「エミュレーション環境でCPUパフォーマンスを計測するとどうなるのだろうか?」という興味もあったので、CPUのベンチマークテストでおなじみの「CINEBENCH R23」も試してみることにした。
CINEBENCH R23のmacOS版はx64とArm64のハイブリッドプログラムになったが、12月22日時点においてWindows版にはx64アプリしかない。従って、Windows 開発キット 2023ではエミュレーションが挟まる。オーバーヘッドは演算結果にどのような結果を与えるのか、注目である。
早速だが、結果は以下の通りである。
エミュレーションのオーバーヘッドが入る分、Windows 開発キット 2023は元々不利である。しかし、筆者は思った以上に健闘したと感じる。マルチコアスコアであれば、下手なx64ネイティブのローエンドPCよりも高速というケースもありそうだ。それだけ、エミュレーションの出来がよいということである。
ちなみに、Windows 開発キット 2023でCINEBENCH R23を動かすとCPUは「Virtual CPU」と表示される。「これはエミュレーションなんだな」としっかりと分かる。
その名称の通り、Windows 開発キット 2023はターゲットをアプリ開発者に絞っている。ゆえにゲームをプレイするという用途は想定されていない。
しかし、筆者としては「息抜きのゲームを楽しめるかどうか」はチェックしたい。そこで比較的軽量なゲームベースのベンチマークプログラム「ドラゴンクエストX オンライン ベンチマーク」を使って、ゲームプレイの実力を探ることにした。
設定はグラフィックス設定を「標準品質」、解像度を「1920×1080ピクセル(フルHD)」、表示方法は「フルスクリーン」としてテストした結果が以下の通りだ。
ゲームはプログラム自体が複雑な傾向にあるので、エミュレーターにとっては“鬼門”ともいえる。それは結果を見れば一目瞭然……なのだが、スコアは3859で「普通」。CINEBENCH R23同様、思ったよりも健闘している。開発作業中に突然ドラクエをしたくなったとしても安心だ。
冗談はさておき、Arm版Windows 11におけるx64アプリの稼働は高負荷な処理は厳しいものの、低〜中負荷のアプリなら十分な実用性を備えている。Chromeのテストでも触れた通り、言われない限りはArmマシンだとは気付かないほどしっかりと動く。とてもシームレスに使えることが魅力だ。
異なるCPUアーキテクチャのアプリを稼働させるフレームワークとしては、macOSの「Rosetta 2」もある。これも違和感を覚えさせない出来の良さなのだが、初めて使う際に追加コンポーネントとしてインストールする必要がある(参考リンク)。それと比べると、Arm版Windows 11におけるx64エミュレーションは特別な対応が不要という点で優れている。「互換性の鬼」とも言われるWindowsらしいといえばWindowsらしい面が出ているかもしれない。
今回は本来の用途から少し外れた観点からパフォーマンスを評価してみたが、税込み9万9880円でこの仕様のマシンが手に入るのは、かなり“お買い得”なのではないかと感じる。「一家に1台」は言い過ぎかもしれないが、ArmアーキテクチャのWindows PCの入門としては最良の選択肢といえる。
もっとも、x64アプリを使う限り、ArmアーキテクチャのWindows PCの実力は引き出し切れない。このWindows 開発キット 2023が多くの開発者の手に渡り、より多くのArm64ネイティブなアプリが多く開発されることを期待したい。
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