今回は前回に引き続き、Windows 11のシェアの話題だ。
AdDuplexは、ここ毎月はWindows 10/11のバージョン別シェア報告をこまめに行っており、本稿執筆時点でその最新版である「AdDuplex Report for April 2022」が発表されている。
2022年4月末日時点でのWindows 11のシェアは、19.7%と前月比で0.3ポイント増だ。
前回も触れた通り、Windows 11のシェア増加はほぼ止まっている。現状を分析すれば、コンシューマーを中心とした一般ユーザーの間でWindows 11へのアップグレード意向を持つユーザーの移行はほぼ完了しており、次の波となるビジネスユーザーの移行待ちのフェイズまで到達したといったところだろう。
そこで、Microsoft的にはビジネスユーザーの緩やかな移行を促進するため、生産性向上や管理機能をさらに強化する仕組みの導入をもって、全体的な“テコ入れ”が求められるタイミングに差し掛かりつつある状況だ。
一方で、Windows 11にとっての大型アップデートである「22H2」に入る予定の機能はほぼ固まっている。4月のイベントでも触れられているが、リモートワークなどハイブリッド環境での生産性向上や、Windows 11のUI/UXそのものを全体にブラッシュアップする試みが中心となる。
だが実際のところ、Windows 11への移行の停滞傾向が現状で見えている以上、2022年中のさらなる促進は難しいのではないかと筆者は今の時点で予測している。
コンシューマー市場での伸びを抑制しているのは、移行と留まっているユーザーの多くがハードウェアの問題に起因する買い換えが必要な状況にある点、そしてビジネスユーザーも同様にWindows 10のサポートが継続している関係もあり、リースアップなどハードウェアが刷新されるタイミングまで移行を止めている企業が少なからずあると考えられるからだ。
Microsoft自身も企業ユーザーのWindows 11への移行は強制しておらず、2種類のOSの混在環境での利用を想定している。新OSへの移行には検証時間や教育コストも少なからずかかるため、企業側としてもWindows 11の22H2に相当するアップデートが提供されて以降をターゲットにしてくるだろう。
この流れを象徴するようなデータが、「November 2021 Update」こと「21H2」のシェアだ。3月時点では28.5%だったシェアが35%まで増加している。代わりに「May 2021 Update」こと「21H1」のシェアは26.5%から26.4%にわずかに減少、全体に「October 2020 Update(20H2)」「May 2020 Update(2004)」のシェアが2〜4ポイントの単位で減少しているため、多くのWindows 10ユーザーが21H1、または21H2に移行したことを意味する。
この2つのバージョンだけでWindows 10/11のシェアの61%に相当する。4月15日(米国時間)に21H2が「Broad Deployment」のステータスになったことも大きいだろう。これにより、旧バージョンから流れてきたユーザーが21H2に集中する環境が整った状態だ。
さらにいえば、これにより21H1から21H2への移行も加速するとみられる。Windows 10 Enterprise/Educationの2つのエディションの話のみとなるが、21H2のサポート期間は21H1より1年半ほど長い。
理由の1つは2021年時点で廃止された「Semi Annual Channel(SAC)」の仕組みに由来する。こちらも2019年時点で廃止された仕組みだが、SACには「Targeted」と“無印”の2種類のアップデートがあり、その性質によってサポートライフサイクルが異なっていた。
Targetedそのものは廃止されたとはいえ、サポート期間の違いは残っており、「Lifecycle FAQ - Windows」の中でSACの年2回のアップデート(「H1」と「H2」)の違いについての解説が行われている。
H1は18カ月のサポート期間なのに対し、H2では30カ月のサポート期間となっている。つまり同じ年にリリースされたアップデートであれば、H2の方が1年半ほどアップグレード猶予が長いというわけだ(12カ月+6カ月)。
2022年以降SACは廃止され、年1回リリースの「GAC(General Availability Channel)」に集約される関係上、H1に相当するアップデートはなくなり、より21H2に集中する傾向は強くなる。
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