健康の未来を先取りしたApple Watch、タブレットの水準を引き上げたiPadGood、Better、Bestで読み解く新ラインアップ(2/6 ページ)

» 2020年09月17日 00時00分 公開
[林信行ITmedia]

新ラインアップをGood、Better、Bestで読み解く

Apple Watch 4製品5モデルになったiPadシリーズだが、一番下のiPadとiPad miniを画面違いのモデルと考えれば、右からGood、Better、Bestの3分類で捉えられる

 10年目を迎えるiPadは標準のiPad、iPad mini、iPad Air、iPad Proとモデルがたくさんあり、どのモデル選んだらいいのか悩ましい。また、これまでシンプルだったApple Watchにも、今回、新たにApple Watch SEという別ラインが加わり、製品ラインアップが複雑化しているように見える。

 だが、実はAppleの製品ラインアップは、一見複雑に見えてもシンプルな法則で整理されている。

 1997年にオンライン版のApple Storeがオープンしてから、ユーザーに提供する製品はGood、Better、Bestの3つのグレードで整理されているのだ。

 一番下のモデルが「安い価格」を優先した廉価版ではなく、一番手頃な製品でも、その製品の体験が高いレベルで味わえる「Good(良)」に設定しているところが同社らしいところだ。

 これに対して、最新のトレンドも捉えたさらに良い体験を提供するのが「Better」モデル。

 一方で、「Best」は、すぐには役に立たないかもしれないけれど、未来を先取りした技術も取り入れた意欲的なモデルという位置づけになる。

 例えばiPhone 11 ProではUltra Wide Band(UWB)という物の位置を正確に計れる技術などが搭載されている。これをiPadに当てはめると、新発表の第8世代iPad(と2019年に発表されたiPad mini)が、Appleが考える現時点でのiPad体験のベースラインを作っている「Good」な製品になる。

 気が付けば、これら2つのベースラインのモデルでもiPadの全てのアプリが使え、プロセッサは最新の機械学習アプリも快適に動かすA12 Bionicチップだ。新たに登場した第8世代iPadでは、これによりもっとも売れているWindowsのノートPCと比べて2倍、最も売れているAndroidタブレットと比べて3倍、そして最も売れているChromebookと比べると6倍もの性能を発揮する。

 同製品もiPad miniも必要十分な800万画素のカメラを内蔵し、Apple Pencilも使え、セルラーモデルは便利なeSIMにも対応済みだ。それでいて最新iPadは税別3万4800円からという価格を実現している。

 一方、Betterに当たる今回発表のiPad Air(第4世代)では、最新のiPad Proよりも新しいA14 Bionicチップを搭載した。iPad Pro用と思われていたMagic Keyboardや第2世代のApple Pencilにも対応し、1200万画素カメラ、USB-Cコネクター、Liquid Retina Display、Wi-Fi 6対応と兄貴分であるはずのiPad Pro自慢の機能を遠慮なく搭載している。

 さらに、マスクを着けた状態でもログインが簡単な指紋認証技術、Touch IDの第2世代の技術をホームボタンよりはるかに小さい電源ボタンに内蔵してしまった。それでいて価格は12.9インチiPad Proの約6割となる税別6万2800円からだ。これが最も売れるモデルと踏んでいるのか、5色のカラーバリエーションも用意している。

 そんな弟分が出てきたことで、逆に際立ったのが、今のAppleが考えるBestの機能で、持つ向きにかかわらず最良の音響が楽しめる4つのスピーカーでの音響体験や未来への可能性を秘めたLiDARスキャナー、超広角と広角の2つのカメラレンズ、それを使ったポートレート撮影などは(iPhoneではBetterモデルにも搭載されているが)iPadではBestといえる機能なようだ。

Apple Watch Apple Watch series 6での血中酸素濃度計測時のアニメーション。15秒で計測できる

 では、Apple WatchのGood、Better、Bestはどうなのだろうか。

 Bestは血中酸素濃度も計れる注目のApple Watch series 6、そしてBetterは今回新たに加わった手頃なApple Watch SEで、Goodのモデルは1万9800円で引き続き提供される3世代前のモデル、Apple Watch series 3となる。

 Apple Watch series 3はセルラーモデルがなく、画面サイズも最新モデルと比べて30%小さいが、高心拍や低心拍になった時にそれを知らせてくれる機能や、事故などにあったときに助けを呼び出せる緊急SOS機能、泳ぎながらも使える耐水性能といったApple Watchの基本機能は一通り押さえている。

 BetterモデルのApple Watch SEは、series 3よりも画面が30%大きくなり緊急通報が国内だけでなく海外の一部の国でも使えるようになるだけでなく、転んで意識を失った時に自動で助けを呼ぶ転倒検出、後述するファミリー共有、コンパス、そして今いる場所のGPS位置情報だけでなく高度も分かる常時計測の高度計が用意されつつも、Wi-Fiモデルで2万9800円から(セルラーモデルは3万4800円から)という手頃な価格を実現している。

 一方でBestに当たるのが、発表会の最大の目玉ともいえるApple Watch series 6だ(4万2800円〜)。こちらはSEの全ての機能に加え、Retinaディスプレイも常時表示のものになっており、海外で提供されている電気心電図をとるのに必要な電気心拍センサーを内蔵。発表会では一切触れられなかったが、iPhone 11 Pro以来初となるUltra Wide Band技術に対応したU1チップも搭載されている。

 他の2モデルのケースに使われているアルミニウム以外にも、ステンレスやチタニウムといった高級素材のケースが選べたり、同じアルミニウムケースでもブルーやPRODUCT(RED)といった特別色のケースがあったり、Nikeやエルメスとのコラボモデルを選ぶこともできる。

 まさにApple Watchの魅力の全てを楽しめるseries 6だが、その下に新たにSEが加わったことで、これからユーザー比率がどう変わるかは興味深いところだ。

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