「メタバース」は新しい価値観を根付かせるか? 2023年(とその先)を“夢想”してみよう本田雅一のクロスオーバーデジタル(5/5 ページ)

» 2023年01月09日 20時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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反転攻勢の兆しを見せるIntel

 Intelが最先端の半導体製造プロセスの開発競争から脱落しそうな勢いだったのも今は昔。パット・ゲルシンガーCEOの下、同社は積極的に最先端の開発競争に舞い戻りつつある。

 計画通りに進むと、Intelは2024年にライバル(Samusung ElecrtonicsやTSMC)に追いつき、翌2025年には追い抜くことになっている。「計画通りに進むのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、さまざまな話を総合すると現時点における進捗(しんちょく)はおおむね順調であるようだ。

 まず2022年末、Intelは同社としては初のEUV露光を用いた7nmプロセス「Intel 4」の量産に必要な露光装置の納入が完了したと発表した。「7nmプロセスなのに『4』なのはどうして?」という点だが、これは「プロセスこそ2nmほど大きいが、TSMCにおける5nmプロセスよりも進んだ技術が使われている」という意思表示なのだろう。

 一方で同じ時期に、TSMCは3nmプロセス「N3」での量産が始まったと発表している。AppleやAMDなど、同社にSoC/CPUの生産を委託している企業では、2023年から順次3nmプロセスの製品を投入し始めると思われる。

 もっとも、Intel 4にしてもN3にしても、「量産に向けた重要な準備が整った」「量産が始まった」と言ってはいても、量産(の準備)がどこまで順調なのかは分からない。本当に順調なのかどうかは、今後の製品の登場具合で分かってくることになるだろう。

露光装置 Intelのアイルランド法人が保有する半導体工場「Fab 34」に、Intel 4量産の“鍵”を握るEUV露光装置が納入された。今回納入された露光装置はASML製だという

 Intel 4より先の生産プロセスの計画は以下の通りとなっている。

  • Intel 3(改良版7nmプロセス):2023年後半に生産開始予定
  • Intel 20A(5nmプロセス):2024年に生産開始予定
  • Intel 18A(改良版5nmプロセス):2025年初頭に生産開始予定

 Intel 20Aからプロセスの命名方法がさらに変わるのは、半導体の設計構造が大きく変わることに加えて、プロセスルールが「n(ナノ)」レベルから「A(オングストローム)」に移り変わることを意識しているからである(1A=0.1nm)。

オングストローム世代を意識 Intelは2024年前半に量産を開始する予定の「Intel 20A」からオングストロームを意識したプロセス名を付与している(ただし、実際のプロセスルールとは一致しない)

 名前からも分かる通り、IntelとしてはIntel 3は他社(主にTSMC)の3nmプロセス相当、Intel 20Aは20A(2nm)プロセス相当、そしてIntel 18Aは18A(1.8nm)プロセス相当の技術をつぎ込んでおり、これらをもって他社(特にTSMC)に追いつき追い越すと考えている……のだが、当然ながら他社もプロセスの微細化に向けた研究/開発を進めているので、Intelのもくろみ通りに事が運ぶかは不透明である。

 しかし、先述の通りIntelがプロセスルールの競争で“トップを取る”という気概を取り戻したことは、非常に大きな意義がある。加えて、同社はプロセスの単純な微細化だけでなく、SoCを複数のチップレット(Intel用語では「タイル」)を積層配線するパッケージに切り替えていく方針も示している。タイルは自社生産にこだわらず、TSMCを含む他社生産のものも柔軟に組み合わせる(※1)。

(※1)逆に、Intelは他社が設計した半導体の生産受託(つまりファウンドリー)事業も立ち上げる

 ライバルを見渡すと、Appleは「M1チップ」をスケールアップして「M1 Proチップ」を作った。そしてM1 ProチップをベースにGPUなどを強化して、さらに大きな「M1 Maxチップ」を誕生させた。極め付きには、超巨大なM1 Maxチップを2枚結合して「M1 Ultraチップ」を生み出した。

 しかし、Intelの積層配線の考え方を適用すれば、M1チップファミリーのように「機能を強化すると(≒チップレットを増やすと)、設置面積(フットプリント)もどんどん増えていく」という現象をある程度抑制できる。

Intel 4から Intelでは、Intel 4世代の「Meteor Lake」「Granite Rapids」(いずれも開発コード名)からチップレット(タイル)による機能強化の取り組みをさらに進める

Intelアーキテクチャを維持しつつ「Arm的なCPU」も登場?

 Intelが推進しようとしているタイルの構想は、見方を変えると「ターゲットデバイスに合わせて搭載するタイルを変える」という柔軟性にもつながる。つまりカスタマイズSoCの開発がしやすくなるというメリットも持ち合わせている。

 AppleのM1チップファミリーのような“力技”の進化をするには、それこそAppleのような企業規模(と納入規模)がないと難しい。しかし、既にあるタイルを組み合わせてカスタマイズするのであれば、一定の納入数は求められるかもしれないが、カスタマイズSoCを作る上でのハードルは低くなる。

 プロセスの微細化が進めば、スケーラビリティーの観点から超低消費電力であることを重視したIntel製CPUコアが登場する可能性もある。Intel自身がパッケージ化して販売するCPU(SoC)のバリエーションは大きく変化しないかもしれないが、IntelのCPUをベースに新しいジャンルを開拓するSoCが続々出てくる未来も描けそうだ。

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