Appleが10月18日(現地時間)、イベントなどを開催することなく突如発表した新しい「iPad」と「iPad Pro」をいち早く入手して試すことができた。まずは、全面的に刷新されたiPadの特徴や、触ってみての雑感を紹介したい。
現在、iPadは手頃な価格で万人が安心して楽しめる標準iPad、小型ながらもより高性能な「iPad mini」、プロモデルに迫る高性能の「iPad Air」、そしてヘビーな業務もこなすプロ仕様の「iPad Pro」の4モデルで構成されている。このうち今回発表されたのは標準iPadとiPad Proの最新版だ。
この標準iPadは動画サービス、電子書籍からゲームなどほとんどのユーザーのさまざまなニーズをこなしてくれながらも、iPadの中で最も価格が安く(Wi-Fiモデルで6万8800円〜、税込み/以下同様)親しみを持てる作りになっているのが特徴となる。
対してiPad Proはプロ用だけあって、価格的には高価だ(11インチモデルで12万4800円〜)。例えば仕事の締め切りが差し迫る中で、カメラから高解像度の動画を高速転送で取り出し、負荷の高い動画編集ソフトで高速処理をして、ニュース速報に間に合わせたり、部屋の見取り図をLiDARと呼ばれるレーザースキャナーで3Dスキャンして、ARデータとして転送したりといった具合に、高い製品価格をちゃんと価値ある仕事に転換できるプロユーザーを主なターゲットにした製品だ(ほとんどの人は、そこまでの機能を使うことはないので標準iPadで十分満足できるはずだ)。
この記事で紹介する標準iPadは、手頃な価格で幅広いニーズをそつなくこなす最も人気のモデルであり、学校や企業による大量購入の引き合いも強いため、売り切れが続きなかなか購入できないことも多いモデルでもある。
では早速、2023年モデル(第10世代)の標準iPadの特徴を見てみよう。
今回の全面リニューアルで、ついにホームボタンが廃止された新しい標準iPadだが、見た目はiPad Airにそっくりだ。高さ、幅、厚さ共に1mm大きくなっているが、重さはわずか10g重いだけだ。見た目はほぼiPad Airと言っていい。
ただしiPad Airが、少し大人しめなカラーバリエーションなのに対して、標準iPadはシルバー以外の色が、ピンク、ブルー、イエローとより鮮やかでポップな色になっている。
iPadは、正面から見たらディスプレイだけというシンプルな見た目が特徴だが、新iPadでは、背面パネルのカラフルなアルミ素材がディスプレイを囲う1mm弱の額縁として、正面からでも見える。ピンクやイエローなどのビビッドな色が姿をのぞかせると、使っていて楽しい気持ちになる。
新iPadは形が似ているので、ついiPad Airと比較してしまいがちだが、本来の比較対象は今後も併売が続く前モデルのiPad(第9世代)だ。
メモを取ったり、絵を描いたり、Webブラウジングや電子メール、事務系や学習系のアプリを使ったり電子書籍や漫画を見たり、動画配信やゲームを楽しんだりといったタブレットの標準的な使い方であれば、この標準iPadの性能で十分で、その方が購入価格を安く抑えられる。
これに対して強力なM1プロセッサを搭載したiPad Airがターゲットとするのは、常に最新のアプリを試したい人や、本格的な写真のレタッチやビデオ編集をしたいユーザー層だ。
実際、価格も第10世代iPadとiPad Airは2万4000円の価格差があるが、第10世代と第9世代は1万9000円差と、より近い位置付けなのが分かる。
では、最新モデルと前モデルを比べてみよう。
ボディーサイズは横幅が少し大きくなったものの、見た目はそれほど変わらない。しかしホームボタンを省いた分、ディスプレイはこれまでより0.7インチ大きい10.9型になり、画面解像度も2360×1640ピクセルと水平方向に200ピクセル増えている(iPad Airと同じだ)。重量は約10g軽くなった。
ホームボタンがなくなったことで、ホーム画面に戻ったり、アプリを切り替えたりする操作には指を上方向や横方向にはらって(スワイプして)行う。ロック画面を解除する指紋認証は縦位置で使った際に、側面右上にくるトップボタンで行う。
パッと見ただけでは分からないが、もう1つ大きく本質的な変更がある。自分を映し出すフロントカメラの位置の変更で、本体を横長になる向きで置いたとき、画面の上にくる位置に配置された。これは全iPadシリーズ初の位置変更で、今の所、標準iPad唯一の仕様だ。
ビデオ会議をする際、多くの人がiPadをケースやキーボードのスタンドで机の上に立てて使うことが多いが、他社のものも含めほとんどのアクセサリー類はiPadを画面が横長の状態で立てる設計になっている。他のiPadのフロントカメラは画面の短辺の外側に配置されているが、この状態で画面の真ん中を見てビデオ会議に参加すると、視線の向きが左右に大きくずれてしまう。これに対して新しいiPadの位置だと視線の向きの左右のズレがなくなり、より自然に会話ができる(上下のずれはあるが、画面の中央とカメラ位置の距離がそれほど離れていないので、そこまで違和感はない)。
最新iPadは、第9世代と比べるとこれ以外にも変更点が目白押しだ。
まずは充電や周辺機器の接続に使う端子がUSB Type-Cへと変更になり、外部ディスプレイの接続やSSDなどの外部ストレージ類、デジタルカメラなどとも直接つながる機器も一気に増えた。
また見落とされがちだが、いざというときにはiPhoneなどのスマートフォンを充電する外部バッテリー代わりとしても使うことができる。
ここまでの変更は氷山の一角で、それに加えてプロセッサが高性能なA14 Bionicへと進化し(前モデルはA13 Bionic)、カメラは約1200万画素になり(前モデルは約800万画素)、モバイル通信は5G(前モデルは4G)、Wi-Fiは最大1.2GbpsのWi-Fi 6とも呼ばれる高速なIEEE 802.11ax規格(前モデルは最大866MbpsのWi-Fi 5)だ。
4K(3840×2160ピクセル)ビデオの撮影も可能になり(前モデルは1080p)、スローモーション撮影も1080pへと高解像度化(前モデルは720p)、拡張ダイナミックレンジでのビデオ撮影にも対応している。
第10世代iPadは処理速度、画質、通信速度が全面的にグレードアップし、かなり全面的なアップグレードになっているが、それでも価格差を1万9000円に収めている。
限られた予算でそうせざるを得ない場合を除けば、やはりこれからiPadを買うのであれば第10世代iPadをお勧めしたい。
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