GIGAスクール構想という強力な後押しもあり、学習用端末は“1人1台”に向けて着々と導入が進んでいる。しかし、端末だけがそろっても、学習教材や学習に使えるアプリケーションがないと「ただの箱」だ。ICT機器における学習用教材やアプリケーションはどのような状況なのだろうか。現状を紹介しよう。
ICT機器で活用できる学習用教材は、「デジタル教科書」とそれ以外の「デジタル教材」に大別できる。デジタル教科書はさらに、教師が用いる「指導者用」と児童や生徒が用いる「学習者用」に細分されるのだが、2019年4月に施行された改正学校教育法によって、学習者用デジタル教科書が“正式な”教科書として紙の代わりに使えるようになった(それまでは「補助教材」としての利用のみ認められていた)。
法的には、学習者用デジタル教科書は「紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録である教材」と定義されている。ただし、その導入は段階的に進められるため、現時点において有効な文部科学省の告示では、主に以下のような基準(見方によっては制約)が設けられている。
(※)障害(視覚障害、発達障害など)によって紙の教科書を使った授業が困難である児童や生徒、日本語の理解に困難がある児童や生徒、色覚特性や化学物質過敏症などの理由から紙の教科書などを使うことが困難な児童や生徒など
教師が大型ディスプレイやスクリーンなどに表示して利用する指導者用デジタル教科書は、2005年の登場以来、着実に普及が進んでいる。文部科学省の調査によると、2018年度における指導者用デジタル教科書の普及率は小学校で56.6%、中学校では61.4%に達している。
学習者用デジタル教科書の発行比率も急速に伸びている。デジタル版も存在する小学校の教科書は、学習指導要領の完全移行前の2019年度版では全体の20%だったのに対し、完全移行後の2020年度版では実に全体の94%に達した。
指導者用デジタル教科書の利点は、学習情報を共有化したり、選択や拡大、書き込みによる学習内容の焦点化により、分かりやすい授業ができることである。学年や教科を超えた学習もしやすくなり、授業の自由度も高くなる。
一方、学習者用デジタル教科書の利点は、学習者1人1人に合わせて教科書をカスタマイズする「My教科書」化をしやすいことにある。紙の教科書だけでは学習が困難な生徒に向けた学習の支援が行えることもメリットだ。
その他のデジタル教材についても、ここ数年多くの新規事業者が参入しており、拡充が進んでいる。中でも、AI(人工知能)を活用することで児童や生徒1人1人に個別最適化したドリル教材が増加傾向にある。
例えば、すららネットが提供しているクラウド型アダプティブラーニング教材「ピタドリ」は、小学1年生から高校3年生までの全学年に対応した個別最適化ドリル教材で、自分の学力に応じた演習問題に取り組めるため、児童や生徒の成績を効率良く向上できる。こうした“きめ細かな対応”を行えることは、デジタル教材ならではの利点といえる。
学校でのICT機器活用に関しては、生徒の学習状況の分析や採点支援、共同学習支援など、教室運営や教師の働き方をサポートするサービスも重要だが、そちらについては次回取り上げることにしたい。
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