「27インチiMac」は2020年にどんな進化を遂げたのか 初の10コアCPUモデルで性能を確かめる本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2020年08月14日 17時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

スペックは同様ながら体験レベルが向上したディスプレイ

 このように他のMacでは既に導入されていたT2チップを用いた改善が盛り込まれて「最新Mac」の世代となり、さらに最新のCPUとGPUで高性能化された27インチiMacだが、ユーザー体験の面で最も大幅に改善しているのがディスプレイだ。

 スペック上はあまり変化していない。解像度も同じ5K(5120×2880ピクセル)だから、取り立てて大きく品質が変化したわけではなく、基本的には同じパネルといって差し支えない。

 とはいうものの、5KのIPS液晶パネルに最大500nitsの最大輝度。Display-P3対応の色再現範囲、よく調整された色再現特性、保護ガラスまで接着されたフルラミネーション構造といったスペックを持つディスプレイは、そうそう見つからない。

 そして今回から、iPhoneやiPad Pro、MacBook Proなどではおなじみの「True Tone」が採用された。周囲の色温度に合わせ、自動的に表示の色温度を調整する機能だ。

 暗部階調や表示できる輝度の幅、色階調の過渡特性など画質面での基本は押さえているiMacのディスプレイだが、環境に合わせた色温度調整がTrue Toneの搭載で自動的に行われるようになり、ユーザーは意識せずにその部屋の照明環境に合った映像を楽しめる。

iMac ディスプレイの基本スペックは変わらないが、環境光にディスプレイの色温度を自動で合わせるよう調整する「True Tone」が追加された

 Apple TV+やNetflixの映像を早速楽しんでみたが、画質面で大きく調整する必要性は感じなかった。少なくともディスプレイ一体型パソコンというカテゴリーでいえば、これ以上に映像を楽しめる製品はないと思う。

 ディスプレイに関するもう一つのアップデートが、オプション設定の「Nano-textureガラス」。Nano-textureは、いわばナノレベルの細かなすりガラスで、マット型表面処理の一種だ。前述したようにiMacは保護ガラスをフルラミネーションで液晶パネルと接着し、間に空気層がないクリアな表示が魅力の一つになっているが、そのよさを損わずにマット系のしっとりした見え味が実現できる。

 iMacで標準ガラスといわれているものは、反射を軽減するマルチコートが施されたもので、これ自身も光沢系仕上げの中では比較的よい高性能の反射低減処理だ。しかしNano-textureではガラス表面をエッチング処理で極めて細かな凹凸とし、5Kディスプレイの精細感を損わずに外光を散乱させ、映り込みを低減する。

Nano-texture 入ってきた光を散乱させて画面への映り込みを抑制するNano-textureガラス

 厳密にいうならば、光沢処理に比べると先鋭度はやや落ちる。しかし、そのレベルが極めて微細な領域であるため、マット処理のシルキーな感触と5Kの解像感の両立が行えているという印象だ。誤解を恐れずにいうならば、映画用スクリーンの銀幕のような風合いだ。

 マット系の処理では気になるコントラストの低下も、よほど近づいて見ない限りはほとんど気にならない。オプション価格は5万円(税別、以下同)と安くないが、映り込みが気になっているならば、投資する価値のある技術だ。この技術が初めて採用されたのは外付け32型ディスプレイの「Pro Display XDR」だが、サイズが違うとはいえオプション価格は7万円だった。

 個人的に購入するとしたら、このオプションは必ず選択すると思う。それほど納得感のある表示だ。

ユーザー体験を高める開発成果の集合体

 このようにAppleが過去数年、少しずつ重ねてきた開発成果を一気に投入してリファインしたのが新しい27インチiMacといえる。もちろん、CPUとGPUの更新による性能の向上はあるが、それはその時々のタイミングに合わせ、Intelから調達できるCPU、AMDから調達できるGPUを組み合わせているにすぎない。

 Intelのシステムアーキテクチャを、「Apple Silicon」(T2もその一つといえる)でラッピングするように配下に置いて、その元でコンピュータを再構築することで独自性を出すという手法は、AppleがiPhoneという巨大市場を持っているからこそできる戦略だ。

 ただし、技術は同じでもハードウェアが異なれば結果は違う。例えば同様の音声補正技術があっても、実際のスピーカー配置や性能が異なるiPhone、iPad Pro、16インチMacBook Pro、MacBook Airでは当然、音質は異なる。マイクの音質も同じだ。

 1080p FaceTime HDカメラはセンサー自身の品質が上がったことで、T2チップ内蔵のISPと組み合わせて大幅にその画質が高まっていた。これは内蔵マイクも同じで、従来は1カ所だったものが3カ所に分散してマイクが設置されたことで品質が上がっている。

 内蔵マイクで音楽を録音するわけではないだろうが、FaceTimeカメラの改良とともにオンライン会議などの質を高めることはできるだろう。内蔵スピーカーとの差分も取っているようで、スピーカーからの音を出したままオンライン会議に入っても、スピーカー音がマイク音声に回り込むなどのトラブルはなかった。

 唯一残念なことは、内蔵スピーカーの音質が(確かに大幅に品質は上がっているが)16インチMacBook Proなどからの期待ほどには向上していなかったことだろうか。恐らくは旧来からのスピーカーシステムに、T2チップによる音響補正技術やバーチャルサラウンドを組み合わせたのだろう。

 バーチャルサラウンドの広がりなどは向上し、音域バランスも改善しているが、中域の厚みが不足しているため、せりふに厚みがない。音楽再生でも中高域の癖っぽさが歪感、S/N感に影響を与えている。筆者なら外付けのアクティブスピーカーなどを付け足したくなるだろう。

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