しかし、結論から言えば筆者は日本語配列への対応ができなかった。かつて、自宅では日本語配列かな入力(FEPはOAK)を、オフィスでは英語配列ローマ字入力を使っていた適応力はどこへ行ってしまったのだろうか。
キートップの印刷を無視し、強引に日本語配列キーボードを英語配列として使おうとすることもできなくはないのだが、それでもわずかな違いなのに操作感への影響が大きいキーがある。それがEnterキーと¥キーだ。日本語配列ではEnterキーは逆L字型の大型キーとなっているが、英語配列では通常キーの2.5倍ほどの幅を備えた横長キーだ。日本語配列だと¥キーとEnterの下半分がある場所になる。
大型/横長キーのどの部分を打つかは人によって異なると思うが、筆者の場合は英語配列ではEnterキーの左側を打っているようだ。そのため、日本語配列を使うと誤って¥を打ちがちになる。
一方、¥は英語配列だと2列目右端、つまり日本語配列のEnterキー上側の場所であり、¥を打とうとすれば改行、改行しようとすれば¥が入力される。¥はWindowsでのパス記号であるし、エスケープ記号としても多用される。Shiftキーと同時押しだとパイプ記号(|)にもなる重要なキーだ。
パイプ記号を入力しようとしたら、それらが全てEnterになってしまうなんて、エンジニアにとってはかなり嫌なタイプの呪いだ。どうも、それを回避しようと無意識のうちに右小指をEnterキーの上に保持しようとしてしまうらしく、結果として右手がホームポジションから1文字分右にずれ、右手のミスタイプが異常に多い状態になってしまった。
では逆はどうだろうか。あいにく、自分自身が英語配列ユーザーであるため正確なところは分からないのだが、「¥を打とうとしたらバックスペース」「](})を打とうとしたらEnter」「Enterを打とうとしたら¥」あたりが嫌な感じだろうか。もちろん、「(」「)」が1キーずれているという、地味にストレスになるところもある。
筆者としては英語配列愛好者として、この原稿で英語配列版REALFORCE R3の発売を決断してくれた東プレに感謝の意を示すとともに、国内ではマイナーとなりつつある英語配列ユーザーを増やし、R3、R4での英語配列存続を訴えたいところなのだが、筆者の意向に反して、どんどん「英語配列と日本語配列は相容れない」という結論に近づきつつある。
だが、時代はダイバーシティー&インクルージョンだ。英語配列モデルが存続できるよう、英語配列の素晴らしさを訴えたい。
筆者がPCを触り始めた1982年当時、少なくとも周囲に英語配列のキーボードを持つPCは存在していなかった。とはいうものの、何を持って英語配列、日本語配列というかも怪しいといえば怪しい。
最初に購入したJR-100はJIS第1水準漢字どころか、半角カナすら表示できなかったからだ。Shift+2で「@」が出るものが英語配列、「"」が出るものは日本語配列と言っていいだろう、と雑に考えて、当時の海外製PCのキーボードレイアウトを調べていたら、Apple IIだけでなくコモドールのVIC-1001(VIC-20)やコモドール64でさえも日本語配列ということになってしまうではないか(Shift+Pで「"」が出るシンクレア ZX81は置いておくとして)。
実はこのあたり、いろいろとややこしい背景がある。キーボードレイアウトについては、キーの数や配置を決める物理配列と、キーに文字を対応させる論理配列に大別されるが、Windows 10では英語キーボードの物理配列を101/102キー、日本語キーボードを106/109キーとしている。論理配列についてはアルファベットの配列は日本語キーボード/英語キーボードともQWERTY配列であるのに対し、記号類については日本語キーボードがロジカルペアリング、英語キーボードはタイプライターペアリングと呼ばれる配列になる。
筆者が英語配列キーボードを使うようになったのは、職場のワークステーションがサン・マイクロシステムズのSPARCstationで英語配列だったからだ。数年後には日本語配列キーボードも使えるようになったと思うが、その頃には外国企業の日本代理店に転職し、今度はPCも英語配列になった。おかげですっかり英語配列になじんでしまい、自宅用にも秋葉原にあったラオックスの「ザ・コン館」(LAOX THE COMPUTER館)の近くにあった、「ぷらっとほーむ」でRealforce 101を購入。それ以来のREALFORCE英語配列ユーザーだ。
「当時からこれらの機種(注:古いUNIXワークステーション)を使っていた人にはタイプライターペアリングのキーボードを好む人が多い」に[要出典]が付けられているが、筆者はまさにこれに当てはまる(Wikipediaの記事より)。要は慣れの要素が大きいのではあるけれども、日英両方のキーボードを使っていた自分が英語配列にカジを切ったのは以下の理由だ。
・スペースバーが大きい
タイプライターの時代からスペースバーは巨大だった。なにせ、キーではなく“バー”と呼ばれるくらいで、親指はスペースバーをたたく役割しか持たなかったと思われる。分かち書きをする英文ではスペースバーの利用頻度も高いわけだが、日本語においても変換キーの代用としてかなりの頻度で使用される。
そのため、スペースバーが押しづらかったらかなりストレスがたまることは想像に難くない。スペースバーが大きいと、ホームポジションから手が離れたときにもタイプしやすいし、親指を置くサムレストとしても幅の広いキーは使いやすい。
・キーにゆとりがある
ノートPCで顕著だが、日本語配列では右側のキーが詰まった状態になっていることが多い。これはホームポジションであるF、Jキーからの相対的な位置が変わってタッチタイピングに影響しないよう、G、Hキーの間を真ん中に配置するためだと思われる。
英語配列を見た後に日本語配列を見ると「無理しているな」という感覚が否めない。使用頻度のかなり低いCapsLockが、何でこんなに大きいんだ、といらついている人は英語配列を試してみるといい。CapsLockの大きさ、位置自体は変わらないが、右側のゆとりのおかげで少しだけ不満が減るかもしれない。もっとも、REALFORCE R3ならCapsLockをCtrlキーに振り変えることもできるのだが。
・海外製ガジェットへのハードルが低くなる
クラウドファンディングサイトや海外ECサイトなどで、尖った興味深い製品を見つけることもままある。だが、キーボードを備えたデジタルガジェットはまず、間違いなく英語配列だ。前項とは逆に、英語配列キーボードを無理矢理日本語配列で使おうとしてもキーが足りず、「¥」や「|」を打つことができない。普段から英語配列に慣れていれば、日本語配列の展開を待つ必要もない。
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