未来を創る「子どもとプログラミング教育」

職員室の「IT化」を阻むものは何? 元教員が考える課題と解決策(1/2 ページ)

» 2021年02月26日 21時00分 公開
[まつむしITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、社会のさまざまな場面で「IT化」が叫ばれるようになりました。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」なんていう言葉も飛び交っています。

 文部科学省が掲げる「GIGAスクール構想」(参考記事)の影響もあり、児童や生徒が通う小学校や中学校でもIT化が急速に進みつつあります。ただ、「学校のIT化は進んでいるのか?」「子どもたちはPCやタブレットなどをしっかりと扱えるのか?」といった疑問を持つ人もいらっしゃると思います。

 この記事では、実際に公立小学校の教員として約6年間働いてきた筆者が、学校ITの“内側”の事情を紹介していきたいと思います。簡単に読めるようにまとめましたので、ぜひご一読ください。

学校 学校におけるIT導入の実情は……?(写真はイメージです)

課題が多い「教員のIT化」

 結論からいうと、学校におけるITの普及にはまだまだ課題が多くある状況です。社会全体においてIT化が進んでいますから、当然改善の余地はある……のですが、現在は教える側、つまり教員が学校のIT化の足を引っ張りかねない状況にあります。

 残念ながら、ITを拒んでいる教員は少なからず見受けられます。端的にいえば、機械を使うことを良しとせず、「手書き」を始めとするアナログなやり方に“固執”している教員がいるということです。

 今、教員の働き方が大きな問題となっています。「長時間労働を強いられる」「残業時間が長すぎる」といった話は、報道などを通して聞いたことがあるでしょう。学校では常日頃から「人手不足」に悩まされています。それを解消し、質の高い教員を確保していくためには、こういった問題はどんどん解決していく必要があります。

 本来、IT化には教員の働き方を改善する効果があります。例えば、難しい計算や授業の説明の一部をPCに任せれば、授業準備にかかる時間を削減できます。残業を減らしつつ、より質の高い授業を実現することも不可能ではありません。

 「新しい機械」に抵抗感を覚える気持ちは、とてもよく分かります。しかし、いつまでも「古いやり方」にこだわっていては、仕事量を減らすどころか余計に増やしてしまいかねません。

教室のイメージ 本来、授業にもITを取り入れれば授業準備の面でも効率化を進められるはずだが、それすら拒む教員もいる(写真はイメージです)

 ITを拒む教員がITを導入できない大きな理由として、自分が“分からない”状況を恐れていることは見逃せません。

 教員とは、他人に「何か」を教えることが仕事です。それゆえに「自分は全てを知っていなければいけない」「分からないことがあれば、他人(児童や生徒)から信頼されないのではないか」といった不安(あるいは強迫観念)を抱えがちなのです。

 もちろん、元々ITの知識が豊富な教員は、以前からITを駆使しています。校内のネットワーク構築や校内(ローカル)サーバの運営なども一手に引き受けるような人もいます(その教員が転勤する際に、管理上の問題が生じる恐れもあるのですが……)。しかし、そのような知識のない教員、特に年配の教員は分からないことが怖い故にITを使おうとしないのです。

 実際に使ってみれば、ITの良さや便利さに気付いてもらえるはずです。その“第一歩”をどうやって作るのか、覚えたての時期のフォロー体制をどう構築するのかが、学校のIT化の成否を分けることになります。

IT化 教員におけるITツールの導入は、その“第一歩”とフォロー体制が重要になる(写真はイメージです)

ITとの親和性の高い「児童」「生徒」に対応するのは不可避

 今の児童や生徒たちは、ITに囲まれた世界で生まれ育ってきています。長時間PCやスマホを使っている子どもも多いでしょうし、親のPCやスマホを借りてゲームをしている子どももいます。

 将来の夢として「ゲーム実況者」や「YouTuber」が人気を集めていることを考えると、ITと結びついた職業を視野に入れている子どもも増えています。よって、多くの教員よりも子どもの方が圧倒的にITに詳しいという状況は、決して珍しいものではありません

 小学校や中学校における「外国語活動」「外国語」の授業では、タブレット端末の活用が進みつつあります。端末をTVにつないで英語のネイティブスピーカーの発音を確認するのですが、“子ども受け”は良好です。

 1人1台の端末が渡される場合は、端末に入っている「デジタル教科書」を活用してより深い学びにつなげることもできます。外国語(英語)のデジタル教科書には、アニメ調の映像や高品質な音声が収録されています。これを使って発音やリスニングを自習することで、ネイティブスピーカーに近い発音で会話ができるようになった子どももいました。

 さらに、2020年度からは小学校で、2021年度からは中学校で「プログラミング教育」が取り入れられたことにより、児童や生徒が授業中にコンピューターを操作する機会も増えました。

 筆者の経験の限りの話ではありますが、ITを活用した授業に対応できない子どもはそれほどいません。むしろ、それを好んですらいます。学校全体のIT化を進めることは、児童や生徒にとって全体としてプラスの影響を与えることは間違いありません。

事例 東京都小金井市立前原小学校で行われたプログラミング教育の模擬授業。学習指導要領の改訂とGIGAスクール構想の進展によって、このような授業風景は珍しくなくなるはず(参考記事
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