未来を創る「子どもとプログラミング教育」
コラム
» 2020年05月29日 11時00分 公開

短期集中連載「プログラミング教育とGIGAスクール構想」 第2回:Windowsが圧倒的? 課題はネットワーク? ICT教育の現状と課題、先端事例 (1/4)

2020年度は小学校、2021年度は中学校で新しい「学習指導要領」が完全実施される。教育へのICT(情報通信技術)の活用がより進むことになるが、実際の教育現場はどうなっているのだろうか。その先進的事例を紹介しつつ、学習用端末、通信ネットワーク、デジタル教材やサービスにまつわる現状と課題を見ていく。

[石井英男,ITmedia]

 2020年は、子どもの教育環境がドラスティックに変化する年となる。ほぼ10年に1回の頻度で改訂されている「学習指導要領」が小学校において完全実施される他、「GIGAスクール構想」に基づいて、小中学校へ学習用端末を“1人1台”導入する取り組みが始まる。

 そんな状況下で、「新型コロナウイルス」への感染防止の観点から、学校への登校が制限されることになった。それに伴い、「授業のオンライン化」へのニーズが高まり、3年間かけて行われる予定だった学習用端末の配備を1年間で完了させるのを始めとして、教育のICT化にまつわる施策が前倒しで行われている。

 この短期集中連載「プログラミング教育とGIGAスクール構想」では、子どもの教育に起こっている変化を数回に分けて追いかけていく。第1回では、プログラミング教育が必修化された背景とGIGAスクール構想について解説した。

 今回は、第1回の内容を踏まえて、教育のICT化にまつわる教育現場の事例や、学習用端末、通信ネットワーク、デジタル教材やサービスなどの整備に関する現状と課題、今後について解説する。

 本連載の執筆に当たり、NECの田畑太嗣氏からさまざまな話を伺った。田畑氏はNECの第一官公ソリューション事業部の初中等・教育産業グループで部長を務め、日本教育情報化振興会 政策検討委員会の委員、学習ソフトウェア情報研究センターの理事や、文部科学省の「2020年代における教育の情報化に関する懇談会」のメンバーなどを歴任してきた。日本の情報教育に関する第一人者である。

NECの田畑太嗣氏 NECの田畑太嗣氏

以前からあった「プログラミング教育」「ICT機器」を取り入れる動き

 新しい学習指導要領の実施前から、独自にプログラミング教育やICT機器を取り入れた教育を積極的に行っている学校は幾つもある。

 とりわけ私立小中学校では、「教育にICT機器をいち早く取り入れている」ことをアピールする学校も多いが、公立小中学校でも、ICTに理解のある先生の熱意によって、プログラミング教育を積極的に取り入れている学校もある。

 こうした先進的な事例は、これからプログラミング教育を取り入れようとしている教育関係者にも参考となるだろう。

東京都小金井市立前原小学校の取り組み

 小学校におけるプログラミング教育やICT機器活用に関して、先進的な事例としてよく挙げられるのが、東京都小金井市立前原小学校だ。前原小学校は公立小学校であるが、松田孝校長(当時)が2016年に赴任して以来、松田校長の“肝いり”でプログラミングを活用した授業が行われるようになった。

 赴任直後の2016年度には、3年生から6年生を対象としたプログラミング授業を年間20コマ実施。2016年11月には、全ての学年の全クラスを対象とした“公開”プログラミング授業も行われた。

 さらに2017年度からの3年間、総務省による「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」の指定校となり、低学年(1〜3年生)ではiPad、高学年(4〜6年生)ではChromebookまたはWindows PCを1人1台ずつ使える環境が整備された。

 これらの取り組みの他、「Raspberry Pi 3」を使った授業なども実施している。例えば、3年生では「Minecraft Pi」と「Scratch2MCPI」を活用し、マインクラフトの世界をScratchによるプログラミングで自由に操る、という実習が行われた。この実習では、「X座標とY座標」や「ループ」といった概念を理解する必要があるが、筆者が見学した際は、課題とそのヒントを与えられただけで、児童たちがスイスイと自分たちでプログラミングを進めていく姿があった。

 なお、「とにかくいろいろなところからかき集めた」(松田校長談)こともあり、高学年における1人1台環境はクラスによって端末メーカーやOSが異なっていた。

松田孝氏 左が前原小学校の松田孝校長(当時)。松田氏は現在、MAZDA Incredible LabのCEOを務めている。右がハックフォープレイの寺本大輝代表。寺本氏は児童や生徒向けの講演会も積極的に行っている
小6の特別授業 小学6年生の特別授業として、寺本氏が開発した「Hack for Play」に挑戦している様子。よく見ると分かるが、児童1人1人に1台ずつ端末(Chromebook)が用意されている
小3の特別授業 こちらは3年生を対象とした、マインクラフトの世界をプログラミングで操る実習の様子
黒板にはヒント 黒板には課題とヒントしか書かれていないが……
Scratch 児童たちはScratchを使ってサクサクと課題を進めていく

 前原小学校ではプログラミングだけではなく、クラス運営にもICT機器を活用している。

 例えば、6年生は毎日「朝の会」の代わりに授業支援ツール「schoolTakt」を使った「朝ノート」と呼ばれる活動を行っている。これは、生徒全員が自分の端末(PC)から“朝のひと言”を入力するもので、書き込まれたひと言はその場でお互いに読み合い、先生も全員の声に目を通して全体に声かけをする。

 朝ノート活動によって、同級生がお互いのことをより理解できるようになり、クラスの雰囲気もよくなったという。

立命館小学校の取り組み

 京都の立命館小学校の取り組みも興味深い。立命館小学校の正頭英和教諭(英語担当)は、小学生の英語授業の中で、マインクラフトを活用した「PBL(Problem Based Learning)授業」を実施している。

 PBLは直訳すると「問題解決型学習」という意味。児童・生徒が自分で問題を発見し、解決する能力を養う教育法で、新しい学習指導要領でも重視されている「アクティブラーニング」の手法の1つだ。具体的には、テーマを決め、児童・生徒が互いに話し合いながら、「どうしたらその問題を解決できるのか」を考え、自主的に学習していくというものである。

 正頭教諭のマインクラフトを用いたPBL授業は、国内外から高い評価を得ており、世界中から優れた教師を選出する「Global Teacher Prize 2019」のトップ10に選ばれている。正頭氏のPBL授業では、マインクラフトの操作方法は一切解説しない。分かる児童が他の児童を教える形で進んでいくことが特徴だ。その詳細は、Global Teacher PrizeがYouTubeにアップロードした動画を見てほしい。

立命館小学校におけるマインクラフトを活用した英語授業(全編英語)
ファイナリスト 正頭教諭はGlobal Teacher Prize 2019のファイナリスト(トップ10)入りを果たしている(出典:VARKEY FOUNDATION)
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