ここで注目したいのは、実際に標準iPadユーザーでApple Pencilを使っている人がどれくらいいるかだ。標準iPadは、多くの学校で導入されていると既に書いた。そこでiPad導入校の多くが参加しWebサイト「iPadと学び」などを運営する、一般社団法人iOSコンソーシアム(代表理事:野本竜哉氏)でiPad導入校を対象にペン入力に関する緊急アンケートを行ってみた。
今回は時間が短かったので有効回答は30件ほどだが、Apple Pencilを使っているのはおよそ10%で、より安価な他社製を使っている学校の方がわずかだが多い。そして、ほとんどの学校がペン型入力装置の利用を任意で生徒側に判断を任せている。つまり学校側は今回のAppleの決断の影響を受けるところは少ない。
では、学校以外のユーザーはどうか。プロセッサ性能的にも標準iPadの利用は、事務系や学習系のアプリ、動画や電子書籍の利用が中心になる。こうしたユーザーはほとんどApple Pencilを使うことがない。
確かに、他には用途のない専用ケーブルをAppleはこれまでにもいくつも出してはいるが、実は第1世代のApple Pencilのユーザーはそこまで多くなくて、需要も小さく、Appleとしてもそこまでの投資はしたくなかった、という事情があるのかもしれない。
筆者のようにUSB Type-C→USB Type-Cケーブルが家に大量に余っているので、その1つをApple Pencilの充電専用にしてしまえば、アダプターが小さいゆえに無くすといった心配もなくなるはずだ。
ちなみに、このアダプターのLightningメス端子に1点不思議なことがある。Apple Pencil第1世代を差し込むとカチっとハマって抜けないのだが、iPhoneなどの充電に使う普通のLightningケーブルを指すとゆるゆるですぐに抜けてしまうのだ。
わずか1380円のアダプターでも、間違った機器の接続などが起きないようになっている。Apple PencilのLightning端子の方が、充電用の端子よりも少し端子そのものが長くなっている、というシンプルな仕掛けによるものだが、こうした部分までしっかりとデザインできているあたりは改めて感心してしまう(それに引き換え同じ見た目でも機能の異なるケーブルが何種類もあるUSB Type-Cの混乱ぶりにはへきへきとしてしまう)。
Apple Pencilの充電方法だけスマートではないが、スマートではないなりにコスト面や使い勝手、環境への配慮が行われているのだ。
配慮と言えば、円安日本への配慮もされている気がしてならない。2021年発表の第9世代iPadは、7月以降に値上げされ4万9800円になってしまったが、その後、さらに円安が進む中、価格据え置きで今後も併売される。
その上でデザイン、操作方法、処理速度、画質、通信速度が全面的にグレードアップさせつつも、6万8800円とたった1万9000円の価格差に収めた第10世代iPadは、価格設定も含めかなり日本に配慮した新製品ではないかと筆者は感じた。
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