「27インチiMac」は2020年にどんな進化を遂げたのか 初の10コアCPUモデルで性能を確かめる本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2020年08月14日 17時30分 公開
[本田雅一ITmedia]
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10コアCore i9+Radeon Pro 5700 XTに対して十分な冷却性能

 一方、パソコンとしての基本性能部分は2012年以来、ずっと変わらないこともあって十分にこなれている。

 新型27インチiMacでは、CPUにIntelの第10世代Core(開発コード名:Comet Lake)を採用し、新たに10コアを選べるようにした。今回パフォーマンステストをしたのは、その10コアCore i9となる。Intelの製品情報(Intel ARK)によると、Core i9-10910の仕様がこれと合致し、iMacの熱設計に合わせてカスタムされたSKUのようだ。GPUもRDNAアーキテクチャのRadeon Pro 5000シリーズを採用し、テスト機は最上位のRadeon Pro 5700 XT搭載モデルとなる。

 主なスペックは以下の通りだ。

  • CPU:Intel第10世代Core i9(10コア、3.6GHz、最大5.0GHz)
  • メモリ:32GB(2666MHz DDR4)
  • GPU:AMD Radeon Pro 5700 XT(16GB GDDR6メモリ)
  • ストレージ:1TB SSD

 CPUモニターアプリのIntel Power GadgetによるとCPUのTDP(熱設計電力)は125Wだが、高負荷時にはパッケージ全体の消費電力が160Wを超えることもあった。最もCPUへの負荷が高いと思われるベンチマークテストのCinebench R20での動作状況はグラフの通り。ここまで高い負荷はゲームでもかかることはないが、そうした環境でもコンスタントに4GHz以上の最高クロックが出ており、多くの場合は4.5GHz程度までは速度が出ている。

 CPU温度は100度を上限にクロックの調整が入るが、3.6GHzのベースクロックに対して4GHz以上がコンスタントに、おおむね4.5GHzという数字がCinebenchが出ているのであれば、動画編集や写真現像などのシーンでは、Turbo Boostの上限クロックあたりをしっかり使えそうだ。

Intel Power Gadget Cinebench R20 CPUモニターアプリのIntel Power Gadgetで見たCinebench R20実行中の様子

 試しに画像編集アプリ「Luminar 4」を用いて、ミラーレス一眼カメラ「EOS R」で撮影した3300万画素RAWファイルの現像処理を行ったグラフも取ってみたが、クロックは4.8GHzまで各現像処理のピークで出せている。Cinebench中は冷却ファンが回る音がやや気になるものの、Luminar 4程度の処理ではそこまでは回らず、BGMでも流していれば気付かない程度だった。

Intel Power Gadget Luminar 4 Intel Power Gadgetで見たLuminar 4によるRAW現像中の様子

 TGPで130WとなるGPUのRadeon Pro 5700 XT(16GB GDDR6メモリ)がフルに動いているときも同じだ。恐らくCPUとは別系統の冷却回路になっていると考えられるが、どちらかの負荷に引っ張られることなく、それぞれにきちんと性能が出せている。

 Macでゲームを遊ぶという方は多くないと思うが、「Fortnite」をプレイ中のグラフを参考までに添付しておく。テストは26度の室温に設定した部屋で行ったが、冬場ならばもっと楽に動作するだろう。

Intel Power Gadget Fortnite Intel Power Gadgetで見たFortniteプレイ中の様子

 なお、定番ベンチマークテストのGeekbench 5は、CPUのシングルスレッドが1242、マルチコアが9764、GPUの演算能力スコアはMetal時に57448だった。GPUのスコアは揺れがあり、時折、59000を超える場合もある。CPU依存のCinebench R20も約5600と、なかなか優れた数字を出している。

Geekbench 5 Geekbench 5のCPUスコア
Geekbench 5 Geekbench 5のMetalスコア
Cinebench R20 Cinebench R20のCPUスコア

 ゲーミングPCとしてはGPU性能が物足りないが、動画編集、RAW現像、音楽制作などが主目的だろうことを考えれば十分な性能という印象だ。

選択肢の幅は広く、買い得感ある構成

 この他、メモリは最大128GBまで搭載(従来の2倍)可能になった。背面のSDXCカードスロットもUHS-IからUHS-IIへと速度が向上し、転送速度の上限は3倍となるなどの細かなアップデートも行われている。

 27インチiMacはSO-DIMMのメモリのアップグレードが可能で、ユーザーがアクセスできるSO-DIMMスロットが4つある。8GBをオーダー(4GBのモジュールが2枚付属する)して、自分でアップグレードするとコストパフォーマンスがよいだろう。

 この製品はT2チップによる体験レベルの磨き込みと、True Tone対応かつ広色域な5Kディスプレイなどの価値が大きい。低価格のコンフィギュレーションでも、こうしたディスプレイの恩恵は受けられるため、リーズナブルな選択肢ほどお買い得感がある。

 実際、GPU性能にあまり多くを求めないのであれば(といってもGDDR6メモリが4GBのRadeon Pro 5300でも4.2TFLOPSの能力はある。各GPUのスペックはAMDの製品情報ページにまとめられている)、3.1GHz(Turbo Boost使用時最大で4.5GHz)の6コア第10世代Core i5を搭載したベースモデルは19万4800円と20万円を切る。

 ベースモデルはSSDが256GBだが、ミドルレンジモデル(Appleの用意する標準モデルは多くの場合、ミドルレンジの設定が最もお買い得だ)は512GBのSSDを搭載し、CPUが3.3GHz(Turbo Boost使用時最大で4.8GHz)の6コアCore i5になって21万6800円だ。同等レベルのディスプレイを入手するには15万円ほどの予算が必要なことを考えれば、実はかなりお買い得ではないだろうか。

 今後、Apple Silicon搭載Macへとバトンタッチしていくことを考えれば、仮想環境で現状のWindowsが動作する最後のiMacにもなるだろう。Linux系(もちろんmacOSも)も含めて複数OSでの開発、テストなどが必要なユーザーにとっても貴重なアップデートになっている。

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