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» 2020年12月25日 12時00分 公開

Windowsフロントライン:「MicrosoftがArmベースの独自プロセッサを開発」報道を考える (1/2)

Armベースの独自プロセッサを開発していると話題になった米Microsoftだが、実は以前から取り組んでいる流れの一環でもある。ここでは、この辺りの周辺情報を整理した。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 米Microsoftが、Armベースの独自プロセッサを開発していることが話題になっているが、今回はこの周辺情報について整理してみたい。

 これは、米Bloombergが12月18日に「Microsoft Designing Its Own Chips for Servers, Surface PCs」のタイトルで報じたもので、関係者の話によれば、同プロジェクトを率いているのは同社Azureビジネスを率いるジェイソン・ザンダー(Jason Zander)氏であり、同社データセンター内での利用を想定しているという。

 Microsoftの直近のArm製品としては、米Qualcommと共同開発したSoCを備えた「Surface Pro X」が知られているが、今回のものはユーザーに直接販売する製品ではなく、サーバ用途に限定するという点で従来製品とは異なっている。

実は4年越しで続いているMicrosoftのArmサーバプロジェクト

 まず注意点としては、「MicrosoftのArmサーバ」というものが決して新しいプロジェクトではないことが挙げられる。例えば2017年3月に本連載において「Project Olympus」の存在を紹介したが、これはデータセンターにおけるラックサーバの設計やデザインを共通化しようという試みだ。

Arm サーバ 「Project Olympus」の1Uサーバデザイン

 以前までのように、サーバ群が個々の企業の持つデータセンターやサーバルームで運用される時代とは異なり、Amazon、Google、Microsoftといったパブリッククラウドにおいて巨大インフラを構築する企業に比重が移っており、「データセンター向け製品の最大顧客がこれら企業であると同時に、他ならぬ顧客自身がデータセンターの運用について一番分かっている」という状況が生まれつつある。

 つまり、ベンダー側の言い分でデータセンターを構築するのではなく、顧客自身がデータセンターを設計して必要な要素を買い集め、必要に応じて自ら開発することが可能になりつつある。前述の記事では、2017年3月に開催された「OCP(Open Compute Project) Summit 2017」において、Armプロセッサ版Windows Serverの開発と、実際にそれを用いたシステム運用を進めていくという計画の存在を報じている。

 この時点での計画は、内部利用を前提としたArmサーバの開発であり、このサーバ上で一般的なアプリケーションのインスタンスを動かすというよりは、検索インデクサーなどの特定用途での試験利用の意味合いが強かった。やはり、このタイミングでもBloombergが「MicrosoftのArmサーバ」について報じているが、コメントしているのは前述のザンダー氏で、その内容も「まだ製品化には至っておらず、あくまで次の論理的なステップにすぎない」となっている。

 このとき、Project OlympusとともにArmサーバプロジェクトにおけるSoCの主役はQualcommの「Centriq 2400」だったと思われる。MicrosoftはOCP Summit 2017のタイミングでQualcommとCaviumとの提携を発表しており、CaviumのArmプロセッサを採用したサーバとCentriq 2400ベースのサーバの両方をデモンストレーションしている。

 ただ、一連のプロジェクトそのものは順風満帆ではなかったようで、Centriq 2400については同年11月に正式ローンチされているが、翌年2018年春にはCentriqのプロジェクトは終了し、開発チームも解散している。理由はいくつか考えられるが、主要顧客になるとみられていたMicrosoftがCentriq採用から手を引いたと考えるのが妥当だと筆者は判断している。

Arm サーバ Centriq 2400のSoCを手にアピールする米Qualcomm取締役会長(当時)のポール・ジェイコブス氏

 興味深いのは、2017年3月当時の記事で「AMDは2020年までにARMアーキテクチャによるサーバ市場のシェアが20%に達すると予測しており」という記述があり、少なくともサーバ市場の覇者であるIntel以外は近い将来「non x86」の市場がそれなりの規模に成長すると見ていた点だ。

 だが実際に2020年も年の瀬となって、異世界ではない現実世界でこれは現実のものとなっていない。調査会社IDCが2020年12月に発表した同年第3四半期(7〜9月期)のサーバ市場報告によれば、市場全体で2.2%の成長が見られた一方で、AMDのプロセッサ売上は112.4%成長し、Armベースのサーバについても年率で430.5%の成長を達成したとしている。

 とはいえ、裏を返せばArmサーバの市場そのものがまだ微々たるもので、成長性こそ高いもののシェア全体でみればそれほどでもないことを意味している。

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