コロナ禍はデジタル終活にどう作用するのか――「第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム」レポート:デジタル遺品、もうキてる? まだキていない?(1/2 ページ)

» 2020年12月17日 10時30分 公開
[ITmedia]

 新型コロナの影響により無期限延期となっていた「第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム」が、11月14日と21日の2回に分けてオンラインの形式で開催された。

 デジタル遺品に関連するサービスを提供する最前線の企業が集ったシンポジウムでは、この時勢で急速に需要が増したオンライン化とデジタル化によって、デジタル遺品問題がどうなっていくのかに多くの時間が割かれた。

第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム Zoomを使って開催された「第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム」

ローカルでもクラウドでもつきまとう消失リスク

 初日のDay1は、登壇者の個別セッションが中心だ。デジタル遺品を重点的に調査しているライター/ジャーナリストの古田雄介氏がモデレーター役を務め、イントロダクションとしてデジタル遺品の現状と課題について解説した。

 古田氏は「ここ数年でデジタルの金融資産が急速に普及し、デジタル遺品への関心は徐々に高まっている。それに伴い、深刻化するパターンもいくつか見えてきた」という。

 「故人のスマートフォンやPCのロックが開けずに遺族が途方に暮れるパターンに加え、故人がデータを保存しているクラウドサービスを、遺族が気づかないまま解約してデータを消失するケースも増えてきました。ローカルとクラウド、両面の対策が必要になってきています」と述べた。

第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム 古田氏のセッション

 続いて、日本デジタル終活協会の伊勢田篤史弁護士が法律から考えるデジタル終活を解説した。

 伊勢田氏は「デジタル遺品を規定する法律はまだ存在しないため、既存の法律で解釈することになる。例えば写真や文書ファイルなどのデジタルデータは『有体物』ではないので、民法上『物(有体物)』に対する権利とされている所有権は成立しない。しかし、デジタルデータが保存されているPCやスマホなどに対する所有権を通して、デジタルデータ自体を処理することは可能だ」とし、「一方、SNSアカウントなどのオンラインデータは一身専属性の有無によって相続での対応が変わるため、利用規約等を確認する必要がある」という。

 それらを踏まえて「端的にいえば、必要なデータを残すことがキーになります。オフラインとオンラインで優先順位をつけて対応する意識が大切だと思います」とポイントを指摘した。

第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム 日本デジタル終活協会 伊勢田氏のセッション

ロック解除の難易度は年々上昇、備えるには生前準備が重要

 2017年9月から、デジタル遺品サポートを実施しているデジタルデータソリューション(以下、DDS)からは上谷宗久取締役COOが登壇し、同社に届いたデジタル遺品関連の相談から見える実態を明らかにした。

 2020年5月末までに届いた相談件数は1300件超に上るが、うち7割以上がパスワード解析に関するものだという。相談から実際の依頼につながるのは300件程度で、やはりパスワード解析が6割と多勢を占める。

 パスワード解析の対象機器は、ほとんどがスマホや携帯電話だ。スマホなどのロック解除はまだ非常にニッチな領域のため、費用は23万円〜とそれなりにかかり、解析までに半年や1年かかることもある。「解析の難易度は年々高まってきています」とのことで、長年この課題に取り組んでいる同社であっても、ロックが解除できなかったケースが少なからずあると実情を語った。

 また「この問題は亡くなった方だけではなく、認知症の方にもおよびます。年々対象者が増加していることを考えると、今後大きな社会課題になると思います」と、デジタル遺品の問題を別の角度から明らかにした。

第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム デジタルデータソリューション 上谷氏のセッション

 “困難なデジタル遺品”が発生すると、遺族は多大なコストやリスクに直面することになる。そうなる前に日頃から備えて、それサポートをしようという切り口のサービスも増えている。

 次に登壇したDigtusは、2019年からデジタル終活サービス「Secbo(セキュボ)」を提供している。サービス名はセキュリティボックスの略称から作ったそうで、クラウド上に安全な“箱”を作り、そこにパスワードなどの重要データを保管するサービスだ。

 高橋友憲CMSO(Chief Marketing & Strategy Officer)は、「元気なうちは秘匿性を守って、もしものときは伝えるべき人に確実に伝えたい。そのためにはセキュアな環境と、いざというときにアクションする『デジタル後見人』が必要になります。その仕組みをトータルで提供できるサービスを目指しました」と伝える。

第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム Digtus 高橋氏のセッション

 最後に登壇したMONETの前野泰章代表は、2020年1月に発表したWindows 10対応のアプリケーション「終活支援データサービス まも〜れe」の開発背景から説明した。

 2016年に自身の大病が発覚し、生還できない可能性がある手術までの6週間は貴重な時間だったとし、「そのとき、重要なデータを大切な人に渡すこと、見せたくないデータを消滅すること、その後にスムーズに相続されることを考えました。それがまもーれeの原型になっています」という。

 まも〜れeはWindows上で設定やデータの保存が完結するため、オフラインでの備えにもなる。デジタルとひとまとめに言っても、備える場所は一様ではない。多くの選択肢の中から選べる方がいいだろう。

第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム MONET 前野氏のセッション

 続いて、パネルディスカッションがメインとなったDay2の模様をお届けする。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年11月07日 更新
  1. メーカー自身がバックドアを仕込み、犯罪集団に“販売” 乗っ取られたTV用端末130万台超、Googleが遮断 日本の警察庁も参加 (2026年11月05日)
  2. Windows PC向けゲームの「ロード待ち」はなぜ起こる? 背景に過去との「互換性」 (2026年11月05日)
  3. 画面は見やすく広告なし! 睡眠モニター機能はどう? Amazonの新型スマートクロック「Echo Time」の使い勝手と気になる点 (2026年11月06日)
  4. 耳をふさがないEDIFIER「Comfo Bass Pro」は朝から夜まで充電不要 1万円強でLDACとDolby Audio対応、在宅勤務の“つけっぱなし”にピッタリ (2026年11月06日)
  5. ミュンヘン市はなぜ再びオープンソースソフトウェアへ回帰するのか? 脱Microsoftを巡る欧州の最新事情 (2026年11月04日)
  6. 手書き文書の文字起こし+会話録音も可能なスマートノート Makuakeで先行販売を開始 (2026年11月05日)
  7. 月1200ドルのAIコストが電気代20ドルで済む? NVIDIA「RTX Spark」搭載PCのデモで見えた“ローカルAI”の実力 (2026年11月04日)
  8. 価格は約9万円に上昇、それでも“買い”か? DJIの360度カメラ「Osmo 360 II」を初代と比べて分かったこと (2026年11月05日)
  9. エイサー、フルHD×2面表示が可能な折りたたみ式15.6型/23.8型デュアルモバイルディスプレイ (2026年11月05日)
  10. アイネックス、デスクトップPCの電源操作を手元で行える有線リモコン (2026年11月05日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー