あるアプリでの、あなたの行動履歴を、他のアプリの行動履歴と照合して特定しようとするトラッカーと呼ばれる仕組みがある。ある調査によれば、こういったトラッカーなどを採用するアプリは、平均で1アプリにつき6つくらいを仕込んでいることが多いという。
Appleは、このようなアプリ間連携を使った行動監視にも制限をかけるべく、まもなく開発者向けバージョンが登場する、春に提供予定のiOS 14、iPadOS 14、tvOS 14のアップデートで、App Tracking Transparency機能(略称:ATT、アプリトラッキング透明化機能)を搭載する。
あるアプリが、あなたの行動履歴データを他のアプリと連携して集めようとする際に、その旨を通知し、ユーザーに許可を求める機能だ。他のアプリとの連携をまとめてオフにする以外に、どのアプリと連携しようとしているかを一覧表示で確認して、特定のアプリとの連携は許すが、特定のアプリとの連携は許さない、といった細かな設定もできるようになる。
これは元々、2020年夏のWWDC(世界開発者会議)で発表され、年内にも搭載される予定だったが、開発者から「もう少しだけ待って欲しい」という要望が多かったため、少しだけ先延ばしをして搭載されることになった。
その際、国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルからオープンレターで、「機能搭載の遅れに失望した」としつつも、搭載する機能が人権を守る上でいかに素晴らしいかを賞賛されたいわく付きの機能でもある。
アプリ連携によるユーザートラッキングを禁止するというルールは、Apple製アプリも含め例外なく適応される予定だが、さらにはアプリ開発に使われるSDK(ソフトウェア開発キット)なども、この仕様を満たすことが要求されている。
もちろん、Appleはアプリ提供会社などが広告展開をすることや、広告の効果測定をしようとすることをまるまる否定しているわけではない。アプリ開発者が、ちゃんとAppleが定めたデータプライバシー保護基準に基づいて効果測定ができるようにSKAdNetworkという独自の広告効果測定の仕組みを用意しており、開発者にはこれに準拠した効果測定ツールなどを使うように勧める方針だ。
街中に仕掛けられた監視カメラやセキュリティーアラームは、見ればすぐにあなたを監視していると分かるが、アプリやWebサイトによる監視は、影も音もなく、黙って行われ、あなたが望まない形で活用される可能性もある。
そんなデジタルライススタイルに潜む危険について気づかせ、詳細を教えてくれる電子冊子「A Day in the Life of Your Data」、ぜひ、日本語版も出版し、未来のIT社会を作る学生たちが読む教材としても活用されるようになることを期待したい。
冊子には、Appleがよくユーザーから受ける質問とその答えなども書かれている。その筆頭が「トラッキングを拒否した場合でもアプリの機能は全て使えるのでしょうか?」という問いだが、Appleはそれに対して「Yes」と答えており「アプリの開発者は、全機能の提供と引き換えにトラッキングを要求することはできない」と明記されている。
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