2022年のパソコンはどう進化するのか。昨年を振り返るコラムからの流れで、今年のPCを中心としたテクノロジー業界の流れについて、既に判明していることも含めておさらいしつつ、予測をしていきたい。
2021年はWindowsが久々のメジャーアップデートを果たした年だった。「Windows 11」は10の化粧直しとはいえ、Microsoftはスマートフォンを中心としたテックデバイスと、より仲良しな関係を築こうとしている。今年は少しずつアップデートしながら、より洗練された機能と使い勝手を実現してくれるだろう。
Intelは2021年に新CEOのもと、2025年までに競合を製造技術で追い越して半導体の性能面でリーダーになるためのロードマップを公開し、秋には「第12世代Coreプロセッサ」の投入を開始した。
このように、PC業界はMicrosoft、Intelともに新たな付加価値をPCに積み上げていく基盤を整えたばかりだ。今年まず注目したいのは、プラットフォーマーではなく、PCメーカーということになるだろう。
Windows 11とは、Windows 10が設計された2015年ごろとはもろもろ事情が変化している中で、基本部分はそのまま継承しながら最新のトレンドや利用環境などに合わせ、全体を見直し、整理したものだ。
全体を見渡して構造的な部分やユーザーインタフェースに目を向けると、いろいろとスッキリしてうまくやったなぁと感心するのだが、目玉機能であるAndroidアプリをWindows 11上で走らせる機能がまだ実現されていないなど、ドラスチックな変化を感じていないユーザーもいることだろう。
これはプロセッサのトレンドも同じで、IntelやAMDがプロセッサの世代を更新したからといって、それだけでPCが大きく変わるわけではない。もちろん高性能にはなるが、だからといってできることが劇的に変化する時代ではないのだ。
しかし、メーカーが新しいコンセプトのPC製品を練り上げる自由度は高まった。その準備が整ったのが昨年後半のことで、言い換えれば今年はコンセプトを一新したPCが登場するのではと期待している。
Intelは昨年10月にデスクトップPC向けの第12世代Core(開発コード名:Alder Lake)を発表して翌月に発売した。2022年はこれを高性能ノートPC向けや薄型・小型ノートPC向けにも拡充していく計画だ。昨年11月には高性能ノートPC向けの第12世代Coreをメーカー向けに出荷し始めたことも明らかにしており、ゲーミングやクリエイター向けのノートPCが第12世代Coreに置き換えられていくだろう。
第12世代Coreは処理性能を重視するPコアと電力効率を重視するEコアの構成数で熱設計が変化する。特にパフォーマンス重視のプラットフォームではさまざまなアプローチが取れるため、このタイミングで設計を大きく更新するPCメーカーが多いのではないかと予想する。
一方、モバイル系がドラスチックな変化を見せるのは少し先のことになるだろう。引き続きIntelが強い領域だとは思うが、好調なAMDの採用例は薄型軽量ノートPCでも増えていくのではないだろうか。
例えば、日常的には軽めの処理が多く、時折、動画などのメディア処理でマルチスレッド性能が欲しいといった用途には、価格が安く、マルチスレッド性能とGPUの電力効率が高いAMDのモバイル向けRyzen 5000シリーズ(Zen 3アーキテクチャのモデル)を筆者なら選ぶだろう。
ただし、個人的に最も興味を持っているのはQualcommのArm SoC(System on a Chip)である「Snapdragon 8cx Gen 3」を搭載する製品だ。5nmプロセスで製造されるこのチップは5Gモデムを搭載しており、AppleのM1とは一味異なる性格を持つSoCになるだろう。
Intel系に比べると電力効率で優位なSnapdragonのWindows 11向けSoCであるSnapdragon 8cx Gen 3を搭載する製品は、今年の中頃までには一通りがそろってくるとみられる。MicrosoftがQualcommと共同開発してきたSQプロセッサのシリーズ最新作(とそれを搭載するSurfaceシリーズ)にも期待できる。
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