ポケトークはAI翻訳機として5年の実績を重ね、日本では観光分野などで高いシェアを有するに至った。2月にはソースネクストから分社する形で「ポケトーク株式会社」を立ち上げ、海外展開も積極的に進めている。海外では特に米国展開を強化しており、2024年頃をめどにNASDAQ(ナスダック)市場への株式上場も検討しているという。
同社によると、同社の翻訳機は日本の家電量販店における7月度の販売金額シェアで99.3%を獲得したそうだ。ウクライナの戦禍からの避難者への寄贈するなど、海外からの移住者の支援にも活用している。
インバウンドを巡っては、日本政府が新型コロナウイルス対策として実施していた訪日外国人観光客の入国制限が10月11日に緩和されており、今後は訪日需要が増加すると見込まれる。同社では観光事業者を対象に、11月末までにポケトーク端末を計1000台無償で貸し出すキャンペーンを実施すると発表した。
ポケトークは米国市場、欧州市場でも翻訳機としてシェア1位を獲得している。特に米国市場では、公共分野や医療、教育といった用途で需要が高いという。米国の免許センターでは、スペイン語話者などの英語が話せない人へのコミュニケーションツールとして使われているほか、米国の教育機関からは千台単位での受注も得られたとのことだ。
一方で、ポケトークでは翻訳サービスのソフトウェア化も進めている。翻訳専用機では各国でハードウェアの認証取得が必要になるなど、グローバル展開のハードルが高いためだ。スマートフォンアプリやPCソフトウェアで展開すれば、世界各国の市場へのアプローチが容易となる。9月からは「ポケトーク」アプリの海外での配信も開始しており、特に個人ユーザーに好評という。
今回発表された「ポケトーク同時通訳」は、主にビジネスパーソンの利用を見込んでいる。同社は“言葉の壁”がビジネスプロセスの効率化や外国人労働者の雇用拡大を妨げているという意識調査の結果を発表している。同時通訳ソフトの活用すると、英語が苦手な社員でもコミュニケーションが円滑に行えるようになり、英語が堪能な社員の負荷が軽減するといった効果が見込めると主張する。
ポケトーク同時通訳は当初、PC向けソフトウェアとして提供されるが、スマートフォンアプリの開発も進められているという。ポケトークの松田憲幸社長によると「スマートフォン版はそれほど遠くない先、半年から1年程度で出せると考えている」とのことだ。
松田社長はNASDAQ上場に向けて海外展開の比率を高めていく中で、今後はアプリ版のポケトークに注力する方針を示しており、「アプリやリカーリングビジネス(継続課金型)の販売比率を50%以上に高めた上で、上場を目指したい」と述べた。
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