巻き返しの準備を進める「Intel」 約束を果たせなかった「Apple」――プロセッサで振り返る2022年本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2022年12月31日 21時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 2022年の大みそか――Appleはこの日までに“全ての”MacをApple Silicon化、すなわち自社設計SoC(System-on-a-Chip)への移行を完了するはずだった。しかし現実を見てみると、「Mac mini」の一部モデルと「Mac Pro」の全モデルには“いまだに”Intel製CPUのままである。その理由は定かではないが、Appleが珍しく、自信を持ってアナウンスしていた計画を達成できなかった例となってしまった。

 一方でIntelは、パフォーマンスコア(Pコア)と高効率コア(Eコア)のハイブリッド構造を本格採用した「第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)」が好評を持って迎えられ、一時期の“停滞”を脱してかつてのいきおいを取り戻しつつある。

 2022年を締めるに当たり、主にAppleとIntelの2社を、SoC(CPU)視点で振り返ってみよう。

優れた正常進化だが驚きには欠けるAppleのSoC

 ここ数年、Appleは自社設計のSoCをうまく活用し、さまざまな驚きを演出してきた。

 あまりに多くの人が手にしているため軽視されがちだが、iPhone 13/13 Proシリーズが搭載した「A15 Bionicチップ」は、電力効率とピークパフォーマンスのバランスに優れた“名作”ともいえるSoCだった。

 それに少し先立ってMac向けに開発された「M1チップ」も、登場してからしばらくはそれを超えるPC向けSoCがなかなか登場しなかったことが、その優秀さを証明している。

 下世話な言い方だが、M1チップ搭載の「MacBook Air」を購入した人は、今でもトップクラスのモバイルPC向けSoCが持つ余裕の性能を堪能できていることだろう。現在の視点から見ると、発売のタイミングでM1チップのMacBook Airを購入するという行動を取ったとすれば、明らかに“勝ち組”の行動だと断言できる。

M1チップ Appleの「M1チップ」は、昨今のPC向けSoCにおけるエポックメイキングな存在の1つである

 明らかに出来の良さが際立っていたM1チップの登場から2年。さすがに競合他社から性能面で大きく上回る“ライバル”が登場してもおかしくはないと考えていた。しかし、現時点では絶対性能で匹敵するSoC(CPU)はあっても、電力効率面で上回るSoCはいまだに存在しない

 M1チップをパワーアップした「M1 Maxチップ」「M1 Ultraチップ」を搭載して2022年に登場した「Mac Studio」は、コンパクトデスクトップPCと捉えると現在も“無敵”の存在だ。M1チップをリファインした「M2チップ」を搭載するMacBook AirやMacBook Proも、ノートPCとして突出した性能を誇っている。

MBA M2チップ搭載の「MacBook Air」は、引き続き電力効率面で突出した存在である

 しかし、そんなAppleでも、電力効率よりも「拡張性」や「絶対的な性能」が求められる分野に対する“回答”は出せていない

 M2チップは半導体製造の技術進歩に合わせつつ、毎年のようにiPhone向けにアップデートしているSoCの設計要素を取り込むことで進化を果たした。しかし、そこには驚きをもたらすポイントはない

 Apple Siliconの優位性は「共有メモリアーキテクチャ」や「SoC上の各種プロセッサの協調動作」による部分も大きい。しかし視点を変えると、その優位性はApple Siliconでは拡張性や絶対的性能を確保しづらいというデメリットとなる。

 この課題を解決しないことには、Apple Siliconへの“完全な”移行は実現できない。

Mac Pro 当初は2022年までに全てのMacのラインアップをApple Siliconで統一するはずだったAppleだが、現在でもMac Pro(と一部のMac mini)がIntel製CPUを採用している
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