ここからは、筆者が普段使っているレノボ・ジャパンの「ThinkPad X13 Gen 2(AMDモデル)」と比較しつつ、Windows 開発キット 2023を使ってx64アプリのパフォーマンスを確認していこう。両マシンの主なスペックは以下の通りだ。
近年のPCにおいて一番よく使われるであろうアプリの1つがWebブラウザである。Windows 11にプリインストールされている「Microsoft Edge」はArm64にネイティブ対応しているが、ブラウザのシェアでトップの「Google Chrome」にはArm64版が存在しない(※1)。そこで今回は、「よく使われるx64アプリ」を代表して、Chromeをx64エミュレーションの実験台に据えることにした。
(※1)ChromeとEdgeのベースとなっているブラウザエンジン「Chromium」にはArm64版も存在する
早速EdgeからGoogle Chromeのダウンロードページにアクセスしたのだが、Arm64版のEdgeでは何もしないとx86版アプリのインストーラーがダウンロードされてしまう。現時点においてx64版Chromeをインストールしたい場合は、企業向けダウンロードサイトからx64版のオフラインインストーラーを入手する必要がある。
インストールして使ってみると、特にもたつくこともなく、違和感もない。何も言われなければ、ArmアーキテクチャのWindows PCで動いているということに気付かないレベルで“自然”である。システムのプロパティを見て、初めて「あ、これってArmマシンだったんだ……」と思い知らされる感じだ。「普通のx64 PCですよ」と言われても疑うことはないだろう。
「本当に……?」といぶかしむ人もいると思う。そこで、WebブラウザのJavaScriptの実行速度をオンラインで計測できるサービス「ARES-6」(バージョン1.0.1)を使ってパフォーマンスを“数値化”してみよう。Overall(全体:平均処理速度)は以下の通りだ。
こうして見ると、JavaScriptの平均処理速度には2倍超の差が出ている。エミュレーションのオーバーヘッド分だけ、処理に余計な時間が掛かっているのだろう。直接は関係ないかもしれないが、ChromeからYouTubeで4K動画を見ようとすると、再生前に若干の引っかかりが見られる。ただし、再生さえ始まってしまえば遅延はなく問題なく視聴できる。
「なら、Arm64にネイティブ対応しているEdgeはどうだろう?」と思い、プリインストールされているEdgeで同じテストを実行してみた所、Overallは14.23秒となった。x64ネイティブなChrome(ThinkPad X13 Gen 2)とほぼ並ぶ結果である。こちらは先述のYouTubeにおける引っかかりもない。
やはりエミュレーションはエミュレーションで、処理速度においてネイティブ動作するアプリにはかなわない。パッと見では大きく変わらない速度で実行できていることは間違いなくすごいことなのだが、アプリの作りや処理内容によっては、エミュレーションのオーバーヘッドが体感に与える差は大きくなるかもしれない。
ArmアーキテクチャのWindowsマシンの普及の鍵は、やはりArmネイティブアプリの充実にある。そういう意味で、Windows 開発キット 2023の果たす役割は大きいとも感じた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.