GPUサポートソフトであるAdrenalinのパフォーマンス向上機能を、もう少し深く探ってみることにしよう。
まず「試すべきか」と考えたのは、最近AMDが売り出し中の超解像技術「Radeon Super Resolution」(以下、RSR)を活用する手法だ。
このRSRは、もともとAMDが発表したもう1つの超解像技術「FidelityFX Super Resolution」(以下、FSR)をベースに開発されたもので、事実上、「FSRの簡易バージョン的なもの」になる。
上位のFSRの場合、ゲームプログラムがFSRライブラリーを統合する必要がある(≒ゲーム側がFSR対応をうたっている必要がある)。このゲームプログラムへの統合によって、FSRは超解像処理にあたり、ゲームグラフィックス側の内部パラメーターであるデプスバッファ、ベロシティバッファなどを参照できるようになり、高度な超解像処理を実践する。
一方、RSRは、ゲームプログラムではなく、GPUドライバー側に統合されている。RSRを有効化すると、ゲームプログラムはRSRが設けた「仮想の低解像度画面」を認識するようになり、この後、ユーザーがゲーム側のグラフィックスオプションなどを操作して、画面解像度を明示的に「仮想の低解像度画面」に設定すればRSRが機能するようになる。
RSRは以降、そういったゲーム側が描画した、その低解像度版ゲーム映像を毎回横取りして、簡易的な超解像処理を行って映像を表示することになる。
一般的には、FSRの方が高品位な映像が得られるが、RSRには、既存のFSR非対応ゲームに対して無理矢理超解像を掛けられるメリットがある。
デフォルトではRSRは無効化されているので、その有効化は、Adrenalinの「グラフィックス」オプションから行うことになる。
有効化すると「シャープニングエフェクト」という設定オプションが増えるが、これは特にいじらなくてもよい。これは、模様や輪郭を鮮鋭化するための「強度」設定で、設定値の大小でパフォーマンスは変化しない。設定値が大きいほど鮮鋭化度合いが強くなるが、やり過ぎると見た目がややノイジーになる。
有効化後は、PCに接続されているディスプレイの“実”解像度よりも低い、3つの仮想画面モードがゲームプログラムから選べるようになる。
GV301RAの本体組み込みのディスプレイはアスペクト比16:10の1920×1200ピクセルなので1680×1050ピクセル、1600×1000ピクセル、1280×800ピクセルが選べるようになっていた。
スト5はアスペクト比16:9のゲームなので、アスペクト比16:10のGV301RAとはあまり相性がよろしくない。GV301RAでアスペクト比16:9の低解像度の仮想画面を利用したい場合は、GV301RAにアスペクト比16:9の1920×1080ピクセルのディスプレイを接続してそちらをメインデスクトップに設定すればいい。この場合、1760×990ピクセル、1600×900ピクセル、1280×720ピクセルなどがゲームプログラム側から選択できるようになる。
ちなみに、GV301RAにLGエレクトロニクス・ジャパン製の「27GK750F-B」(フルHD/240Hz)のゲーミング液晶ディスプレイを接続し、RSR有効化後に新設された画面解像度1760×990ピクセルを選択してスト5ベンチを実行したところ、60fpsに貼り付かせることができた。
ちなみに、スト5は1760×990ピクセルの画面に描画しているつもりでいるが、RSRがこれをユーザーの目に付かないところで超解像処理を行ってフルHD化し、最終的にフルHD映像としてHDMIから出力してくれる。そのため、ゲーミングモニターの27GK750F-B(フルHD/240Hz)にはちゃんとフルHD画面として表示されるのだ。
こちらも「あと少しだけフレームレートを上げたい」と思ったときには便利な選択肢となりそうだ。
では、前段で解説したスト5側の「スケーリング解像度設定」をチューニングするのとどちらがいいのかという点だが、RSR有効化で60fpsに貼り付かせることに成功した1760×990ピクセルモードは、計算上は「スケーリング解像度設定」の84設定に相当するので
(1760×990)÷(1920×1080)≒84%
映像品質的には、RSR利用の方が得をするということになるだろうか。
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