用意された基調講演では、これからのデジタルライフスタイルやデジタル社会作りを変えそうな新発表がたくさんあった。本稿では技術にあまり詳しくない人でも分かるように、2020年秋以降のAppleの技術が、我々の生活や社会をどう変えるかにスポットライトを当てながら今日の発表内容を紹介したい。

WWDC20 WWDC20では、例年通りiOS、iPad OS、watchOS、tvOSそしてmacOSの最新版が発表された。これらの新OSは、夏にパブリックβ版の提供を開始(watchOSは初)し、その後は秋に正式な提供が始まる

iOS 14:すぐに使えるApp Clipが登場、BMWの鍵にも

 例年通りWWDC20ではiPhone、iPad、Apple Watch、Apple TV、そしてMacという5つのプラットフォーム用の最新OSとその機能が紹介された。それぞれiOS 14、iPadOS 14、watchOS 7、tvOS 14、そしてmacOS Big Surだ。これに加えて、AirPods Proが頭の向きを認識して音の位置を固定する立体音響(5.1ch、7.1chとDolby Atmosに対応)になること、そしてプライバシーに対する取り組みなどが発表された。これらの新OSは2020年の秋から提供が始まる。

 それでは、こういった新OSが出てくると我々の日常風景や生活習慣はどのように変わるのだろうか。

 日常風景を変えそうな新技術として、まず面白いのがApp Clipと呼ばれる技術だ。最近ではショップカード、街中の駐車場や公共移動手段(例えばシェアサイクル)などの多くがアプリに対応している。しかし、1回しか使わないかもしれないもののために、アプリをダウンロードし、ユーザー登録やクレジットカード情報を入力して、それからやっと利用開始というのは、少しもどかしい。

実社会で登録不要、すぐにサービスを提供したい(販売したい)場合に便利なApp Clips。10MB以下の簡易アプリを用いて簡単に利用申請と支払い処理などを行う。後で気に入って何度も使用しそうな場合は完全版アプリのダウンロードを促すが、その一歩手前のとりあえず試したい人向けに最適なソリューションだ

 iOS 14では、印が付いたところにiPhoneを近づけるだけで、Apple Payを使った1回分の利用の支払いなど基本機能だけを、瞬時にダウンロードして利用するApp Clipという10MB以下の簡易版アプリの提供が可能になる。Apple Payを使って支払えば、面倒な個人情報の入力なども簡略化される。

 App Clipの呼び出し方は、サービス次第でNFC(非接触チップ)を使ってタッチしてダウンロードする方法もあれば、QRコードを読み込んで入手という方法もある。Appleでは、App Clip読み出し専用の独自読み取りコードも開発して提供している(それに加えてメッセージなどを使って送ることも可能だ。もちろん、App Storeの審査は必要なので安心して使うことができる)。

 そんなに頻繁には使わないかもしれないサービスは、このApp Clipで済ませておいて、気に入ってよく使うようになったタイミングで、完全版のアプリをダウンロードしてユーザー登録などを行う。Appleはそんな新しいライフスタイルを提案している。

 世界の風景が変わるもう1つの発表は、Car Keyの機能だろう。2020年発表のBMW i5シリーズから提供される、iPhoneを車の鍵の代わりにする機能だ。NFC対応のiPhoneで車のドアにタッチして鍵をアンロックする。この機能の第2段階では、iPhone 11以降で内蔵されたU1チップのUWB(Ultra Wide Band)技術で、ユーザーが運転席に座っているときだけエンジンをかけられるようにする(車を離れている間とか、子供とかがいたずらできないようにする)という機能も搭載される。

 期限を設定したソフトウェア鍵を家族や友人にメッセージで送って車を貸すこともできる。なお、対応のBMW i5ではiPhoneを所定の位置に置くだけで非接触充電も可能なようだ。

NFC対応のiPhoneを使って、車の鍵として使う機能。期限付きの電子鍵をメッセージで家族などに送る機能もある。後日アップデートで、U1チップ搭載iPhoneを持つユーザーが運転席に座っている間だけしか利用できないといった機能を実装予定だ。まずはBMW i5シリーズから対応する

