M1搭載モデルにも共通することだが、SoCに搭載される回路とセットで機能が組み込まれている。FaceTime HDカメラの映像処理やスピーカー向けの高音質化処理などはその象徴例だが、Neural EngineやMLアクセラレータによるCore MLの高速化も、Core MLを用いたアプリケーションが増加してきたことで恩恵にあずかれるケースは多くなるだろう。
Apple独自設計のSoCとなったことでiPhoneとの技術的な共通性が高まり、Appleの持つコア技術がMacにも容易に投入できるようになったともいえる。
それは新しいLiquid Retina XDRディスプレイの搭載にもつながっていると考えられる。既に「12.9インチiPad Pro」で十分に効果が証明されているものだが、分割数が1000個に達するバックライト制御はノウハウと正確な信号処理が必要だ。そのために必要な処理はSoCの機能ともつながっている。
全白でも1000nitsの輝度を実現し、ピーク値では1600nitsまでを引き出せる。これまでの実績からいえば、HDR映像の製作時にはかなり役立つだろう。色再現なども従来通りの正確性が期待できる上、ローカルディミング制御がiPad Pro並ならば、暗部階調と色再現が確実によくなっているはずだ。
ディスプレイ上部のカメラ部をノッチスタイルにして、左右、上部ともに3.5mmの狭額縁としたのもなかなか思い切った仕様だが、メニューバーが上部固定のMacならではのアプローチだ(全画面でメニューレスデザインのアプリではどうなるだろうか)。
少し視点を変えてみると、このところほんの少しだけ感じられていたデザインコンセプトへのよい意味での妥協がさらに進み、美しさと使いやすさのよりよいバランスを見つけつつあるようだ。つまり、ユーザーへの歩み寄りがみられる。
それはHDMI、SDXCカードスロットの復活という形でも現れ、Touch Barの廃止という決断からも感じられる。これらの要素は特に熱心な古くからのMacユーザーには酷評というよりも「元に戻してほしい」という請願が多かった部分である。
Touch Barは、例えばビデオ編集ソフトなどでは編集作業を助けるような使い方を提案していたが、新MacBook Proの紹介ではプロユーザーが好む旧来のファンクションキーといった表現があり、とかく将来の理想型を描いてその枠にユーザーともどもはめていくことで前進するAppleのスタイルに柔軟性がみえるようになったと感じた。
音質改善したスピーカーやマイクなどは実機で評価したいが、新しいSoCの性能もさることながら、新しいSoCとセットで開発されたと考えられるさまざまな機能、性能の改善は半導体からOSまでトータルで設計できるAppleならではだろう。
費用対効果ではM1搭載Macが上回るが、今回の新MacBook Proはプロクリエイター向けとしてかなりコストパフォーマンスが高い。一方でベースラインが引き上げられたことで、一般ユーザーはMacBook Airで十分というモデルごとの性格付けがハッキリしたという見方もできる。
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