発表前にはディスプレイが大きくなるのではないか、といった予測もあった2020年の「13インチMacBook Pro」だが、蓋を開けてみると「キーボードをシザー構造のMagic Keyboardに換装した新モデル」という他に表現できない製品だった。
これは決してネガティブな意味ではない。前回のコラム(下位モデルのレビュー)でも述べたように、13インチMacBook Proそのものがノート型のパソコンとしてはユニークな製品だからだ。
最大輝度が500nitsまで出るHDRコンテンツの表示をサポートする高精細液晶パネルを搭載し、P3に準じる高い濃度の色を表現できるだけでユニークだが、性能の面でも上手に作り込まれていることが分かった。
Intelの第10世代Coreプロセッサには、新しい10nmプロセスで製造されるIce Lake(開発コード名)と、従来の14nmプロセスで製造されるComet Lake(開発コード名)がある(参考記事)。
Ice Lakeは昨年に発表されていたものの、TDP(熱設計電力)が28Wのプロセッサを実際に調達して採用したのは今回の13インチMacBook Pro上位モデルが初めてだ。先に発売された新しい「MacBook Air」もIce Lakeを採用するが、こちらはTDPが9〜10Wのプロセッサとなる。それ以外でIce Lakeを採用したノート型では、TDPが15Wのプロセッサを採用する例が多い。当然、TDPが高ければパフォーマンスも上がるが、発熱面では不利になる。
Ice Lakeは発熱の問題などがささやかれていたが、TDP 28Wプロセッサの採用が少なかった理由は分からない。恐らく同じ第10世代CoreでもComet Lakeを採用した上で、GPUを外付けにした方がパフォーマンスが引き出せるという判断もあったのだろう。実際、そうした製品はWindows採用機には多くみられる。
一方でIce Lakeには命令スループットを向上させた新しいコアが採用されており、機械学習処理に特化した機能を持つ。パフォーマンス、バッテリー消費、メカ設計の共通性などトータルで評価した場合、GPUは内蔵で設計した方がベターという判断がAppleにはあったのではないか。
Ice Lake搭載の13インチMacBook Pro上位モデルでベンチマークテストを行った結果、そこにはAppleがIntelと協業しながらパフォーマンスを引き出そうとした努力の跡がうかがえた。
今回テストした13インチMacBook ProとMacBook Airは以下の通りだ。
搭載プロセッサは全てCore i5だが、それぞれに搭載しているIntel Coreの世代や消費電力は異なる。「MacBook Air」と今回テストした13インチMacBook Pro上位モデルはIce Lakeだが、それ以外は第8世代のCoffee Lake(開発コード名)である。
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