米Appleが3月8日(現地時間)に開催したオンラインイベントでは、iPhone、iPad、Macと3つのジャンルに新製品が投入された。
「iPhone 13」と「iPhone 13 Pro」シリーズには、それぞれグリーン系の新色(グリーン、アルパイングリーン)が追加されている。針葉樹のような深い緑が印象的だが、この時期に新色を追加するのは恒例のことだ。
「iPad Air(第5世代)」にM1が搭載されたことも、もちろん購入を検討していた読者にとってはよいニュースに違いない。ドルベースの価格は維持されており、搭載するSoC(System on a Chip)がM1に更新されたことで、素直に性能が向上している。新色が投入され、iPad Air専用のブルー以外はiPad miniとカラーがそろえられた。
一方、MacにはApple製SoC(Appleシリコン)として超ど級ともいえる「M1 Ultra」と、それを搭載する「Mac Studio」が投入された。これにより、デスクトップの中でもハイエンドクラスの性能を1つの省電力なチップが担う。Appleの本質的な強みを示す製品ではあるが、誰もが購入するようなモデルではないため、必要なユーザー層に向けた情報を集め、技術的な詳細を掘り下げて別途記事にしたい。
そんな中で、多くの読者にとって、そしてプラットフォームとしてのiPhone(iOS)全体のラインアップにおいても重要なのが第3世代となった「iPhone SE」だ。
Appleの強さは「iPhoneという極めて大きな製品基盤を持つこと」だが、最も多く売れているiPhoneはSEシリーズである。いわばiPhoneの基本形であり、iPhone市場全体の中心を担う製品だ。
第3世代iPhone SEは、第2世代iPhone SEからSoCの「A13 Bionic」を最新の「A15 Bionic」に置き換えた製品だ。つまり、心臓部が2019年発売のiPhone 11世代から、2021年発売のiPhone 13世代に進化した。通信性能では、新たに5Gにも対応している。
内蔵バッテリーはiPhone 13 Proシリーズなどと同様の高容量のものとなり、1日あたりの利用可能時間は公称値で最大2時間も長くなった。また、背面のガラスカバーは、iPhone 13や13 Proと同じ最新の強化ガラスへとアップグレードしている。
一方、指紋センサーのTouch IDを内蔵したホームボタンや4.7型ディスプレイ、1200万画素の広角アウトカメラを1つを搭載したボディーは、少なくともカラーリングの細かな違いを除けば、パッと見には第2世代と同じである。
細かな違いはさておき、要は「プロセッサがアップグレードしただけ」と思うかもしれないが、iPhoneの場合はPCと同じような感覚でそれを捉えると、実体を見誤るので注意が必要だ。
なぜならiPhoneの基本的な機能の品質の半分、あるいはそれ以上をSoCの新しい性能や機能で実現しているからだ。単にアプリが高速に動く、より複雑なゲームが快適に動作するということではなく、毎日使う道具としての質が高くなる。
iPhoneに限らず、Apple製SoCは最終製品に搭載する機能の質を高めるために、あらかじめSoCの中に処理回路を忍ばせたり、特定のプロセッサを強化したりしている。言い換えると、SoCの世代を更新すると、付随してさまざまな要素が「最新世代のiPhoneに近づく」のだ。
例えば、第2世代iPhone SEのカメラ画質は大抵のスマートフォン内蔵カメラよりも高画質といえるが、それでも発売から2年近くが経過している。第3世代iPhone SE内蔵のアウトカメラが、ハードウェアの面だけを見ると第2世代と全く同じ1200万画素の広角カメラ1つだと聞くと残念に思うかもしれない。
しかし悲観することはない。A15 Bionicはより詳細かつ的確に映像センサーの情報を分析し、演算能力で世代を重ねるごとに画質を高めてきた。その演算能力での高画質化だけで、第2世代iPhone SEから大きな違いを演出している。
ある意味、これはA15 Bionicによるコンピュテーショナルフォトグラフィー技術のショーケースともいえる。
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