ファーウェイ・ジャパン(華為技術日本)が6月9日、E Ink(電子ペーパー)を搭載する10.3型タブレット「HUAWEI MatePad Paper」を発売した。日本ではWi-Fiモデルのみの展開で、税込みの直販価格は6万4800円となる。
E Ink搭載タブレットといえば、真っ先にAmazonの「Kindleシリーズ」を思い浮かべるかもしれないが、HUAWEI MatePad Paperは専用スタイラスを使った手書きに対応していることがKindleシリーズとの大きな違いだ。ペン付きのE Inkタブレットは、ONYX Internatinalの「BOOXシリーズ」や富士通クライアントコンピューティングの「QUADERNOシリーズ」など、徐々に種類が増えているジャンルでもある。
果たして、HUAWEI MatePad Paperは便利に使えるのだろうか。サクッとチェックしてみようと思う。
HUAWEI MatePad Paperのディスプレイは、10.3型のE Inkだ。解像度は1404×1872ピクセル、色調はモノクロで、輝度は32段階から調整できる。輝度調整をすることで、屋外はもちろん暗い場所でも便利に使える。
本体重量は約360gと軽く、付属のカバーとスタイラスペン「HUAWEI M-Pencil (第2世代) 」を装着した状態でも実測値で550g程度となる。E Ink搭載タブレットとして特別というわけでもないが、長時間手に持って使ったり持ち運んだりしても苦にはならなさらそうだ。
縦に持った際の本体右上には電源キーがある。この電源キーには指紋センサーも統合されており、自分の指紋を登録しておけばサッと画面ロックを解除できる。
MatePad Paperは会議の議事録の保存や仕事のメモ書きに非常に便利なデバイスでもある。画面ロックをきちんと行うことで、簡単に誰かに見られてしまうという心配がなくなる。指紋認証を併用すれば、セキュリティと利便性を両立可能だ。
MatePad PaperのOS(基本ソフト)は、ファーウェイ独自の「HarmonyOS 2」となる。このOSは、スマートフォンやタブレットからウェアラブルデバイスまでを広範にカバーするもので、「Android Open Source Project(AOSP)」がベースとなっている。
同OSでは、独自のアプリストア「HUAWEI AppGallery」を利用してアプリをインストールする。ただ、記事を執筆した6月中旬時点において、MatePad Paperに対応するAppGallery掲載アプリは8つしかなかった。「アプリに対応している」とうたってはいるが、率直にいって、これでは「対応している」というには厳しい。
E Inkを搭載するモデルゆえに難しい面もあるかもしれないが、対応アプリをもっと充実させてほしい所である。
Androidスマホ/タブレットに詳しい人なら「AOSPに対応しているなら、AndroidのAPKファイル(アプリのパッケージ)をインストールできるのでは?」と考えるかもしれない。それはその通りで、MatePad PaperでもAPKファイルのインストールは可能で、Webブラウザ経由でAPKファイルをダウンロードするツールも利用できる。
ただ、正規のストアを経由しない、いわゆる「野良アプリ」の利用は全くの無保証である上、使う側にも相応の知識が必要となる。もっといえば、悪意を持ってユーザーの個人情報などを取得しようとするトラップが仕掛けられているかもしれない。
安全かつ快適にアプリを使う観点から、繰り返しだがAppGalleryの対応アプリが充実することを期待したい所である。
MatePad Paperは「HUAWEIブック」というオリジナルの電子書籍ストアを利用できる。発表時の説明では「書籍の数は(グローバルで)30万冊以上、国内の書籍は10万冊以上に対応」と言っていたのだが、実際に検索してみるとメジャーなマンガでも登録されていないものが多く、説明と比べるとどうしてもラインアップは少なく感じてしまう。専用アプリには書籍の検索機能も付いているのだが、検索結果にヒット件数は出てこない。
書籍の充実は今後に期待したい所だが、合わせて書籍の一覧性の改善や「シリーズ」「著者」ごとの表示に対応するともっと使いやすいストアになるのではないだろうか。
サードパーティーの電子書籍サービスは、ヨドバシカメラが提供する「Doly(ドリー)」のアプリが対応している。Dolyで購入した電子書籍をアプリでダウンロードして読むという形で利用することになる。
ただ、モノクロのE Inkを想定していないせいか、Dolyアプリの操作画面は、一部に見づらい部分がある(色使いにもよるが、電子書籍を読み進める際には支障ない)。また、MatePad Paperにジャイロセンサーを搭載していない都合で本体を横向きにしても「見開き表示」に切り替えることができない。画面の向きを手動で変更するすべもないため、縦向きで閲覧するしかない。なお、HUAWEIブックでは購入した書籍は手動で横向き(見開き)切り替えられるようになっている。
Dolyアプリの改善が進めば、HUAWEIブックにないコンテンツをDolyでカバーすることもできるし、逆もまたしかりである。アップデートに期待したい。
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