コラム
» 2019年11月07日 06時00分 公開

Appleのプライバシー情報ページが一新:Appleは何故、ここまで声高に「プライバシー」保護を叫ぶのか? (1/4)

日ごろからプライバシーに関する取り組みをアピールしているAppleが、Webページのプライバシーコーナーを一新した。その意図に隠されたものは何なのだろうか。林信行氏が読み解く。

[林信行,ITmedia]

 Appleの公式Webサイトにある「プライバシー」のコーナーが全面リニューアルされ、新たに同社の「プライバシー」保護の取り組みを位置情報やWebブラウザ、サインインなど項目ごとに分けて紹介したホワイトペーパーも公開された。

Apple Privacy Appleが考えるプライバシー

 同社は2019年1月、自身は参加していない家電見本市「CES 2019」の会場に向けてプライバシー保護を訴えた大型広告を掲載したり、iPhoneを始めとする同社製品でのプライバシー保護の姿勢を前面に打ち出した広告を展開するなど、「プライバシー」保護に関しては人一倍大きな声を上げているが、どうして今、プライバシーがこれほど重要なのか。

 そして、同社の取り組みとはどのようなものなのか。

Apple Privacy CES 2019での大型広告

今、なぜプライバシー保護が、世界的にここまで大きな話題なのか?

 政府に批判的な声を上げると、すぐにそれを察知されて逮捕・投獄される。交通違反をすると監視カメラで撮影された顔がインターネットにさらされる。

 私たちは、こうした自由もプライバシーも制約された国のニュースを見ては「そんな国に生まれなくてよかった」と、プライバシーの侵害はあたかも自分とは無関係とばかりに笑い飛ばす。だが、果たして本当にそうなのだろうか。

 全てのプライバシー侵害者が、ここまで分かりやすくプライバシーを侵してくるわけではない。多くのプライバシー侵害者は、水面下でもっと分かりにくくずる賢くあなたの個人情報を狙ってくる。

 Netflixに加入している人がいたら、ぜひ「グレートハック:SNS史上最悪のスキャンダル」というドキュメンタリーを見てほしい。2時間近い作品だが、あなたのこれからの人生において損な時間にはならないと思うので、ぜひとも時間を割いていただきたい。

 日本の新聞、雑誌、TVやWebbニュースだけしか見ていないと、なかなか知る機会がないかもしれないが、3年前の米国大統領選の後、この会社の取り組みが明るみに出て全世界に衝撃が走ったが、その衝撃が何だったのかを紹介したドキュメンタリーだ。

 かいつまんで紹介すると、Facebookなどのソーシャルネットワークが、利用者がどんな投稿をし、どんなWebサイトを閲覧しているかを分析して、あなたのような人に対してどんな広告を出せば、あなたがドナルド・トランプに投票するか(あるいはヒラリー・クリントンを落とそうとするか)、心理的分析に基づいた広告や情報を表示し続けることで心理操作をしたという内容だ。

Apple Privacy Netflixにある「グレートハック:SNS史上最悪のスキャンダル」

 英国が初めて行ったBREXITの国民投票の際にも、同様の情報操作が行われたという。

 日本だけは蚊帳の外だが、例えばヨーロッパではこうしたことを背景にGDPR(EU一般データ保護規則)が成立したり、「Technology For Good(Tech4Good)」(善良なテクノロジー)という言葉を旗印にしたシリコンバレーのIT企業に対抗するテクノロジーベンチャーが、米国東海岸やヨーロッパで次々と立ち上がったりと、国家などを巻き込んだ無視できない大きなムーブメントになってきている。

 大げさと思う人もいるだろうが、トランプ当選に関わった広告戦略にはロシア政府が関与していたという可能性が指摘されていることもあり、カナダのジャスティン・トルドー首相は選挙期間中、カナダ人に海外資本の広告が表示されるのを禁止するといった動きも出てきている。

Apple Privacy テクノロジーイベント「Viva Technology 2019」

 もちろん、日本も個人情報の盗難が問題になっていないわけではない。最近、忘れる暇もなくニュースになっている詐欺事件の多くは、個人情報の盗難を起点としている。いくらパスワード設定で気を付けても、誕生日や母方の旧姓といった個人情報が漏れるだけで、知らなくてもパスワードを簡単に再設定できるサービスがまだまだあるし、いつもどんなお店に行っているのかといった個人情報が分かってしまうだけで、アカウントの盗難やなりすまし、最悪の場合は、あなたが大事に隠していた情報がゆすりのネタに使われたり、最悪の場合はお金が盗まれたりするようなことにもつながりかねない。

 そんな危険な時代だからこそ、世界中の数え切れないほどの個人だけでなく、政府/国家や自治体なども依存しているプラットフォーム技術を持つ会社は、他社よりも何倍もセキュリティ対策、プライバシー対策もしっかりとしなければならない。

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