総務省は12月24日、2021年10月1日現在における「地方公共団体におけるテレワークの取組状況」の調査結果を公表した。都道府県や政令指定都市ではテレワーク(在宅勤務)の導入率が100%となった一方で、市区町村での導入率は50%弱となっており、導入の予定がないという市区町村も見受けられる。
この記事における「区」は、東京都における「特別区」(東京23区)を指します。
前年(2020年10月1日)の調査では、テレワークの導入率は都道府県で100%、政令指定都市で85%、他の市区町村で19.9%だった。1年たった今年(2021年10月1日)の調査では、政令指定都市での導入率は100%となり、他の市区町村での導入率は49.3%となった。
この調査では「導入済みの自治体(916団体、試行を含む)」と「未導入の自治体(872団体)」にそれそれ絞り込んだ調査も行っている。
テレワークを導入している自治体で実施されているテレワークの形態を調査した所、以下のようになったという。
一見すると在宅勤務以外の形態の導入率が低いように見えるが、都道府県と政令指定都市は、モバイルワークとサテライトオフィスでの勤務も可能な比率が高い。見方を変えると、他の市区町村は在宅勤務以外のテレワーク形態に対応できていない比率が高いということでもある。
テレワークに使う端末は、多くが「貸し出し用端末」で対応している。都道府県や政令指定都市では、自席にある「席上端末」や職員が保有している「私用端末」でのテレワークにも対応している比率が高い。
都道府県や政令指定都市では非常勤職員もテレワーク対象とする自治体が多い。ただ、他の市区町村では対応率が低いため、全体では50%弱となってしまっている。
都道府県と政令指定都市は、他の市区町村と比べると職員数も多いと思われる。今回の概要にはデータとして含まれていないが、自治体の規模が大きいほどテレワーク制度が充実する傾向にあるようだ。
テレワークを導入済みの自治体でも、それを利用できる職員の比率や実際の利用率を見てみると課題がないわけではない。
都道府県と政令指定都市の約半数では、一般行政職員(※1)の8割以上がテレワークを利用できる状況だという。しかし実際の利用率(1年間の平均値)は、不明(利用率の計測をしていない)という自治体が過半だった。「不明」という回答以外で最頻だったのは、都道府県では「30%以上50%未満(12.8%)」、政令指定都市では「0%以上10%未満(25.0%)」である。
(※1)明らかにテレワークがなじまない業務に従事する人を除く(以下同様)
一方で、他の市区町村では、テレワークを行える環境にない一般行政職員が50%未満である自治体が少なからず存在する。利用率も「0%以上10%未満(43.5%)」が最頻だ。
業務においてテレワークでも使えるツールの導入率を見てみると、自治体の種類を問わず導入率が高かったのは「業務用メール」と「スケジューラー」だった。都道府県や政令指定都市では「電子決済」や「チャット」の導入率も高いが、これは他の市区町村と比べると業務拠点(庁舎)が多いことが関係しているものと思われる。
「Web会議」は都道府県で80.9%、政令指定都市で65%と普及率が高い一方で、他の市区町村では46.8%と普及率が半分を少し割り込んでいる。最近は政府機関の会合もWeb会議やハイブリッド会議(Webからの参加も認める)で行われることが多い。今後、他の市町村も含めてWeb会議の導入はさらに広がりそうである。
思ったよりも導入が進んでいるのが「在席確認ツール」だ。勤怠をしっかりと把握するために導入しているのかもしれない。都道府県では約4分の1が「公用電話アプリ」を採用しているのも興味深い。
テレワークにはメリットもあればデメリットもある。それは一般的な企業はもちろん、自治体でも同様だ。ただし、自治体ならではの“課題”もある。
テレワークを導入した自治体の多くは、テレワークを導入したことで「職員の移動時間の短縮・効率化」「事業継続性の確保」といった面でメリットを感じているようだ。都道府県や政令指定都市では、ワークライフバランス、業務の効率化や生産性の向上におけるメリットを挙げる比率も高かった。
一方で業務におけるテレワークによる代替性のなさ(個人情報を扱う業務、現場業務、窓口業務、相談業務における困難など)や紙の資料を参照することの困難さ(電子化されていない資料があること)など、自治体ならではの課題を挙げる自治体もあった。職員同士のコミュニケーション不足、労務管理の難しさといった一般的な企業にもありがちな課題も少なからずあるようだ。
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