第2世代iPhone SE搭載のA13 Bionicにもコンピュテーショナルフォトグラフィーの要素は盛り込まれていた。というよりも、この世代から本格的にコンピュテーショナルフォトグラフィーでの高画質化が本格化したといった方が正確だろう。
現在は当たり前になったセマンティックレンダリングという、さまざまな分析結果から多様な処理を組み合わせて映像を得る処理が導入されたのがA13 Bionicだった。しかしその後、Neural EngineやISP(イメージ処理プロセッサ)の性能強化で分析精度が高まり、より的確な写真を吐き出すようになっている。
とりわけA15 Bionicでは、ホワイトバランスの改善、スマートHDRが働いた場合の被写体ごとのトーンの描き分け、ポートレートモードでのボケの出方や被写体の切り抜き、動画ノイズの少なさなどで違いが顕著だ。時間軸方向に画素加算を行うDeep Fusionによりディテールも深く描かれる点は、第2世代iPhone SEと大きく異なる。
iPhone SEはシングルカメラであるため、マクロモードやシネマティックモード(2つのカメラが必要)などハードウェアの面で制約のある撮影はできないが、iPhone 13シリーズで感心したカメラ画質の要素をほとんど内包している。
ここでは、内蔵カメラでのA15 Bionicの活用について語っているが、サードパーティーもNeural Engineや新しいGPUを活用しており、Appleも文字認識や音声認識など目に見えにくい部分でも活用している。
つまり標準のiPhoneといえるモデルのSoCを2年ぶりに更新することで、体験の質を引き上げてベースラインを高めようということだ。もちろん、結果的にアプリの起動、スクロールの応答性などがよくなるなど、至る所でパフォーマンスの向上を実感するだろう。
もっとも、一度Face IDの顔認証機能を搭載したiPhoneに移行したユーザーが、あえて第3世代iPhone SEを選ぶことを勧めるかというと、そこはあまり前向きではない。
コンパクトでラウンドした形状は手になじみやすいが、ディスプレイのサイズに関しては、一度慣れてしまうとFace IDモデルからTouch IDモデルには戻りにくい差を感じる。
第3世代iPhone SEはiPhone 8以前のTouch ID搭載iPhoneからの買い替えを手頃に行いたいユーザー向けだ。あるいは初めてiPhoneを購入する場合に、なるべく安価なモデルから選びたい、カメラはシングルカメラで十分であまり凝った使い方をするつもりがない、という場合の手軽な選択肢となる。
またiPadとの併用が多く、iPhone側はコンパクトかつシンプルな方がよいという場合も、第3世代iPhone SEは候補の筆頭になると思う。
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