「M1 Ultra」という唯一無二の超高性能チップをAppleが生み出せた理由本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/5 ページ)

» 2022年03月13日 12時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

メモリ食いアプリ以外は移行完了

 Appleは2020年6月にAppleシリコンへの移行を表明したが、その際に移行に2年をかけると話していた。その後、2020年後半には最初のチップであるM1が登場したが、高性能を実現するための理想的な構成である一方、スケーラビリティに乏しいことが最大の弱点だと思われた。

 M1アーキテクチャ最大の特徴は、iPhone向けSoCのAシリーズで高性能かつ低消費電力を実現する鍵にもなった共有メモリアーキテクチャを、そのままパソコンクラスのシステム規模に拡大したことだった。

 言い換えれば、共有メモリアーキテクチャの長所をそのままに、さらなるシステム規模の拡大が行えるとは考えにくかった。ところが、Appleはプロのクリエイター向けにM1 ProとM1 Maxを開発し、M1のアーキテクチャをそのまま拡大してみせた。

 何度か筆者のコラムでも言及してきたように、大きな量産効果を望めないこれらのチップを専用で設計することに経済合理性はあまりないが、電力効率が高い上にパワフルなMacBook Proを生み出すことができた。

 とはいえ、M1 Maxよりも大きなSoCを作ることには無理がある。一方でクリエイター向けデスクトップのSoCとしては、まだM1 Maxでも十分とはいえない。そこで、組み立て工程で作り分けることができ、共有メモリアーキテクチャの長所も維持できるM1 Ultraが登場したわけだ。

 高性能が求められるMacといえば、タワー・ラック型の「Mac Pro」がそれに相当するが、パフォーマンスの面ではMac Proを既に超えており、GPUのピーク性能こそやや落ちるものの、専用のアクセラレーターカードである「Afterburner」をはるかに超える動画処理回路も備わっている。

 現状としてAfterburner以外にはMac ProのPCI Expressスロットはあまり活用されておらず、業務用の入出力カードなどもThunderboltで代替できることを考えれば、128GBのメインメモリでは不足するアプリケーションを除き、Mac Proが担っていた領域もMac Studioで置き換えることが可能だ。

Afterburner Mac ProとPCI Expressで接続して利用する拡張カードの「Afterburner」

 Appleは年内に全てのMacを自社開発の半導体、つまりAppleシリコンに移行させる計画だが、最大1.5TBのDRAMをメモリスロットに装着できるMac Proの搭載メモリに近づける、あるいは越える解決策を提示すれば、完全にその移行は完了することになる。

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