Appleは何故、ここまで声高に「プライバシー」保護を叫ぶのか?Appleのプライバシー情報ページが一新(3/4 ページ)

» 2019年11月07日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

Appleがユーザー情報収拾をしないビジネス的/文化的背景

 こうしたIT業界の紆余曲折の中、Appleはほぼ一貫してユーザープライバシーを守る側にあった。

 Apple自身もiAdという広告ビジネスの展開を目指していたこともあるが、それすらiOS機器の普及率の高さに依存し、あまりターゲティングを行わない広告モデルを目指していた。

 これには2つの理由がある。

 1つは、よく指摘されるように、そもそもAppleが他のプラットフォーマー企業のように、収益源として広告モデルに依存しておらず、ハードウェア商品の売り上げを基盤としていること(最近、プライバシー保護の議論が盛り上がってきたこともあり、Googleなども積極的に自社製ハードウェアを開発し、Apple同様のモデルに転じようとしている)。

 もう1つは、Appleの共同創業者であるスティーブ・ジョブズの哲学や姿勢、そしてAppleという会社の成り立ちに関係がある。

 収益モデルに関してはMicrosoftやIBMなども同じで、そもそも1990年代中頃のインターネット商用利用開始以前からあるIT企業の多くは、広告ではなく商品やサービスの販売を収益源としているが、その中でもAppleはとりわけ1つ1つの製品をしっかりと作って、しっかりと売り、そこから利益を得るモデルを維持してきている。

 ジョブズの姿勢や哲学という視点では、ジョブズは一貫してユーザーのプライバシーを脅かすべきではない、という立場をとってきた。

 皆さんもご存知の通り、スティーブ・ジョブズは、ヒッピー文化などカウンターカルチャーの中に身を置いてきた人物だ。ベトナム戦争を続け、ソビエト連邦との冷戦も続けていた当時の政府は、大型コンピュータを使って国民を管理・監視しようとしていた。

Apple Privacy Appleの共同創業者であり、中興の祖でもあるスティーブ・ジョブズ氏

 そんな時代、コンピュータを民主化、つまり1人1人誰でも使えるようにし、個人でもこのコンピュータを使って政府と同じくらいの力と自由を手に入れられるようにする、というのがAppleを含む1970年代の「パーソナルコンピューター」、つまり個人の能力を拡張するコンピュータが誕生した文化的背景であり、実際にこういったコンピュータを使って政府のネットワーク網に侵入してイタズラをするハッカー達も、こうした文化的背景から誕生している。

 このような文化的、歴史的背景からも、ジョブズは常に国家などの大きな組織が、その力を使って個人の情報を搾取することには反対、抵抗する姿勢を持った人物であり、Appleでも一貫した哲学として、個人情報は必要以上には収集しないスタンスが守られてきた。

 2011年のスティーブ・ジョブズ逝去で、この方針がどう変わるのかは心配されたが、2015年にその精神が守られていたことが分かる。同年12月にアメリカ・カリフォルニア州で起きた、サンバーナーディー銃乱射事件の捜査において、FBIは犯人が所有していたiPhoneを調べるためにAppleに端末のロック解除を要求するが、Appleはこれを拒否。この裁判を通して、実は2014年にリリースされたiOS 8の時点から、FBIは危険人物からの情報を収集できるように、iPhoneの情報を政府関係者は見られるような仕様にすることを要求していたが、Appleがこれを拒んでいたことが明らかになる。

 iPhoneのアプリビジネスを営んできた人たちは、もっと早くから気が付いていたかもしれない。iPhoneのアプリビジネスが、世界に多くのアプリ長者を生み出していた2010年前後、こうしたアプリに埋め込む分析サービスが一時、ブームとなった。アプリが1日に何回起動され、1回あたりどれくらい利用されているかなどのユーザー情報を獲得して、より正確な行動ターゲティングをアプリ横断で提供しようというサービスだ。

 しかし、ある時、Appleがこれに気が付いて、過度なユーザー分析を行っているアプリを一斉にApp Storeから排除したことがあり、実はAppleはこの頃から過度なユーザー分析に対してはハッキリと反対する姿勢を示していた。

 そして、やがて、これはApple製のWebブラウザ、Safariによる一連のトラッキング対抗の機能搭載へと発展する。

Apple Privacy Safariでの対応策

 情報収集者がユーザーの知らないところで勝手に情報を収集できないように、情報収集者が、例えばさまざまな記事に表示されるソーシャルメディアを使って情報を共有するためのボタンであったり、コメントを書き込む欄を使ったり、サイト横断で情報を入手しているといった手の内を明かすと、Safariでは、そういったサービスに個人情報が渡る前にユーザーに「本当にいいのか?」と注意を促す機能が次々に搭載され始めた。

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