「MicrosoftがArmベースの独自プロセッサを開発」報道を考えるWindowsフロントライン(2/2 ページ)

» 2020年12月25日 12時00分 公開
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オリジナルArmサーバへの道

 「Armをデータセンターで活用」という文脈でいえば、AWSの「Graviton」が知られている。オリジナルのArmをベースにした「Graviton」プロセッサを用いたEC2のインスタンスの提供は2018年11月に開始され、翌2019年12月のre:Inventでは独自開発の後継プロセッサ「Graviton2」が発表され、2020年からインスタンスの提供が開始されている。

 Graviton2で注目すべきなのは、“安価な省電力プロセッサ”のような位置付けではなく、非常に高性能なインスタンスの提供を目的としていることが挙げられる。一例がAWS Blogで紹介されているが、汎用(はんよう)インスタンスとしてはIntel Xeonプロセッサを利用するM5ベースのものと比較して、NginxでのHTTPSロードバランシングで24%、Memcachedで43%、X.264エンコードで26%の性能向上が見込めるという。つまり、性能向上を目的にArmインスタンスが選択されるケースが既に出てきているということだ。

 ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏は、米Microsoftのコーポレートコミュニケーション担当チーフのフランク・ショウ氏の回答として「半導体はテクノロジーの基本的なビルディングブロックであり、我々はデザイン、製造、ツールといったエリアで自身の可能性に対して継続的な投資を行っている。同時に、さまざまなチップベンダーとのパートナーシップも強化していく」というコメントを紹介している。

 また、2020年夏に掲示されたMicrosoftがソフトウェアエンジニアを募集する但し書きの中で、次のような説明が行われていることも紹介している。

Azure Compute is responsible for building the next generation(s) of highly scalable Datacenters that provide containers, virtual machines and bare metal services. Given the growth of our datacenters we are always investigating in new hardware and software solutions to meet our scale and customer demand. The Azure New Technology (ANT) team is looking ahead at future Cloud technologies, both hardware and software, and we are investigating and enabling those for our datacenter use. A good example of what we do is the development and deployment of ARM 64-bit Servers in our datacenters. This is a multi-year effort that consists of deep partnership engagements with multiple silicon companies, including collaborating on future hardware designs and software enablement. We are a very hands-on team with deep technical expertise in silicon, systems, operating systems (Windows and Linux) and application stacks.

 パートナーの1社であったQualcommのCentriqプロジェクトが頓挫したように、必ずしも同社のAzure部門では単一のパートナーや単一の製品にコミットはしていない。一方で、「multi-year effort」というフレーズにあるように、長年にわたってAzure上で最適な“シリコン(半導体)”を模索する旅は続いており、今回のBloombergの報道も「AWS Graviton」のように、その選択肢の1つとして「自社設計のプロセッサを用意する可能性もある」という位置付けなのだろう。

 Microsoft自身、そうした設計を自身で行う、あるいはSurface Pro Xで採用された「SQ1」「SQ2」のように、Qualcommと共同でカスタムプロセッサの開発を進めることも可能だ。その上で、「Azure上で動かす最適なArmインスタンス向けのSoCは何か」「あるいはArmをサーバの機能の一部としてどのような形で取り込むか」といった検討が引き続き続いているものと考えられる。

 単純に「Intelの市場が奪われる」という話題に向かいがちな本件だが、その実はもう少し複雑で、よりユーザーのニーズに最適化するようにサーバ側の環境が整えられつつある兆候なのかもしれない。

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