米Appleが3月8日(現地時間)に開催したスペシャルイベントの主役は、第3世代の「iPhone SE」やM1チップを採用した第5世代の「iPad Air」だったことは間違いない。しかし、Appleの強さを感じさせたのは、小型デスクトップ「Mac Studio」に採用された「M1 Ultra」というSoC(System on a Chip)だ。
なぜならApple以外の企業では、ここまで極端なパフォーマンスの向上に力点を入れたSoCの開発にゴーサインを出すとは考えにくいからだ。
このようなSoCは、幅広いPCメーカーに汎用性の高いプロセッサ製品を大量に販売する必要があるIntelからは生まれないだろう。さらにMicrosoftとQualcommの協業で開発されるSoCのSQシリーズ(Surface Pro Xに搭載)のような枠組みでも、M1 Ultraに類似するチップを生み出すことは極めて難しい。
例えばF1マシンに使うパワーユニットが、一つ一つの部品、エンジンやエネルギー回生装置などのコンポーネントについて、マシン全体の設計に合わせて作り込まれるように、Appleは自社製品に採用するSoCのチップ全体を作り込んでいるからだ。
つまり、Appleは結果的に高性能なSoCを開発しているのだが、他とは出発点が異なる。最終製品(今回の場合はMac Studio)の魅力を高めるという目標がはっきりしているAppleの場合、優れた製品へと仕上げるための要素をSoCに盛り込んで設計している。
彼らはSoCを外部に販売し、利益を上げる必要がない。このことが、M1 Ultraというチップを唯一無二のチップにしているのだ。
M1 Ultraとは、2021年10月に「MacBook Pro」に搭載する新プロセッサとして発表された「M1 Max」のCPU、GPU、Neural Engine、ISPなど各種処理回路、メモリコントローラーと接続可能なDRAMなどを、きっちり2倍にしたSoCだ。
主なスペックは以下の通りとなる。
きっちり2倍である理由はM1 Maxのシリコンダイを2個接続しているからだが、ここに一つの疑問が湧く。なぜそんなことができるのか。
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