ビジュアルデザインスタジオ「WOW」が検証! 新次元の性能を持つMacBook Proの破壊力(1/3 ページ)

» 2021年12月20日 12時00分 公開
[林信行ITmedia]

 Appleの「MacBook Pro」が新しくなった。最新のM1 ProおよびM1 Maxプロセッサを搭載し、他を寄せ付けない世界最高クラスの性能を実現したノートPCだ。デザインも一新されたその製品の魅力を余すところなく伝えたいが、ちょっとした写真のレタッチなどであればM1 Proですらなく、通常のM1でも快適にこなせてしまう。

WOW MacBook Pro 新SoCのApple M1 ProとM1 Maxを搭載した16インチ/14インチMacBook Pro

 M1 ProやM1 Maxの進化を本当に理解するためには、日々、大量の映像編集や3D CG作りをしている映像のプロフェッショナルのような人が必要で、そうでない人間がベンチマークテストプログラムだけを使って製品評価をするのには無理があると思っていた。

 そこで、創業間もなくから親しくさせてもらっている日本を代表する映像集団「WOW」の代表、高橋裕士さんに、日本に入ってきたM1 Maxに64GBのメモリと8TBのSSDを積んだ最高スペックモデルを検証してもらった。

WOW MacBook Pro 東京都渋谷区にあるWOWのオフィスにて。左がビジュアルデザイナーの大賀頌太さん、右が高橋裕士代表

WindowsメインのCGクリエイターがMacBook Proを徹底評価

 WOWは東京、仙台、ロンドン、サンフランシスコに拠点を持ち、2022年には25周年を迎える日本を代表するビジュアルデザインスタジオだ。CMやTV番組、企業広報、展覧会などで使われる映像から、世界各地で行われる空間インスタレーションの映像演出、ユーザーインタフェースデザインまで、既存のメディアやカテゴリーにとらわれない、幅広いデザインワークを行う。

 2014年にはApple Watchのデザイナー、マーク・ニューソンと共にアート作品としての日本刀「aikuchi」を発表して以来、プロダクトの開発なども積極的に行っている。

 その高橋代表がメインのレビューアーに選んだのは、2021年に開催された国際的スポーツイベントのプロジェクション映像製作などにも関わった、ビジュアルデザイナーの大賀頌太(おおがしょうた)さんだ。

 かつてMacを使っていた時期もあるが、現在はWindow PCで3D CG作りをしている。すっかりMacからWindowsに転向した大賀さんは「MacBook Proのダメなところを暴いてみせます」と息巻きながらこのレビューに臨んだという。

 そんな大賀さんに、10コアのCPU、32コアのGPU、16コアのNeural Engineを搭載したM1 Maxと、最大容量の64GBユニファイドメモリ、そしてストレージに8TB SSDという最高スペックの16インチMacBook Proを1週間使ってもらい、感想を聞いた。

WOW MacBook Pro WOWのビジュアルデザイナー 大賀頌太さん。今回、新型MacBook Proを試してもらった

 大賀さんの一言目は「思ったよりも使える」だった。Appleが「怪力」とうたう性能に対しての感想にしては控えめで、最初驚いたが、その後の言葉を聞いて、胸をなで下ろした。

 「悪いところを見つけようと頑張ったんですが、ノートPCのクセに思いの外できる」。詳しく聞くと、大賀さんが比較していた対象は普段仕事に使っているWindowsのハイパフォーマンスモデルだ。AMDの32コアCPU(Ryzen Threadripper)を搭載し、GPUはNVIDIAのGeForce RTX 2080 Tiを装備したデスクトップPCは、巨大なタワー型で価格も150万円を大きく上回っている。

 MacBook Proは、その高価で巨大なハイパフォーマンスPCと比較しても、十分に健闘していたのだという。

 「3Dの作業が多いので、3Dの比較をメインに行ったところ、普段Windowsを使っているものと比べても、作業の効率はほぼ変わらない」のだという。

 「一番ビックリしたのは、3Dでよく行われるシミュレーションの処理で、これに関してはM1 Maxの方が速かった」とのこと。正確な計測は行っていないが、体感で20%ほど速かったという。

 ちなみに、3Dグラフィックスに詳しくない人のために解説すると、現在、3DレンダリングにはCPUを使って行うCPUレンダリングとグラフィックスカードを使って行うGPUレンダリングの2つの方法があり、大賀さんはGPUレンダーを利用している。

 しかし、大賀さんはMAXON ComputerのCinebench R23を使ってCPU性能に関する検証もしっかり実施していた。「CPUコア1個当たりの性能だと、我々が使っているハイパフォーマンスPCよりも性能が高い。ただし、コア数が10コアと少ないので、CPU全体の性能としては、さすがに32コアのWindows PCには及ばない」結果だったとのことだ

WOW MacBook Pro 新型MacBook ProでのCinebench R23でのスコア
WOW MacBook Pro こちらは32コアのRyzen Threadripper搭載モデルでのスコア

 比較検証用ソフトなどを使ったGPUレンダリングの比較では、GPU性能も少し劣っていて、Windows PCでは10分で終わる処理が15分かかったという。

 「さすがにレンダリングの性能では今使っているWindows PCに分があり、最終的に納品するデータを作るのには少し弱いけれど、レンダリングの手前の作業だったり、確認用データを制作するような作業であったりすれば、MacBook Proで十分事足りる」と大賀さん。

 「どうせ、今ならレンダリングはレンダリングファーム(負荷の大きいレンダリング処理をするためのコンピューター群)に投げてしまうというのがほとんどだろうから、そうやって割り切って使えば、これだけで十分やっていけるという人も増えてくるのではないかと思った」という。

WOW MacBook Pro 新型MacBook ProでBlenderを使っているところ

 実はプロの現場でも、8Kの編集の機会はまだ少ないようで、Final Cut Proのその機能は今回試してもらうことができなかったが、アドビのAfter Effectsなどを使った編集やレンダリングも、普段使っているWindows PCとほぼ同速で快適に使えたとのことだ。

 そして「こういった定番の作業に関してはWindowsじゃなきゃダメだよね、ということはない」とも付け加えた。

 Unityなどのゲームエンジンなども、動作パフォーマンスが高くMacBook Proの真価が発揮できる領域だという。

 いずれにしても、普段はデスクトップPCで行っていた作業が、ノートPCでここまでできるということは、大賀さんにとっても目からウロコだったようだ。

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