ユーザーインタフェースも改善、Mapも強化

 画面全体を覆い隠さず、操作中の画面の上に重ね合わせ表示されるようになったSiriも大きく進化している。何と言っても大きいのは、専用アプリを使わないでもOSの標準機能で、日本語を含めた11カ国語(英語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、韓国語、アラビア語、ポルトガル語、ロシア語)との相互翻訳が可能になることだろう。

 そんな新しいiOSだが、画面の見た目も大きく変わる。これまで「今日」という画面に集約されていたウィジェット(天気やスポーツのスコアなど、ちょっとした必要情報を表示してくれる機能)を、ホーム画面に組み込むことができるようになるからだ。ウィジェットは、いろいろな種類が選べるだけでなく、ウィジェットごとにどれくらいの大きさで、どれくらい詳しい情報を表示するかを数段階で選べるものもある。このウィジェットの利用で、欲しい情報により素早く、少ない手間でアクセス可能になるだけでなく、ユーザーごとにホーム画面の個性も演出できることになる。

WWDC20 これまでの13年間、アプリ専用だったホーム画面に、ウィジェットを置くことが可能に。iOS 14ではOSの見た目の印象も大きく変わりそうだ

 Appleはホーム画面の役割を大きく見直した。あまり使わないアプリのアイコンばかりのページなどはあえて非表示にし、代わりにApp Libraryという使いたいアプリを簡単に見つけ出して起動する画面が用意される。iPhone内のインテリジェント機能が推測する次に使いそうなアプリや、最近追加したばかりのアプリのフォルダーに加え、自動的に仕分けされたジャンル分けフォルダーでアプリを仕分けしてくれるだけでなく、画面上の検索フィールドにアプリの名前を打ち込んで、簡単に目当てのアプリを見つけることができる。

 Apple Mapは、自転車ルート(階段および坂道を表示)や電気自動車用ルート(自分の車種にあった充電ステーションが多いルートを表示)に対応(米中の5都市から提供開始)したり、有名レストランガイドなどの情報を統合したりする

 iMessageでは、一番重要なやりとりが他の会話に押し流されないようにピン留めしたり、会話一覧のアイコン画面上に新着メッセージを表示したりする機能、グループメッセージで特定の話題に対して返信をする機能や、メンション(相手を指定したメッセージ)だけ通知をする機能、どの会話がどのグループのものかを分かりやすくするアイコン設定なども可能になる。

WWDC20 新たにアプリを起動するためのApp Launcherというページがホーム画面に追加された。Siriがサジェストする次に使いそうなアプリと最近追加したばかりのアプリ、その下にはSiriが自動的にカテゴリー分けしたフォルダーにアプリが並ぶ。アプリ名などで検索して起動することもできる

 細かなことだが、電話がかかってきたときに、着信通知が画面全体を覆ってしまうのを廃止して、作業中の画面を表示したまま、その上に着信通知が表示され、画面の情報をみながら通話ができるように改良される。

 アプリの起動から、iPhone内の各アプリの情報、さらにはWeb検索まで一気通貫で検索できる全方向検索、Universal SearchもiOS 14とiPadOS 14の大きな特徴となる。

 iOSの兄弟分、iPadOS 14ならではの変化としては、Apple Pencilでの描画がより自然と日常操作に溶け込む。メモアプリやリマインダーの画面上にペンで描き始めると、自動的にペン入力に切り替わる。また図形を認識する機能も用意される。例えば直線や多角形を手描きではなく、より正確な図にしたい場合は、iPadがその形状を認識して自動的に清書してくれる(手描きのまま残すことも可能だ)。さらに英語と中国語の手書き文字を認識してテキストに変換してくれる機能も用意される(早く日本語にも対応してほしいところ)。

右上に描かれた台などは、手描きの線を直線に変換して描いている。このようにシェイプ(形)を認識して清書する機能や、手書きした文字をそのままコピー&ペーストしたり認識してタイプされた文字に変換したりする機能も備える

 次はwatchOSやtvOSを見ていこう。

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