「M1 Ultra」という唯一無二の超高性能チップをAppleが生み出せた理由本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/5 ページ)

» 2022年03月13日 12時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

 米Appleが3月8日(現地時間)に開催したスペシャルイベントの主役は、第3世代の「iPhone SE」やM1チップを採用した第5世代の「iPad Air」だったことは間違いない。しかし、Appleの強さを感じさせたのは、小型デスクトップ「Mac Studio」に採用された「M1 Ultra」というSoC(System on a Chip)だ。

M1 Ultra Appleの新型SoC「M1 Ultra」。同時発表の小型デスクトップ「Mac Studio」に初めて搭載した

 なぜならApple以外の企業では、ここまで極端なパフォーマンスの向上に力点を入れたSoCの開発にゴーサインを出すとは考えにくいからだ。

 このようなSoCは、幅広いPCメーカーに汎用性の高いプロセッサ製品を大量に販売する必要があるIntelからは生まれないだろう。さらにMicrosoftとQualcommの協業で開発されるSoCのSQシリーズ(Surface Pro Xに搭載)のような枠組みでも、M1 Ultraに類似するチップを生み出すことは極めて難しい。

 例えばF1マシンに使うパワーユニットが、一つ一つの部品、エンジンやエネルギー回生装置などのコンポーネントについて、マシン全体の設計に合わせて作り込まれるように、Appleは自社製品に採用するSoCのチップ全体を作り込んでいるからだ。

 つまり、Appleは結果的に高性能なSoCを開発しているのだが、他とは出発点が異なる。最終製品(今回の場合はMac Studio)の魅力を高めるという目標がはっきりしているAppleの場合、優れた製品へと仕上げるための要素をSoCに盛り込んで設計している。

 彼らはSoCを外部に販売し、利益を上げる必要がない。このことが、M1 Ultraというチップを唯一無二のチップにしているのだ。

Mac Studio M1 Ultraを搭載するMac Studio(外付けディスプレイのStudio Displayを組み合わせた様子)

M1 Maxを2個接続した巨大なSoC「M1 Ultra」

 M1 Ultraとは、2021年10月に「MacBook Pro」に搭載する新プロセッサとして発表された「M1 Max」のCPU、GPU、Neural Engine、ISPなど各種処理回路、メモリコントローラーと接続可能なDRAMなどを、きっちり2倍にしたSoCだ。

 主なスペックは以下の通りとなる。

  • トランジスタ数:約1140億個
  • CPU:20コア(高性能コア16基+高効率コア4基)
  • GPU:最大64コア(最大8192実行ユニット、21TFLOPS)
  • Neural Engine:32コア(毎秒22兆回演算)
  • ユニファイドメモリ:最大128GB
  • メモリ帯域幅:最大毎秒800GB
  • メディアエンジン:デコード2基+エンコード4基+ProResエンコード/デコード4基(H.264/HEVC/ProRes/ProRes RAW対応)
  • 外部ポート:Thunderbolt 4(USB4)対応
  • 製造プロセス:5nm
  • トランジスタ数:1140億個
M1 Ultra M1 Ultraの主な特徴(発表会の配信動画より)

 きっちり2倍である理由はM1 Maxのシリコンダイを2個接続しているからだが、ここに一つの疑問が湧く。なぜそんなことができるのか。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年05月30日 更新
  1. 「実は社長を狙ってました(笑)」──元日本MS幹部が語るグーグル・クラウドへ移籍した理由と「伸び代しかない」日本のAI市場の今後 (2026年05月27日)
  2. ついに日本でも販売を開始したAIグラス「Ray-Ban Meta(Gen 2)」実機レビュー 完成度は高いが課題も (2026年05月29日)
  3. 鉄道運転シミュレーターが楽しくなる! 「ズイキマスコンPRO」(クラファン版)を買って使ってみた (2026年05月29日)
  4. Intelが携帯ゲーミングPC向け新SoC「Intel Arc G」シリーズを発表 (2026年05月28日)
  5. 所有しているのに、手元にないように感じる不思議さ ミニスパコン「NVIDIA DGX Spark」と過ごした1カ月 (2026年05月27日)
  6. スマートウォッチとの“2台持ち”がはかどる! 約12gで画面レスの「Google Fitbit Air」とパーソナルAIコーチの実力を試す (2026年05月26日)
  7. ロジクール、エルゴデザイン筐体を採用したスタンダードワイヤレスマウス (2026年05月29日)
  8. 一部PCでWindows 11(バージョン 24H2/25H2)で5月のセキュリティ更新をインストールできない事象 今後の更新で解消予定(暫定回避策あり) (2026年05月26日)
  9. 片手で持てる55万円の超ハイスペックミニPC「MINIX ER939-AI」が登場! 夏向け冷却台の新製品も (2026年05月30日)
  10. メモリ倍増でPCの価格も倍に? AI需要で高騰するパーツ価格の背景と無料ツールでメモリ不足を解消するテクニック (2026年05月28日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年