Windows環境では、「Microsoft 365」に付帯するOfficeスイートを利用することでデータの作成や共有(コラボレーション)を行える。しかし、コラボレーションを前提にデータを共有してみると、思わぬ壁にぶつかることもある。例えば「Microsoft Excel」の場合、ブックを共有にすると「セルの結合」を利用できなくなる。
その点、Google Workspaceに含まれる「Googleスプレッドシート(表計算)」「Googleドキュメント(文章作成)」「Googleスライド(プレゼンテーション)」を利用すれば、複数人が同時に編集する場合でも編集上の制限は特にない。それぞれのスプレッドシート、ドキュメント、スライドには細かい共有設定を行える他、「Googleドライブ」上に共有ドライブを作成すれば、その共有ドライブ内のデータアクセスを一元的に管理する事も可能だ。
ここで気になるのが、外部の取引先がGoogle Workspaceを利用していない場合のコラボレーション方法である。「連携が滞ってしまうのでは……?」と思う人もいるかもしれないが、Google WorkspaceはMicrosoft Officeで使われるファイル形式のインポート/エクスポートに対応している。よほどの事がない限りは大きな問題にはならないだろう。
Google Workspaceでは、スケジューラーとしても利用できる「Googleカレンダー」、電子メールサービスの「Gmail」、ビデオ(Web)会議に利用できる「Google Meet」など、ハイブリッドワークに便利な機能やサービスも網羅している。冒頭でも少し触れたが、PCを使った業務をWebブラウザ上で(おおむね)完結できる企業や組織なら、使い方によってはMicrosoft 365よりも便利ともいえる。
……と、気になるのはGoogle Workspaceの費用だが、標準的なセキュリティと管理機能を利用する場合の1ユーザー当たりの月額利用料金は以下の通りとなる(いずれも最大300ユーザーまで契約可能で、料金は税別)。
「Microsoft 365 Business Premium」が1ユーザー当たり月額2390円(年額支払時の税別)であることを考えると、Google Workspaceのお得さは目立つ。ただし、企業や組織の業務内容によっては、追加のソリューションやSaaSを用意する必要があることもあったり、Windowsでしか実施できない業務が存在したりもする。そのため「いろいろと用意したら、Google Workspaceに移行するとむしろ割高になった」というケースも考えられる。
特にChromebookをGoogle管理コンソールで管理する場合、「Chrome Enterprise Upgrade」のライセンスを取得する必要があることに注意を要する。
一般的なChromebook/Chromeboxを購入した場合、このライセンスは有償で購入する必要がある。標準価格は年間ライセンスで50ドル(約7370円)、永続ライセンスで150ドル(約2万2100円)だ。
一方、法人向けのChromebook/ChromeboxにはChrome Enterprise Upgradeの永続ライセンスを付属するモデルもある。一気に数十〜数百台のChromebookを導入する場合はライセンス付きモデルを購入すると割安になる可能性もあるので、よく検討したい。
ハイブリッドワーク化を計画する前段階で現状の業務の棚卸し(洗い出し)をしっかりと行った上で、Webブラウザ(またはAndroid/Linuxアプリ)で業務が完結できると判断できれば、「Chromebook×Google Workspace」への全面移行は“アリ寄りのアリ”だろう。そうでなければ、Windowsを使った環境構築を並行して検討して、作業効率とコストのバランスをしっかり取れる方を選択すればよい。
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